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第30話 ハッピーエンド 【最終回】

 クズ男は予定通り鉱山送りだって。

 ま、せいぜい働くがいい。

 わたしのお父様やお母様……ディール伯爵夫妻のように、身元引受人なんていないだろうから、鉱山で働いたほうがマシよね。

 平民として、市井でなんて生きていけないだろうし。

 大丈夫、ヴァイセンベルク王室所有の鉱山は、それなりに恵まれた環境。きちんとご飯は出るし、十日に一度休みもある。肉体労働だけど、奴隷のように酷使されるようなことはない。

 まあ、政略だから姉から妹に婚約者を代えても当然なんていう非常識な男は、ご両親と共に隔離されて、まっとうな人間に矯正してもらったほうがいい。

 ……なるかな? 

 鉱山で働いて、恩赦とかで市井に戻してもらって……でも、若かりし頃の美貌なんかどこかに行って、落ちぶれて腐っている未来しか思い浮かばないなあ……。

 まあ、あいつのことはどうでもいいか。

 もう無関係。

 記憶から消去。

 そんなこんなで。

 もう、過去は忘れて……じゃなくて、終わったことにして。

 わたしたちは未来に進む。

 あー、楽しみだなあ、来年のわたしとマーティンの結婚式。

 資料室でまだ勉強を続けるというユーリーとラフェドと別れて。わたしとマーティンは離宮へと向かった。

「うわあ、きれいになっている……っ!」

 前に見に来たときは、それなりに手入れはされていたけど、どこか閑散としてさみしい感じの離宮だった。

 だれも住んでいないわけじゃなかったし、マーティンもヴァイセンベルク王国に留学しなかったら、迫りくるご令嬢がたから逃げるようにして、この離宮の奥で隠れ住むつもりだったって。

 あー、それを、聞いてしまっていたから、この離宮がなんか辛い感じに思えたのかもしれない。

 離宮の玄関ホールや大階段。その辺りの壁や絨毯は赤色で、そこに金色で縁取りがされている……っていうものが多いのだけれど。

 重厚感や高級感はあるけど、新婚生活を送るには、ちょっと重苦しいなあ……って、うっかり言ったら。

「あ、じゃあ、壁紙とか全部張り替えようか? 絨毯も総入れ替えしよう」

 ……マーティン、離宮の壁紙全部張り替えて、絨毯も総入れ替えって、どれだけ費用が掛かると思うのっ! 国税の無駄遣いはダメっ!

「ん? 予算の範囲内だけど?」

 ……モードント王国はお金持ち……なのね。ふう……。

 壁紙はそのままに、絨毯だけを替えてもらうことでなんとか……。

 元々の絨毯は、使用人たちの屋敷のほうで使ってもらうことにするって。

 ふう……。

 伯爵家と王家の金銭感覚は、ものすごく違うわ……。慣れるべきなのか、それとも慣れないほうがいいのか……。

 あ、でも替えてもらった絨毯いい感じ。

 床が白っぽい色になるだけでも、さわやかさが増したわ~。

 うふふふふ。

 マーティンと一緒に離宮を見て回って。

 将来ここでこんなことをしようね、あんなことをしようねなんて話したりして。

 ああ、楽しいなあ。しあわせだなあ。

 こんなしあわせは、マーティンと出会えたから。

 ここまで、全力で、突っ走った。

 だから、いろいろあったけど、しあわせを掴めたのかなあ……なんて。

 まあ、でも、ここがゴールじゃない。

 これからもきっといろいろあるんだろうな。

 フランツィスカ様みたいに、未来の予測なんて、それほど立てることはできないけど。

 ……マーティン狙いだったご令嬢がたとのバトルは必至でしょう。

 負けないよっ!

 全力で、わたし、対抗するからねっ!

 改めて、マーティンに宣言したら。

「ザビーネが全力で突っ走っていくのは、長所だと思うけど」

「ん?」

「結婚して、夫婦になるんだから。長い人生、一人で突っ走らないで。二人でゆっくり一緒に歩いていこうよ」

 前にも、似たようなことは言われてた。

 そうだ、わたし、これから、マーティンと一緒に生きていくんだ。

 手を伸ばして、指を絡める。

 あたたかな、マーティンの指、掌、腕。

 マーティンの胸にもたれかかる。

 優しいリズム。心臓の鼓動。

 とくんとくん……って、聞こえてくる。

 この速度で、わたし、走るのではなく、マーティンと歩いていく。

 でもわたし、猪突猛進タイプだから。突っ走りそうになったら、マーティンに抱き着いて、マーティンのこの鼓動を聞こう。

 とくんとくん……。大好きな、音。

「うん。マーティン。一緒に、だね」

 微笑み合って、顔を寄せ合って、わたしたちはそっと唇を触れ合わせた。

 柔らかな温度。

 わたしの、しあわせ。





 終わり








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