#7 道は開かれる
「ブランの兵隊です!」
見回りの騎士が報告する。
ついに…この日が来た。
真のプレイヤーがチュートリアル戦でこの領地に入って来る日が。
プレイヤーは斥候と言う名目での少人数戦だけど私にとっては運命の分かれ道。何とか戦場に出られないかしら…。
しばらくして私はロランに呼び出された。
昨日は動きが無かったけれどコイツの問題もあったのよね。
「待っていたぞ。エリザベス」
スタッフォード軍の幹部に囲まれて地図を広げたロランが笑顔で迎える。そんなに晴れやかな顔して…悪巧みは終わったのかしら?
「エリザベス、お前に話がある。ブランの斥候が現れた。本隊はすぐ近くだろう。」
「ええ…聞いております」
「斥候はこのローニャの森にいる」
…違う。プレイヤーと戦うのはアラン峠よ。
しかも本隊はまだ来ていない。何もかも嘘っぱちねロラン。
「お前にはアラン峠を抜けて援軍を頼みたい。あの道なら安全だ。馬で行けば北の砦までは1日もかからないだろう」
「………アラン峠?」
「俺は軍を展開して斥候の背後を突いてローニャの森でヤツらを討ち抜け、シラウス平原で本隊を迎える布陣を敷く。」
あぁ、私にあの影武者をやれ、と言うのね。
しかもエサとして使うつもりだわ。
自分はローニャの森を安全に通ることが出来て、さらに邪魔な私もブランが始末してくれれば一石二鳥だと考えているんでしょうけど…
「俺と同じ鎧兜を用意させた。もしお前が援軍を連れて戻った時、俺に何かあったならお前が俺のフリをして軍を率いろ。そして必ず勝利してスタッフォードの家督を継ぐんだ。」
うわぁ。臣下の手前良い人ぶっていい話にしてるけど話が逆よね。
『俺の影武者としてブランの斥候に討ち取られて来い。』が本音でしょ?私が出立したらブランにわざと情報を流してアラン峠に向かわせるくせに。
しかも身体の弱い令嬢に鎧兜で馬に乗れとか…無理に決まってんでしょ!いや『私』なら全然大丈夫だけどさ。
でも、道は開かれたわ!!
装備が整った状態で戦場に出れる!!!
自分が成すすべもなくスタッフォード領がブランに蹂躙される事は避けられるわ。
「…わかりました。ただお願いがあります」
「なんだ?」
「お父様の馬シエルと、お兄様の剣リオンズファングを下さいませ。お兄様のフリをするなら一目でわかるそれなりのモノが必要でしょうから」
ロランはしばらく考えていたけど頷いた。私が死んだ後回収出来ると思ったんでしょ?見え見えだわ。
「わかった。それとお前に5人の護衛つけるから連れて行け」
「ロラン様、しかしあの者達はまだ騎士になったばかりで…」
部隊長が不安そうな顔で進言する。
「大丈夫です。部隊長。わたくしたちは安全なルートで援軍を呼びに行く任務です。戦力はできるだけ本隊に置くのが良いでしょう。お心遣いありがとうございます。お兄様。」
「ああ、頼んだぞ…エリザベス」
ほら、あくどい笑みが隠しきれてないわよロラン。
でも多分私も同じ顔してるんだろうなぁ。兄妹だし。
けど…こんなにラッキーな事あるなんて!!
もしかしないでもこれもLUKカンストの恩恵なのかな。
頑張ってLUKアップアイテム集めて良かったわ!
私は一礼してさっそく準備をするべく部屋を出た。
つづく