3.いざ砂海へ!その1
「ジョーさ〜ん。おはようございま〜す。」
翌日早朝、マリベルはジョーの家の前に来ていた。友人の少ない彼女は最近出来たばかりの新しい友人の世話を焼きたくてしかたないのだ。バフテンはそんな彼女を見て「あまり構いすぎると向こうも勘違いしちゃうかもよ?」とやんわり注意したがマリベルはイマイチ分かっていないようだった。
「ジョーさ〜ん?いないんですか〜?」
そして当のジョーはというと既に家を出ていた。勿論、仕事を探しに行ったのだ。元の世界でも朝早くから仕事をしていたと言っていたし、彼の頑張りを応援している手前、あまり干渉するのも良くないことだと理解している。
「・・・一緒に食べようと思ってたけど、朝食のパン余っちゃったな〜。約束してた訳じゃないし、しょうがないか。」
少し残念な気持ちだったが、せっかくなのでいつもよりちょっと豪華な朝食を楽しむと、バフテンの占い屋の手伝いへと向うことにした。本職は踊り子なので夜までは知り合いの手伝いをするのが彼女のルーティンだ。
「あっそうだ!プリシラちゃんにもジョーさんのこと教えてあげよっと!」
そう、別に二度と会えないわけじゃない。また明日、でなくともいつでも会えるはずなのだ。ともすれば数少ない友人の一人に新しい出会いを共有しに行こう!軽やかなステップを描き、彼女は晴れ晴れとした気持ちで去っていった。
古びた木製の小型船。その心臓部である魔法陣の描かれたエンジンを弄る少女。ガコガコと木製の歯車を点検し、出発の準備をしている。しかし、その顔色は優れず、むしろ鬱屈としていた。
「はぁ・・・。今日こそは大物、獲れるかなぁ。」
汗で首筋にべったりと張り付いた髪をかきあげる。親からこの船を継いだときに鬱陶しいからとポニーテールにしたがあまり効果がないらしい。
さて、行きますか。なんて、無理やりやる気を起こすと舵に手をかけた。
「なぁ、君。この船は船員を募集してないかい?」
出発直前になって声をかけてきたのは歳の近い青年だった。
結果を言うとオレの目論見は大失敗だった。目をつけてた大型船はどこもかしこも船員は有り余っているくらいで、まるでつけいる隙はなかった。
それでも諦めずにいろんな所にアタックしたが全滅。日が出ない内にほとんどの船が出発して行った。
そんなこんなで気を落として港をぶらぶらしていたところ、まだ出発していない、ちっちゃな船を見つけた。ちなみにボートのようなものではなく、テレビとかで見た操縦桿が屋根で覆われている小型船と似た外見だ。
また断られるだろうな。なーんて気持ちだったオレは、もう当たって砕けろの精神で作業をしている少女へ話しかけた。
「なぁ、君。この船は船員を募集してないかい?」
「あっ、アタシ?えっと、ごめん!全然魚獲れなくて給料も払えないの。」
おっ、これは悪くない感触じゃないか?少なくとも交渉の余地はありそうだ。
「・・・逆に聞くけど、魚獲れるなら乗ってもいいってこと?いや、オレ、漁に出たこともないんだけどさ。」
「それは、そうだけど・・・。アタシもまだ漁師になってから半年くらいしか経ってない素人だし、正直いい船って訳でも無いし・・・。それでもいいなら、乗る?」
「おおっマジか!頼むよ!それとオレの名前は後場 丈。ジョーって呼ばれてる。」
「よろしく!アタシはサキエット。サキって呼んで!さぁ、ジョー、早速出発するよ!」
挨拶を交わして一瞬で意気投合したオレ達。快活で後先考えないっぽいサキ!ノリと勢いで後先考えないっぽいジョー!なんとも不安の残るド素人の漁師二人。本職の漁師が見たら「お前ら正気か?」と言わざるを得ない二人編成でこの砂の大海原へと飛び出した。




