【第11話】「皇宮での初めての食事と新たな一日」
朝日がゆっくりと昇る頃、俺は皇宮の一室で目を覚ました。
「……夢じゃなかったか。」
昨夜遅くまで考え込んでいたせいか、少し体が重い。
身支度を整え、用意された食堂へ向かうと、テーブルには見慣れない料理が並んでいた。
「これは……?」
皿には、パンに似たものと、見たことのない肉料理が乗っている。スープのようなものもあるが、日本の味噌汁とは全く違う。
俺は小さく息をつき、まずスープを一口飲んだ。
「……おお?」
優しい味わいだが、独特の香草の風味が広がる。塩味は控えめで、どちらかというと鶏の出汁が強く感じられる。
次に、焼かれた肉を一口噛んだ。
「……これは、牛肉ではないな。」
少し歯ごたえがあり、噛めば噛むほど旨味が広がる。だが、日本の牛肉のような脂の甘みはなく、よりしっかりとした肉質だ。
「先生、お口に合いますか?」
側で待機していた侍女が尋ねた。
「ええ、美味しいです。ただ、日本の料理とはかなり違いますね。」
「日本……先生のいた世界の料理とは、どのようなものなのですか?」
俺はしばらく考えた後、答えた。
「例えば、米というものが主食で、それに味噌汁や焼き魚がつくことが多いですね。スープはもう少し塩味が強く、出汁の味がはっきりしています。」
「お米……?」
侍女は少し考え込むように呟いた。
「こちらでは、小麦が主に食べられていますね。お米は主に南方の国からの輸入品で、高級品として扱われています。」
なるほど、この世界では米が贅沢品なのか。
「それにしても、異世界の料理を食べるのは不思議な感じですね。」
俺は苦笑しながら、再びスープを口に運んだ。
こうして、俺の異世界での最初の食事は無事に終わった。
***
朝食を終え、玄関に出ると、すでに数人の騎士が待機していた。
「おはようございます、先生。」
「……おはようございます。」
「本日より、陛下の命により、我々が先生の護衛を担当することになりました。」
「護衛……?」
俺は少し驚きながら、騎士たちを見た。
「陛下の命令です。学院への移動中、何か問題があってはなりませんので。」
「……そうですか。」
昨夜、皇宮で保護されることが決まったが、まさか護衛付きとは思わなかった。
俺は馬車に乗り込み、学院へ向かうことになった。
***
馬車が市街地を進むにつれ、窓の外には多くの人々の姿が見えた。
貴族たちは俺の乗る馬車を一瞥すると、何かを囁き合った。
「まさか、あの者が倫理学の教授か?」
「皇宮から直接学院へ……まるで王族のような待遇だな。」
「陛下のお気に入り、ということか?」
そんな言葉が耳に入るたびに、俺は静かにため息をついた。
一方、平民の人々は俺に対して少し異なる反応を見せていた。
「先生だ!昨日の授業、面白かった!」
「次の授業も楽しみだ!」
馬車の中から、俺は少しだけ微笑んだ。
少なくとも、俺の授業に興味を持ってくれる者もいるようだ。
***
学院に到着すると、玄関前にはすでに何人かの教授と学生が待っていた。
「おはようございます、先生。」
「……おはよう。」
俺が馬車から降りると、貴族出身の教授たちは一歩距離を取りながら、静かに俺を観察していた。
「皇宮の先生が、学院に降りてきたか。」
「はたして、倫理学など本当に必要なのか……。」
相変わらず、俺の存在を疑問視しているようだ。
だが、それも仕方がない。
俺は心を落ち着かせ、静かに学院の門をくぐった。
こうして、新たな一日が始まった。




