表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

空色箱

狭間色のスカイキューブ

 冬の始まりの日。すっきり晴れた空に、小さなナイフを差し込む。

 地平線ギリギリを滑らせて切り取った青を、慎重に瓶に詰める。

 からんころんと音を立てて溜まっていくのは、白っぽい濁りを含んだ青のキューブ。

 一粒つまんで日に翳すと、青空より淡い青がキラリと透ける。口に入れる。ひやりとしたクリアな甘さが舌に触れ、次第に柔らかな味へと変化していく。

 冬の始まりらしい、きんと澄んだ中に暖かさが残る味。

 よし、今日はこれでいってみよう。


「ゼニス。毎日懲りないね」

 研究室を訪れると、ナディは本から目を離さず、淡々と私を迎え入れた。

「ナディが合格くれないからですよ?」

 文句を言いながらキューブを提出すると、夜の底のような瞳がやっと動いた。

「ふむ。今日は一段と色の高度が低いな。色むらもないし、味も良い。腕を上げたね」

「でしょう」

「にしても。空は広いのに、何故いつもこの青を持ってくるんだい?」

「それは」

 思わず口籠る。天頂(ゼニス)天底(ナディア)の間だから、なんて恥ずかしくて言えない。

「……好きな色、だから」

「なるほど、不合格だ」

「なんで!?」

 声を上げると、ナディは静かに目を伏せ、いつもと同じ答えをくれた。

「君が正直に話したら応えてあげる」

天頂の色(ゼニスブルー)持ってきたら、一発で合格出ると思うんですよね」

「でもそうすると来てくれなくなりそうだよね」

 二人の行く末を見守る友人達はそんなことを思っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ