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村雲怪異探偵事務所  作者: 石動なつめ
CASE5 帰れないげっこ様

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3-3 情報収集


 ひと通り情報収集を終えると、ハルたちは美術準備室へと集合した。

 ワサビは相変わらず元気だったが、ヒバリの様子が少しおかしい。どこか難しい顔をしている。何かあったのかなとハルが思っているうちに、お互いに集めた情報の報告会が始まった。


「美術部に関しては、ハルちゃんが聞いたのと同じ話だったね」


 げっこ様の像から目がなくなったことがきっかけで、部員同士の関係がギクシャクしているとういうあの話だ。一応は、それぞれ冷静になった後で謝罪し、喧嘩自体は収まったらしい。

 けれどもその一件以降、多田マキは、あまり美術室へ近付くことがなくなってしまったそうだ。部活にも顔は出すが、すぐに一人でどこかへスケッチに行ってしまうらしい。


「やっぱ一度でも疑われると気まずいもんね……」


 ワサビがぽつんとつぶやいた。これにはヒバリも「そうですね……」と軽く頷いていた。

 それから彼は話を変えるように、


「あと、気になる話をもう一つ聞きました」

「何でしょう?」

「怪異現象の話です。学校のあちこちで『物が落ちる』という」


 ハルは目を丸くした。脳裏に、五十島家や美術準備室で起きたことが浮かぶ。


「あ、それあたしも聞いた。美術部の子とその友達の話なんだけど、何かね、机の中身とか棚に置いてあった物とか、気が付くと床に落ちていることが増えたんだってさ。最初は、まー、置き方が悪かったんだろうねって話してたらしいんだけど、それがあちこちで起きるようになったんだって。でも、物がなくなったって話は聞かないから、誰かの悪戯だろうって思われてるみたい」

「悪戯?」

「そうそう。半年くらい前に風が丘で怪異現象が起きたんでしょ? それで霊能者が除霊に来たのが印象的だったから、面白半分でそれに乗っかったんじゃないかって。その霊能者ってヒバりんたちのことだよね」

「だからヒバりんはやめてくださいと……ですが、ええ。私たちのことだと思います」


 相変わらずのヒバりん呼びに、本人はうんざりした顔で抗議しつつ、それから彼女の質問に頷いた。

 何の変哲もない日常にいた学生たちからすれば、ある意味で刺激的な出来事だったのだろう。だから、ちょっとした悪戯心でやったんじゃないか――件の怪異現象は学生たちの間でそういう風に受け取られているらしい。


「何とも平和的で良いですね……最近の若者は強い」

「ヒバリさんも達観するほどのお歳ではないと思いますが……。ちなみに、物が落ちるようになったのはいつくらいのことか分かりましたか?」

「四ヶ月くらい前かららしいよ」


 なるほど、とハルは頷いた。


「げっこ様の像から目がなくなった時期と一致しますね」

「となると、やっぱりその、げっこ様の像が関係しているってこと? 目がなくなったから怒ってるとか……」

「いえ……正確には像が、というわけではないのかもしれません」


 ハルは情報をまとめた資料に目を落としながら、人差し指の背を顎にあてる。

 もしもワサビの言うように、目をなくしたことでげっこ様の像が怒っているのだとしたら、その憤りはなくした本人へ向かうはずだ。つまりキクコか、目がなくなる原因となった他の誰かである。

 キクコであれば五十島家で、他の誰かであれば、その人物がいる場所で怪異現象が起こるはずだ。しかし今回は複数の場所で同時に怪異現象が起きている。

 ならば、五十島家と風が丘高等学校で起きている怪異現象の原因は別のもの、と考えるべきだろう。


「……像は、依り代」


 ハルのつぶやきに、ヒバリがハッと顔を向けた。


「もしかしたら五十島家にいたげっこ様があの像に降りて、キクコさんについて来たのかもしれませんね」

「なるほど、そうか……。げっこ様は子供を守る神様です。五十島家の子供であるキクコさんを心配して、それで……」

「待って待って、あの、あたしちょっと分かんないんだけどさ。その像って今は五十島さんところにあるんでしょ? なら、げっこ様だって五十島さんの家へ帰ってるんじゃないの?」


 ワサビは首を傾げる。彼女の疑問はもっともだ。像に入って来たのなら、キクコが持ち帰った時に一緒に戻っているはず――しかし、それができなかった。


「像の状態が違ったからです。恐らく五十島家のげっこ様は、自力でその土地から遠く離れることができなかった。だからキクコさんが作った像に宿ることで、彼女について行くことができた。つまり、あの像とげっこ様が一時的に同じ(・・)になっていたんです。そのタイミングで目がなくなった」

「えっ、じゃあ、まさか……その像に宿ったげっこ様からも目がなくなったってこと!?」


 ワサビがぎょっと目を剥くと、ヒバリはしっかりと頷いた。


「そう考えられます。それで、げっこ様が目を探して像から離れているうちに、キクコさんは五十島家へ帰ってしまった。像がなくなってしまったげっこ様は家へ帰れない。もしかしたら、こちらで物が落ちているのは、げっこ様が目を探して彷徨っているからなのかもしれません」

「私も同じ考えです。ワサビさん。放課後になったら、物が落ちたと言っていた人たちに、もう一度話を訊いていただけますか? どの教室で起きたことなのかを調べたいんです。そこに再びげっこ様が現れるかもしれません」

「オッケー! まかせて!」

「ヒバリさんは大変申し訳ないのですが、五十島家へ戻って、キクコさんからげっこ様の像を借りて来ていただけますか?」

「分かりました。ハルさんはどうしますか?」


 ヒバリに訊かれ、ハルは頷く。


「私はげっこ様の目を持っていると思われる人に会いに行ってきます」


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