【第6話】「強者の正義とは何か?」
教室内の空気が徐々に変わり始めていた。
「つまり、あなたは貴族の統治を否定するのですか?」
貴族の男子生徒が険しい顔で尋ねた。
「そうではない。」
俺は静かに首を振った。
「私はただ、『強者の支配は常に正しいのか?』という問いを投げかけている。」
俺は黒板に『強者の正義とは何か?』と書いた。
「例えば、私のいた世界には『プラトン』という哲学者がいた。彼はこう言った。『支配者は善を追求すべきである』と。」
「善……?」
「そうだ。彼の考えでは、支配とは、単なる権力の誇示ではなく、民の幸福を追求するものでなければならない。」
「だが、結局は力がなければ意味がない。」
エルフの女子生徒が反論する。
「面白い意見だな。では、また別の哲学者の言葉を紹介しよう。私のいた世界の思想家、『ニーチェ』という男はこう言った。『強き者こそが道徳を作る』と。」
「つまり、結局は強者がルールを作る、ということですか?」
平民の生徒が口を開く。
「では、強者が必ず正義なのか?」
俺の問いに、誰も即答できなかった。
「……では次の課題だ。」
俺は黒板に新たな文字を書いた。
『力なき正義は無力であり、正義なき力は暴力である』
ライガースが静かに笑みを浮かべる。
「面白い授業だな。さて、この先どうなる?」
教室内の熱気が高まっていた。
授業は、まだ終わらない。