5.いざ砂海へ!その3
「いや〜。やっぱり二人だと沢山獲れるね!いつもは半分もいかないから。」
漁を始めてから約1時間。1メートル四方程の木箱の中には、魚がギチギチに詰まっていた。勝手に個体数は少ないと思っていたが、見えないだけで多くの魚が泳いでいるらしい。
「でも、そろそろ潮時かなぁ。あと数匹獲ったら引き上げよっか。」
「木箱が一杯になったからか?まだもう少し獲れると思うけど。」
「いや、日が高くなってきたからだよ。ほら、太陽が完全に出てきたら、ますます暑くなって漁どころじゃなくなるよ。」
確かに、この砂漠の暑さは殺人的だ。出発した時はまだ薄暗く、夜の涼しさが残っていたが、今は陽炎が見え始めるくらいには暑い。
まだこの暑さに慣れていないオレは既にバテ気味だったので、素直に撤収の準備を始めた。
その時だった。ボ〜ゥ、と牛のような低い鳴き声が聞こえたのは。近くから聞こえた筈だが周囲を見渡しても何もいない。
「なぁ、サキ、いま何か聞こえなかったか?鳴き声みたいなの。」
片付けをしていたサキに問いかけるが、サキは空を見上げていて聞こえていないようだった。
空?空に何かあるのか?オレも上を見上げる。
そこに居たのは、大きな、大きな翼を広げた、巨大生物。いや翼じゃない。あれはヒレだ。
人は壮大な景色に時折、心奪われる。オレにとっては、まさにこの時だ。
太陽を遮り、オレ達の船に影を落とす。サキの感嘆の声も、風で舞う砂のさざめきも、何処か遠くに感じられる。
空を悠々と滑空する巨大マンタは、再び低い鳴き声を上げ、どこまでも続く砂漠の果てへと去っていった。
「すごかったねぇ〜!船の上を飛ぶのなんてアタシも初めてだよ!」
サキは興奮を抑えられないのか、帰りの間もさっきの光景の話題ばかりだ。俺はというと惚けたように空を見続けていた。勿論マンタのことが忘れられないからだ。目算だが横幅は6メートル近くあったと思う。
「なぁ・・・サキ・・・明日も船に乗せてくれるならさ、マンタ獲らないか?」
「船に乗るのは大歓迎だよ!だけど、マンタは私も獲りたい、けどこんな小船じゃ無理だよ。」
「そうなのか?銛を使えばいけるんじゃ?それにマンタはいい金になるだろ?」
そう、実際マンタはザイナム=テロンで最も人気のある食材の一種だ。昨日オレが頬張った肉も、何を隠そう、マンタ肉なのだ。
「そうなんだけどね、マンタ漁にはロープを括りつけた銛を使うの。反対側は船に括り付けてね。それを銛撃ち銃で撃ち出してマンタの体力が無くなるまで逃げないようにするの。そのためには大型船じゃなきゃ。」
「・・・なるほど、小型船だとマンタのパワーに耐え切れず、バラバラになっちまう、か。」
でも、それでも、オレは諦められない。絶対に獲りたい、マンタを。
なにかないか?なにか。小型船でもマンタを取れる方法は・・・。
「あきらめきれないって顔だね。・・・大型船の知り合いに紹介しようか?」
「え、でもサキ、それだとまた一人で漁に出るのか?」
「うん、でも今までも一人だったし大丈夫だよ!今日はジョーと漁ができて、とっても楽しかった!」
出会って数時間しか経っていないが、流石に空元気だとわかった。根っからのいい子なんだろうな。
「その代わり、また異世界の話聞かせてよ!今度はジョーの世界の遊びについて聞きたいな!」
「・・・あぁ、もちろん。そうだな、せっかくだから海での遊び、マリンスポーツの話なんて────」
まてよ、マリン、スポーツ・・・?
些細な思考、だがそれは電撃の如く脳裏に走り、突拍子もない奇策がオレの頭に浮かび上がった!
そうだ、そうだよ!あるじゃないか、マンタを獲る方法!
「マリンスポーツだ!いけるかもしれない、いや、いける!」
一人、いきなり興奮し出したオレに、若干サキが引いている気がするが、もう関係ない。
ちょうどよく港に着いたので、早足で船を降りてサキに素早く挨拶を済ます。
「サキ!明日までにオレの方でも準備しておく!銛撃ち銃の準備はそっちで頼む!」
「えっ、えっ、どゆこと!?ジョー!?」
一方的に言葉を残すと、一目散に通りの人混みに消えていった。
「もうっ、どういうことなのよ〜!」




