【13】妖精の国の建国祭
――――ハロウィーンが過ぎれば今度は妖精の国の建国祭がやって来る。
「今回は人間の国から国賓を招くのよね」
「ああ、向こうからは王太子夫妻が来るそうだ」
「王太子夫妻ね。この前のパーティーの際にちらっと挨拶したけど……」
「何かあるのか?」
「ううん、あまり話したことはないものだから緊張しちゃって。そうそうそんな機会はないでしょうけど」
「まぁなぁ。だが兄上に呼ばれたり代理を頼まれたりすることもあるだろうから分からないぞ」
「そうよね。妖精の国の王太子妃さまはご出産されたばかりだし……」
「そうだ、そのことで何なんだが」
「うん……?」
「義姉上が赤ちゃんを見に来ないかと誘ってくれていてな。建国祭のパーティーの前にちょっと会って来ないか?」
「わぁっ!それは是非!」
「なら当日は少し早めに出ようか」
「ええ!」
※※※
パーティーの準備を済ませ少し早めに城に到着した私たちは王太子夫妻に面会することになった。
「よく来てくれた。リュー、ツェリちゃん」
出迎えてくれたルーク・ディーワ・クワエダム王太子殿下は緑の髪に赤い瞳。長い耳。
リュヌさまを愛称呼びしていることからも相当親しいのだと分かる。しかし……ちゃん付けか。何だか歓迎してくれているようで光栄なような、何と言うか。
「早速中へどうぞ。妻のヴィヴィも待っている」
ヴィヴィアン・ディーワ・クワエダム王太子妃殿下ね。
中へ入れば雪色の髪にスノーブルーの瞳の美女が待っていた。その頭には猫耳、後ろからは猫のしっぽ。王太子妃殿下はケット・シーだ。
「ようこそ、リュヌさん。ツェリちゃんは初めてね」
「は、はい!」
「いきなり呼んじゃったけど、ツェリちゃんって呼んでも大丈夫かしら」
「もちろんです!」
「私のことはヴィヴィお義姉さまでいいわよ」
「お……お義姉さま?」
そう呼ばせていただけるのは光栄だがいいのだろうか?
「アンジェちゃんだけだとずるいものっ!」
「あ、アンジェお義姉さまっ!」
「そうよ。かわいい妹ができたって嬉しそうだったんだもの」
「か、かわいい……」
「そうよ!ね、ルーク」
「ああ、私のこともお義兄さまで構わないぞ」
「こ……光栄です」
こんなに歓迎してくださるなんて。
「それよりルーク。今日は2人ともファナに会いに来てくれたのでしょう?」
「そうだった。2人とも、来てくれ」
お義兄さまの後を付いていけば、ベビーベッドの周りから覗き込むかわいい2人の男の子がいた。
「長男のレインと次男のカイトよ」
確かレインさまは8歳。妖精王族の特徴。カイトさまはその2つ下だったかしら。黒猫のケット・シーである。
「リュヌだー!」
「リュヌー、頭外してー!」
いきなり直球ね!?
「こらこらお前たち」
「別にいいよ、兄上。ほら」
リュヌさまがひょいっと頭を外せば。
「わー!デュラハンだー!」
「デュラハンデュラハン!」
あれ……?デュラハンって結構子どもに人気なのかしら?
「そのお姉ちゃんは?」
「だぁれ?」
「俺の妻のツェリだよ」
「ツェリ!」
「ツェリも遊びに来たの?」
「レイン、カイト。ツェリちゃんはファナに会いに来たのよ」
そうヴィヴィお義姉さまが告げれば2人がぱあぁっと顔を輝かせて手を引っ張ってくる。
「こっちだよ!」
「ぼくたちのいもーと!」
手を引かれるがままにベビーベッドの中を覗けば、白い毛並みのかわいらしいケット・シーの女の子がすやすやと眠っていた。
「ふふっ。私に似て白い毛並みのケット・シーなの」
思えばケット・シーって黒い毛並みが多いイメージだものね。
「とってもかわいいです!」
「ああ。義姉上似だな」
「おいおい、私は?」
とルークお義兄さまが聞くので。
「女の子なんだから義姉上に似てかわいい方がいいだろ」
リュヌさまったら容赦ない!しかしお義兄さまはその言葉にクスクスと笑っており、やはりとても仲の良い兄弟なのだと感じた。
※※※
――――パーティー会場
パーティー会場では集まった貴族たちで賑わっている。その中には人間の参加者も結構いるようだ。
「さて、父上たちに挨拶に行こうか」
「ええ、そうね」
王族の席に向かえば、早速妖精王陛下と王妃さまに挨拶だ。
「父上、母上。お久しぶりです」
「ああ、リュヌ。先日の人間の国への訪問、ご苦労であった」
「ええ。しっかりと務めを果たして参りました」
「それは何より。しかしアクシデントもあったと聞いている」
「無事に収めましたのでご安心を」
「それなら良かったわ」
王妃さまが答える。
「リュヌ、あなたちゃんと殿方としてツェリちゃんを守れたのでしょうね?」
「も……もちろんです!母上」
「ふふ。なら及第点といたしましょうか。ところでツェリちゃん」
「は……はい!」
何かしてしまったろうか?
「リュヌとは上手くやっているの?困っていることはない?」
「いえ、その……夫婦仲良くやってますし、リュヌさまはいつも良くしてくださいます!」
「あらあら、それは良かったわ。何かあったら遠慮なく相談してね」
「あ、ありがたき光栄です!」
相変わらず緊張はするけれど何とか切り抜けられたわね。それにしても……ツェリ『ちゃん』か。これも歓迎してくれている証拠なのよね。
「ツェリ、次はルーク兄上たちだ」
「ええ」
ルークお義兄さまとヴィヴィお義姉さまの元へと向かえば、かわいらしい2人のちびっ子が出迎えてくれる。
「リュヌー」
「ツェリ!ツェリこっち!」
レインさまもカイトさまもかわいい~~!
「もう、あなたたちったら。もう少しおとなしくしてなさいな」
優しく告げるヴィヴィお義姉さまも癒される、その猫耳しっぽ。
「ヴィヴィはファナが寂しがってしまうから、休み休み参加の予定なんだ」
「夫が心配性なのよ、もう」
クスクスと微笑むヴィヴィお義姉さま。本当に仲の良い夫婦で羨ましいなぁ。
「ヴィヴィ義姉上も無理なされませんよう」
「ありがとう、リュヌさん。ツェリちゃんも会いに来てくれてありがとうね」
「私の方こそ!ありがとうございます!」
とってもかわいい殿下たちにも会えたし。
「ねーねー、母上、ぼくたちもあっち行ってみたい!」
とレインさま。
「あら、でも……」
「リュヌ、連れてってよ」
「リュヌさんたちのお邪魔になってしまうわ」
「いえいえ、義姉上。構いませんよ」
「あら、いいの?」
「そうそう、昔よくやったものな」
え……?ルークお義兄さま?
「いや、兄上、それは……」
「私は王太子で逃れられないと言うのにローと2人で」
ローと言うのは2番目のお兄さんのローランドお義兄さまだ。
「いやその……暇だったんだ。ロー兄上と料理を摘まみに行っただけだよ」
「私だって摘まみに行きたかったのに」
「戦利品持って帰ってあげたじゃないですか」
リュヌさまが口を尖らせる。
「では今回も頼むぞ、弟よ」
「侍従たちがやってくれるでしょう?」
「私は弟からのが欲しいんだ」
「分かりました。レインを連れて行ってきます。カイトも来るか?」
「行く!あのね、ファナの分も取ってくるの」
「ファナはちっちゃいからまだ食べられないよ」
「……!」
しゅーんとしちゃうカイトさま。何だかいたたまれない。
「そうだ、母上の分を取ってくるのはどうだ?」
「母上のぶん!とってきます!」
猫耳をぴょこんと反応させながらカイトさまがヴィヴィお義姉さまを見る。
「ええ、お願いね」
「はい!」
私たちはカイトさまとレインさまを連れ飲食ブースへと向かう。
しかしやっぱり……かわいいわね。仲良くお手手を繋いでとことこと歩いてくる。
「ほら、飲食ブースはここ……」
リュヌさまが告げようとした時だった。
「見付けたわ!私の妖精王子!」
この声……まさか!
まだリュヌさまを諦めていないとでも言うの!?




