リナ、演劇部の扉
**20xx年4月22日(月曜日) 高校1年生**
**朝**
目覚ましが鳴る前に起きた。
先週の遅刻以来、早起きを心がけている。
時計は6時15分。
「よし」
制服を着て、鏡を見た。
少し、高校生らしくなってきたかな。
朝食を食べながら、お母さんが「今日は部活見学?」と聞いた。
「うん。演劇部」
「楽しみね」
「緊張する」
咲希ちゃんに誘われて、今日見学に行くことにした。
中学の時、脚本を書いた。
でも、演劇部に入るのは初めて。
「いってきます」
いつもより早めに家を出た。
**午前**
学校に着いた。
咲希ちゃんが校門で待っていた。
「リナ、おはよう!」
「おはよう」
「今日、演劇部楽しみだね」
「うん...でも、緊張する」
「大丈夫。私も一緒だから」
咲希ちゃんの笑顔に、少し安心した。
1時間目、現代文。
先生が「今日は『羅生門』を読みます」と言った。
芥川龍之介。中学で習った作家。
でも、高校の授業は深い。
「この下人の心理状態を考えてみてください」
先生の問いに、クラスが静まった。
私は考えた。
下人は、善悪の間で揺れている。
生きるために、悪事を働くことを正当化しようとしている。
手を挙げた。
「田中」
「下人は、自分を納得させようとしているんだと思います。悪いことだと分かっているけど、生きるために必要だと」
「いいですね。自己正当化。人間の弱さが表れています」
先生が頷いた。
咲希ちゃんが「すごい」と小声で言った。
少し、嬉しかった。
**昼**
お昼休み。
咲希ちゃんと、演劇部の話をした。
「演劇部って、何人くらいいるの?」
「20人くらいかな。先輩たち、優しいらしいよ」
「そうなんだ」
「リナ、脚本書けるんでしょ? すごく貴重だよ」
「中学の時、一回書いただけだけど...」
「それでも、経験があるのは強いよ」
本当にそうかな。
不安だった。
でも、少しワクワクもしていた。
**午後**
放課後。
咲希ちゃんと一緒に、演劇部の部室に向かった。
3階の奥。
「演劇部」と書かれたプレートがある。
ドアの前で、立ち止まった。
「緊張する」
「大丈夫。行こう」
咲希ちゃんがノックした。
「はい」
中から声がした。
ドアを開けた。
部室には、10人くらいの先輩がいた。
「見学ですか?」
一人の先輩が声をかけてくれた。
「はい。1年の田中里奈と藤井咲希です」
「ようこそ。部長の山口です」
山口先輩は、穏やかな笑顔の人だった。
「今日は、基礎練習を見てもらいますね」
部員たちが並んだ。
発声練習が始まった。
「あえいうえおあお」
大きな声が部屋に響く。
次に、即興劇。
「じゃあ、『待ち合わせに遅れた友人』というシーンをやってみて」
二人の先輩が、その場で演技を始めた。
台本もないのに、自然に会話が生まれる。
すごい。
「演技って、こういうものなんだ」
呟いた。
山口先輩が「興味ある?」と聞いた。
「はい」
「脚本書けるって聞いたけど」
「中学の時、一度だけ...」
「それでも、書けるのは貴重。うちの部、脚本書ける人少ないんだよ」
そう言われて、少し自信が湧いた。
「演劇部では、役者だけじゃなくて、脚本、演出、照明、音響、色々な役割がある」
「自分に合った場所を見つけられるよ」
山口先輩の言葉が、温かかった。
**夕方**
見学が終わって、咲希ちゃんと校門を出た。
「どうだった?」
「楽しかった」
本音だった。
「私も。入部しよう」
「うん」
二人で決めた。
駅までの道を歩きながら、咲希ちゃんが言った。
「リナ、脚本書くの得意なんだね」
「得意かどうか分からないけど...好きかも」
「それが一番大事だよ」
電車に乗った。
窓の外を見ながら、考えた。
演劇部。
新しい場所。新しい挑戦。
少し怖い。でも、楽しみ。
家に着いた。
「ただいま」
お母さんが「どうだった?」と聞いた。
「入部することにした」
「良かったわね」
**夜**
夕食の時、家族に報告した。
「演劇部に入ることにしたよ」
「演劇部? リナが?」
太一が驚いた。
「うん。脚本書けるから、って言われて」
お父さんが「いいじゃないか。得意なことを活かせ」と言った。
「頑張る」
部屋に戻った。
机に向かって、ノートを開いた。
久しぶりに、物語を書きたくなった。
どんな話を書こう。
高校生の日常? それとも、ファンタジー?
ペンを持った手が、ワクワクしている。
中学の時、脚本を書いた。
文化祭で上演された。
あの時の達成感を、また味わいたい。
演劇部で、新しい物語を作ろう。
日記を書こう。
今日の、新しい一歩を。
## 後書き
**日記**
**20xx年4月22日(月曜日) 高校1年生 田中里奈**
今日、演劇部を見学した。
咲希ちゃんと一緒に。
部室に入った時、緊張した。
でも、先輩たちは優しかった。
発声練習、即興劇。
演劇って、こういうものなんだって分かった。
山口先輩が「脚本書けるのは貴重」と言ってくれた。
嬉しかった。
私にも、役割がある。
咲希ちゃんと、入部を決めた。
高校で、新しいことに挑戦する。
少し怖い。
でも、楽しみ。
中学の時、脚本を書いた。
あの達成感を、また味わいたい。
演劇部で、どんな物語を作れるだろう。
どんなキャラクターを生み出せるだろう。
考えるだけで、ワクワクする。
高校生活、始まったばかり。
遅刻もした。失敗もした。
でも、これから。
演劇部で、成長したい。
新しい友達と、新しい物語を作りたい。
明日から、部員として。
田中里奈、演劇部所属。
頑張ろう。
どんな時でも笑顔で。
新しい挑戦を、楽しもう。




