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「番軍」包摂

〈饂飩には餅巾着や名殘りなり 涙次〉



(前回參照。)



今回の『カンテラ』は私の敬愛する小説家、故・古井由吉氏に捧げやう。理由は... 本文を讀んで貰へれば分かる、と思ふ。(永田)



【ⅰ】


1月も中盤に差し掛からうとしてゐる。大體これぐらゐの時期になつて來ると、漫画雜誌各誌、意外に短かつた冬眠の、それでも確かに呪縛と云へるものから解けるやうに、所謂年末進行に區切りを付ける。そしてこぞつて特大號の告知をし、連載陣の熱筆を煽る。『月刊少年シャンプー』での、新作 *『リトルリーグ血風録!!』の連載開始を睨む、テオ・谷澤景六&タイムボム荒磯もその例外ではない。テオ、漫画原作に忙殺される余り、つひ本業の一味の為の情報収集が疎かになる。カンテラ、事務所の主である彼は、そんなテオを叱らねばならないところだが、彼を「兄貴」と慕ふテオは手中の珠、可愛くて許してしまふのはまあ致し方なからう。



* 當該シリーズ第11話參照。



【ⅱ】


そんな時、役に立つのが* ロボット天才猫・ロボテオ2號の存在。2號の愛稱で一味の皆から親しまれてゐる彼は、テオの拔けた穴を埋めて余りある。その2號が云ふには-「チヨツト見テ下サイヨ、ジロサン」-じろさん「ん、何だい2號」-「SNSノかきこナンデスガ-」テオ愛用のコンピュータ、「PCテオ」をじろさんが見ると、「自分はカンテラ一味の『喧嘩番長』、此井功二郎先生に、特別な思ひを抱く者。素手の格闘技を極めた彼は、もしもこの世に剣術と云ふものがなければ間違ひなく武の世界の№1であらう。是非お會ひして、その蘊奥を伺ひたいものだ」と書き込まれてゐる。2號「凄イりすぺくと振リデセウ?」-じろさん「此奴一體何物だ?」-2號は器用に「PCテオ」を操り、「ソレモ調ベガ付イテイマス。ダウヤラ番頼母ノ手ノ者ラシインデス」



* 前シリーズ第170話參照。



【ⅲ】


大原虎鉄(おほはら・こてつ)、と云ふのがこの書き込みの主らしい。じろさん、彼と會ふ段取りを2號に付けて貰ひ、大原との會見に臨んだ。都内某喫茶店。じろさんいきなり「大原くんとやら、一丁試合つてみるかい?」-「ち、ちよつと待つて下さい、此井先生。僕が負けるに決まつてゐます。僕も、一應のものなんですが、60戰不敗の履歴を持つ者。それに疵を付けたくありません」。訊けば、大原は、グレイシー柔術を7年、サンボを3年、修めたと云ふ。だがじろさん、一目見て(この若者、優し過ぎるな、武邊の者としては)。「憂士閣大學(じろさんの最終學歴)合氣道部では、私も『柔術殺しの功二郎』の異名を取つたものだよ。あんたと試合へないのは、惜しいな」



【ⅳ】


大原は、撃剣の基礎を身に着けたくて、「番軍」に參加したのだと云ふ。世に云ふ「剣道三倍段」の成句に從つた譯だ。だが、番は彼の柔術の經歴を重んじ、「遊軍」として彼を扱ひ、剣に触らせない。番は、對・體術のケースも想定してゐたのだ。で、大原はそれが不服で、思はず今回のSNSへの投稿と相なつたらしい。じろさん「云つて置くが、私は剣術相手でも、負けんよ」。それが單なる空威張りでない事は、じろさんが克明に綴つた『此井流・古式拳法覺え書き』に、丹念に描かれた通りだ。



※※※※


〈缶珈琲買つておくれと書き物の後の糖分慾しがる脳は 平手みき〉



【ⅴ】


その番頼母。これはカンテラと君繪しか知らない事だが、カンテラ、實を云ふと極秘裏に、君繪のテレパシーを通じて、カンテラ一味に加はるやう口説いてゐた。手強い者は吸収する、それはカンテラが、ルシフェルを一味メンバーに迎へた折りに學んだやり口だ。「あんたには3千萬(圓)用意してある-」-* じろさんをスカウトした時に積んだカネが5千萬圓だつた事を考へると、カンテラの仕掛けた「カマ」は穏当なところであつたらう。番、この金額なら、自軍に欠けてゐた兵站代金を賄へる。利に聡く、機を見るに敏な番である。彼は、カンテラ一味と「ニュー・タイプ【魔】」逹とを秤に掛けた。



* 當該シリーズ第3話參照。



【ⅵ】


一つ、問題點があつた。「番軍」をも包摂するとなると、組織としての事務所が肥大化し過ぎ、管理するのが大變だと云ふ事だ。其処ら邊、會社經営者の友人がゐるのは、心強い。カンテラは、「ギャレエヂМ」社主、* 村川佐武ちやんに話を訊いた。佐武ちやん「うちみたいに株發行して、株式會社にしちやへばいゝのよ。會社組織にしとけば、後々樂チンよ」。カンテラ、悦美に伺ひを立てた。「あら、憧れの社長令夫人になれるだなんて、素敵だわあ」。(全く、女つて奴は... 何処迄も能天氣に出來てやがる。尤もカンテラ、後でその感興は自ら訂正したのだが・笑)。



* 前シリーズ第132話參照。



【ⅶ】


今日も今日とて、「番軍」の軍事教練を、「ニュー・タイプ【魔】」微視佐馬ノ介、にこやかに眺めてゐたのだが- ふと、番が云つた。「微視さん、惡いがあんたを斬るよ」-「え゙!?」-「あんたの首をカンテラへの手土産にしなくちや、格好が付かんのだよ」-「や、約束が違ふ!」-微視の云ふ「約束」とは、前回番が云つた「私はあんたと『結ぶ』」と云ふ言葉だらうか。だが、處詮は口約束。戰國時代、武將逹は、安堵された禄 -彼らにとつてのサラリー- 髙に應じて、仕へる主君をころころ更へたものだ。慌てゝ姿を晦ませやうとした微視の首根つ子をむんづと摑み、番「余計な存念は拔きでお願ひする。あんたに3千萬は用意出來まい」と云ふと、「きえいつ!!」軍刀で微視の首を斬り落とした...



【ⅷ】


と云ふ譯で、「番軍」を併呑した一味、最早無敵な筈であつたが、「ニュー・タイプ【魔】」逹との戰ひ、と云ふ課題は殘された儘だ。その點カンテラにをさをさ手拔かりはなかつた- との永田からの報告で以て、今回のお仕舞ひとしやう。ぢやまた。



※※※※


〈カステラは何げに小春食ふものよ 涙次〉


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