【第2話】「王立アカデミーでの第一歩」
王都ルメンティアの中央、広大な敷地にそびえ立つ荘厳な建物。
ここが、帝国随一の学問の殿堂――「ルメンティア王立学院」だった。
俺は馬車を降り、目の前の学院の門を見上げた。
「……デカいな。」
日本の大学よりも遥かに大きい。中世ヨーロッパ風の造りだが、細部は洗練されている。
「やれやれ、新しい教師か?」
門の前で、ひとりの男性――いや、長い髪を持つ女性が立っていた。
見た目は若いが、その目には鋭い知性が宿っている。
「貴様が例の異世界人か?」
「ええ、そうですが……。」
「フム……面白い。」
彼女は俺をじっと見つめ、微笑んだ。
「私はライガース。この学院で魔法学を教えている。よろしく頼む。」
魔法学の教授か。しかし、何か違和感がある。
俺は内心で首を傾げながら、彼女とともに学院の中へ入った。
***
学院の会議室には、既に何人かの教授が集まっていた。
「では、紹介しよう。」
ライガースが俺を中央に立たせると、周囲の教授たちが俺を観察するように見つめた。
「異世界から来た、藤原礼司。これから倫理学を教えることになった。」
「……倫理学?」
一人の壮年の教授が眉をひそめた。
「そんなもの、我々の世界に必要なのか?」
「倫理とは何か、それを理解していない者が多い。だからこそ、学ぶ価値がある。」
俺は落ち着いて答えた。
教授たちはざわめいた。
「倫理学……確かに興味深いが、我々の帝国に通用するのか?」
「それは、私の授業を聞いて判断してください。」
俺は静かに微笑んだ。
ライガースは興味深げに俺を見つめていた。
彼女の正体――それを知るのは、まだ先の話である。