1.人生なにがあるか分かったもんじゃない
すみません。話の進みが牛歩過ぎて商人を目指し始めるの6話くらいからになりそうです。
なんだか頭がぼんやりとする。薄く開けたまぶたの先はグワングワン揺れ動いて、忙しない。
にぶい頭をフル稼働させるが、今、自分は薄暗い洞窟のような場所にいることしかわからない。だが外が相当明るいのか出口らしきところから燦々と光が入ってきていた。
重い体でなんとか光の方へ向かって這っていく、外へ、外へ、そして乾いた風が頬を撫でた。
眩しい・・・何も見えん、そして意識が飛んでいきそう・・・
その時だった、誰かが近づいて来たような気がした。オレはかすかな希望に縋り"たすけて"と声にならない声をあげた。
声が届いたのか、なんか引き摺られてる気がする。
"大丈夫ですか?もうすぐ・・・・ますから!"
若い女の子?の声を最後にオレの意識は途切れた。
「うぅ・・・あぁ?」
次に目を覚ました時、目に映ったのは石の天井だ。石?というよりかレンガの塊のような、あるいは泥を固めたようなものだった。まだ少し気怠さの残る体を半分起こして辺りを見渡す。
壁に空いてるのは窓だよな?まるで吹き抜けのような四角い穴からは、目が潰れるかというくらいの夕焼けが差し込んでいた。そう部屋の隅々までを照らす程に。
エジプト?とかの砂漠の建築物っぽいな・・・。ってか、なんでオレはこんな所に?そう、あれは・・・
「あー!目が覚めたんですね!良かった〜。」
考えこんだ矢先、入り口から柔らかい印象の少女の声が聞こえた。
「もしかしなくても、君が助けてくれたんだよね?」
オレの後ろから声が聞こえたので振り向き様に返答した。そこにいたのは色白で小柄な少女。背の丈と比べても豊かな胸を腕で寄せており、心配そうにこちらを見ていた。普段なら見惚れていたかもしれない。
・・・が、しかし、彼女はあまりにも服と呼ぶには薄すぎる、水着のような衣装を纏ってた。
「きゃ〜〜!!!」
空を裂く程の金切り声。彼女ではなく、オレの口から。
ここはどこなのか。オレはどうやってきたのか。何故彼女は肌の半分以上が露出する衣装なのか。
全てを理解しきることはできず、キャパオーバーしたオレの脳は悲鳴という答えを弾きだしたのだった・・・
「申し訳ありません・・・」
数刻後、オレは正座して二人の女性の前で縮こまっていた。一人は先ほどの少女。よく見ると踊り子衣装なんだな。
そしてもう一人は20代くらいの占い師っぽい女性だ。
「まぁ、しょうがないわよ。突然のことだらけで受け入れるのにも時間がかかるでしょうし。あぁ、私はバフテン。そしてそこの涙目のちっちゃいのがマリベルね。」
バフテンさんは理解を示してくれたようで親身に話してくれている。ちなみに今いるのはバフテンさんの家だ。先程オレが悲鳴をあげたマリベルさんの家のご近所だ。
と、いかん。考えるよりもまずはオレも自己紹介せねば。
「オレは後場 丈といいます。それで、あのー、今の状況、とゆうかここが何処なのかも分かりません。」
これについては本当にその通りで、オレの記憶では普通に寝てた筈なんだよな。なのに気づけばあの洞窟で倒れてた。
「あぁ、それなんだけどね。どうやら魔法陣の誤作動みたいね。おそらく別の世界と繋がって、あなたが引き寄せられてしまった、ってとこかしら。」
・・・おいおいおい、聞き捨てならんこと言ってないか?魔法陣?ってか魔法?そんなんあるの?
なんか大学の友達が言ってた異世界転移ってやつか?
「あっ、でも原因が分かってるってことは、その魔法陣を使えば元の世界に帰れるってことですか!」
「・・・それなんだけどねぇ・・・」
・・・?なんか歯切れ悪いな?正直異世界転移なんてメッッッチャクチャにワクワクするけど、帰れるなら帰りたい気持ちがある。
「その・・・、言いにくいだけど、世界を渡る程の魔法陣を作る技術は失われてるのよ。もし作れても作動させる程のマナを溜め込むのに数百年はかかるわ。」
「つまり、帰る方法はないわ。・・・ごめんなさいね・・・」
オレ、放心、じょう、たぃ・・・
あぁ、もう、あのクソオンボロな安アパートを恋しく思う日がくるなんて・・・
「あっ、あの!でしたら!私のところに住んでください!」
今まで涙ぐんで静かだったマリベルさんがいきなりトンデモ発言をかましてきたが、それに反応する程の気力も残っちゃいない。
「マリベル?責任感があるのはいいけど男性との二人暮らしは認められないわね。彼を見捨てたくないのはわたしも同じだけど・・・。そうね、マリベルの家はジョーが使って。そしてマリベルは私の家に。取り敢えずそうしなさい。今後のことはまた明日話しましょ。」
は、はは、オレどうなるんだろ・・・
さようなら、オレの日常、オンボロアパート。
はじめまして、異世界人生・・・。




