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1-(8)


*****



「おいっ待てっっ!」


素性不明の少女に気を取られていた男たちの一人が、カイン達が逃げ出すのを見て後を追った。


しかし、追い掛けようと駆けだしたその男の体が崩れた。


よくよく見ると、男の足にいつの間にかクナイが刺さっている。


それが飛んできた方に視線を移すと、少女の紅い瞳がこちらを捉えていた。


「今の相手は私のはずなんだけどなぁ。よそ見していると嫉妬で手元が狂っちゃうかも」


その顔には幼さの残る無邪気な笑顔が浮かんでいたが、それに似合わない物騒なことを口にすると、彼女は腰に手をやった。


眼の前の人物の雰囲気が先程と変わり、男たちも身構えた。


しばらく静寂が辺りを包む。



まず動いたのは右側の男。


少女に向かって駆け出し剣を振り下ろした。


その攻撃を横に跳ぶことでかわし、その反動で左側にいた男に蹴りを喰らわす。


次に、二人同時に斬りかかってくるのを視界の隅に捉えた。


反射的に高く跳びあがり、クナイを投げつける。


それにより動きを封じられた男たちは、隙をつかれて少女の放つ重い飛び蹴りを喰らい倒れていった。


更に何人か倒したところで漸くクレッシュが前に出できた。


「意外に弱いんだ。こんな小娘にやられたとなったら、軍人様も笑いものだよね」


お気の毒さま、と少女は挑発するように言ったが、クレッシュは先程のように感情的にはならなかった。


「はっ。そんな事を言えるのは今のうちだぞ。」


クレッシュはそう言うと静かに体の前で剣を構える。


先程とは違い、神経を研ぎ澄ました彼は目の前の獲物を見やった。


その変化を感じ取った少女も腰を落とし構える。


心地よい緊張感を感じながら、少女は唇を舐めた。




「お手柔らかに」



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