【第7話】「強き者は必ず正義なのか?」
「つまり、あなたは『強い者が正義とは限らない』と言いたいのですか?」
貴族の男子生徒が苛立ったように尋ねた。
「そうではない。私は単に、強者が常に正しいのかを考えるべきだと言っている。」
俺は黒板に『強者の行動は正義か?』と書いた。
「例えば、私のいた世界には『マキャヴェリ』という思想家がいた。彼はこう言った。『目的のためなら手段を選ばないことも時には必要だ』と。」
「つまり、強者は何をしても正しいということですか?」
エルフの女子生徒が質問する。
「そう解釈することもできる。しかし、マキャヴェリはまたこうも言った。『民の支持がなければ、支配者の力は長続きしない』と。」
「では、民が認めればどんな強者も正義になれると?」
「その問いは重要だな。」
俺は黒板に『支配者の正当性とは?』と書き加えた。
「では、もし君たちが『民の意思に関係なく、強い者が正義である』と考えるなら、次の問いに答えてほしい。」
俺は教室を見渡し、ゆっくりと口を開いた。
「では、反乱が起こり、君たちの国が新たな支配者に征服された場合、彼らは正義になるのか?」
教室内が静まり返った。
「……それは……。」
貴族の生徒たちは動揺した表情を浮かべた。
「もし強者が正義ならば、今の秩序も絶対ではないということになる。それでも強者が正義だと言い切れるか?」
俺は黒板に今日のまとめを書いた。
『強者の正義は絶対か?』
そして、生徒たちに向き直った。
「今日の授業はここまでだ。次回の授業までに、この問いについて考えてくるように。」
「……宿題、ですか?」
平民の男子生徒が驚いたように聞いた。
「そうだ。答えは一つではない。君たちがどのように考えるか、それを次の授業で聞かせてほしい。」
俺は黒板の文字を指差した。
「強者の正義とは何か?」
ライガースが静かに笑みを浮かべる。
「やれやれ、なかなか面白い授業だ。」
生徒たちは複雑な表情を浮かべながら席を立ち始めた。
こうして、俺の初授業は幕を閉じた。