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カインが眼の前の少女の横に移動しようとしたとき、背後から人の気配がした。
それを感じた瞬間、カインは連れの少女を庇う位置に動き、その人物に剣を向けた。
「ぅおっ、ちょ、まって!!敵ではないからねっ!そこの彼女の連れなんだけど、君たちが逃げてくれないとあの子連れて帰れないんだわ」
その男は剣を向けられ慌てた様子でそう言い、ついて来いと言うように後方にある獣道を指した。
一見分かりにくいが、木と木の間に人が一人ぎりぎり通れそうな程の細い抜け道があった。
軍の仲間のようには見えないし、その少年も助けてくれた少女と同様に旅装束をしている。
信じても良いのだろうか。
しかし、もし罠だったら今度こそどうしようもない。
ここで捕まるか、目の前の人物を信じるか―――
カインが隣に目を向けると、連れの少女はカインの眼を一度見つめ、ゆっくりと頷く。
少女は顔を前に向けると、先に歩きだしていた少年の後について歩き出した。
カインは一度後ろを振り返り、暫くの間先程の少女の背中を見つめていた。
彼女の正体は分からないが、またいつか出会える事を願い、先に歩き出した少女の後を追いかけた
。
今は目の前の少女を守ることを考えなければ。
カインは一瞬蘇った過去の記憶に蓋をし、一歩踏み出した――――