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低ポリ囚人の神グラ無双 ~特殊バグを喰らって解像度が限界突破した俺は、情報の暴力で階級社会を粉砕する~  作者: 星島新吾


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情報食い.1

「支給される武器をもっと良くする方法か」


同じ独房で横になるビットは(うめ)いた。

独房の月明りが差し込む中で、ナイトキャップを被ったビットはベッドの上で胡坐(あぐら)をかいて腕を組む。


()びた武器じゃなければもっと楽ができるかも知れない」


「どういう心変わりだよ、おい。武器なんて斬れれば良いってスタンスだったじゃねえか」


パジャマからはみ出た贅肉を掻きながら、ビットは大きな欠伸をする。

昼の診察から色々考えたが、筋肉がいつ高解像度化するか分からない以上、肉体の外に手を伸ばす必要があると思い、俺は武器を新調できないか相談に乗って貰うことにした。


「用意できるのか?」


「そりゃあ、キャプテンビット様の手に掛かれば、看守に賄賂(わいろ)を流すぐらい朝飯前よ?」


「賄賂か……よくないだろ。賄賂は」


「あのなぁ……いっつもお前さんのトレーニング機材を買ってんのは、誰を通じてだと思ってんだ」


「秘密のルートがあるんだろ?」


「だとしても流石に監獄にトレーニングルーム作るまで、看守が見逃すわけないでしょうが。流石にあいつらもそんな馬鹿じゃないのよ?」


賄賂さえうまく使えば、看守に部屋を用意させることもできるらしい。ビットは金の使い方が誰よりも上手かった。


「ビット、お前凄いな……まさかそこまで手を回していたとは」


「ヘヘッ、まっ。こちとら長いこといるからな。看守とも仲良くなるってものよ」


不愛想なお前は例外な、と笑うビット。彼の人付き合いの上手さには敵わない。

収監前はスパイだったらしく、人を信用させることには長けているようだった。


「つっても、肝心の武器はどうすんだよ。似たような大剣で良いのか?」


ポリゴン数の多い銃や処理の重たくなりやすい(むち)は使用許可が下りないが、弓や片手剣のようなものであれば、用意できるとビットは言う。 


「ああ。金なら俺の戦闘データから出す」


「ん⁉ な、な、な、なんだって⁉お前さん、遂に戦闘データを売ってくれる気になったのか!」


「今はもう圧縮してしまったからデータはないが……明日の特別任務で手に入れた戦闘データなら渡すことができる」


「おーそうかいそうかい! 俺とお前さんの中だ。しょうがねえからツケで武器は用意してやるよ。明日、飛び切りの上玉を期待してな」


「そんなにすぐに用意できるのか?」


「あーもちろんさ。仕事の速さが売りなんでね。───そういや、お前さん。明日話そうかとも思ってたが、この牢に新人が来るらしい」


「そうか。どうせすぐ居なくなるだろ」


「かも知れねえが、一生の友になれる可能性もある!明日の特別任務には俺様も参加するからよ。明日はパーティーで挑むぞ!


───っておい! 足手まといが~みたいな顔すんじゃねえ!」


俺はまさかと思い自分の顔を触る。俺の四角い顔にそんな器用な真似ができるのかと若干期待した。

それを見たビットはピクピクと青筋を浮かべたのを見て、俺は咳払いで誤魔化してみる。


「誤魔化せてねえよ⁉ 嘘だよな、おい、ポーカーフェイスって知ってるか⁉」


「カマを掛けてきたのはそっちだろ。……俺はもう寝る。ポーカーフェイスもよく知らん」


「自由人かテメエはよぉ!」


そうやって言い争いをしていると、独房の外から怒声が鳴り響いた。


「うるさいぞU+0024番! U+2620番! 懲罰房に入れられたいか!」


見回りにきた看守の声が廊下から聞こえる。

一列に並んだ独房を見張る看守は、俺たちの牢までわざわざ足を運ぶと、ガムを噛みながら俺たちの顔を睨んだ。


「ヘヘッ、すんません。もう寝ますんで」


「……チッ」


俺は顔を背けて眠る準備に入る。

しかし、看守は俺に目ざとく目を光らせた。


「U+2620、貴様、少し調子に乗っているな。明日の特別任務任務まで懲罰房(ちょうばつぼう)行きだ」


看守が後ろからぞろぞろと増え、剣を構えて牢の中に入ってくる。

俺は手を後ろに組まされ手錠を掛けられると、後ろに剣を突きつけられながら懲罰房に放り込まれた。


狭くて、寒くて、暗い。


そんなコンクリートの床に膝をつけて座らせられる。

動いてはならないため、ひたすら正座を強いられる。虚無の時間が訪れた。


次の特別任務までどのぐらいだろうと、懲罰房の中で編成を考える。新人に正面は任せられない。適度に弱らせた敵を送り、手ごたえを覚えさせるところから始める、いつも通りの方法で戦闘は教えればいいだろうか。それとももっと、別の方法で、生存を意識した教え方の方が───。



「起きろ、囚人番号U+2620番。特別任務の時間だ!」


けたたましい音量で怒鳴る看守に叩き起こされ、痺れる足を振りながら頭を叩いた。床には重湯(おもゆ)が置かれ、それが俺の朝食となった。


ぐいっ、と一息に飲み干す。


無味無臭で、マズいとも美味いとも言い難い。

データ量も殆どないゴミだが、腹の足しにはなった。


「出てこい、U+2620番」


「ピーピー喚くな……頭に響く」


「なにっ?」


俺は鎖に再び繋がれ懲罰房を出て、監獄の中にあるバス停に並ばされる。

壁の外に建てられた広告塔には、相変わらず高解像度なモデルがビールを片手に白い歯を(のぞ)かせていた。


「次の《低ポリ》!前にでろ!」


看守がバスに乗る低ポリの囚人たちに次々と首にバーコードを打っていく。修復パッチを打ち込まれた低ポリゴンの囚人はその瞬間からバグに対する特攻を持つ存在となって、バスに押し込められていった。

いつもの光景。何千回と繰り返されてきた日常の始まりだった。


「おい、U+2620番。今日のお前の武器だ。受け取れ」


看守に渡されたのは、いつものナマクラ……ではなくて、幾何学模様(きかがくもよう)が刻まれた赤黒い刀身の大剣だった。


看守の顔をみると、心底面倒くさげな顔をしている。


情報喰い(データイーター)だ。殺したバグを取り込んで強くなる。お前の新しい仕事道具だ。そいつは本当に貴様の命より高価な剣だ。……落とすなよ」


看守は俺が武器を受け取ったのを確認すると、いつもの調子で俺をその他大勢の《低ポリゴン》と共に《特別任務》行きのバスに詰め込んだ。


ビットの賄賂が看守を動かした、ということだろう。

奇妙な体験をしたと思いながら満員となったバスに揺られて、俺は今日も特別任務の現場に向かった。




プチ設定紹介


情報喰い(データイーター)


バグを食べたら強くなる、血管が浮き出たような模様の不思議なグロくて赤黒い大剣。

今までに沢山バグを食べてきたのか、今のままでも十分強い。





リアクションされると喜びます。

それではまた、次のお話でお会いしましょう。(´・ω・)ノシ

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