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ダッ――
「はいストーップ」
「「!?」」
いつの間にか、二人と男たちの間に少女が一人立っていた。
突然現れた少女に、追われていた二人だけでなくその場にいる全員が瞠目した。
そんな周囲を気にも留めず、少女は二人に背を向ける形で男たちに向って言いたてた。
「明らかに人数比おかし過ぎでしょ。大の大人が寄って集って恥ずかしいとか思わないわけ?」
明らかに男たちを挑発するような発言に、クレッシュが眉間にしわを寄せる。
「なんだ、貴様は」
怒りを押し殺した男の声に臆することなく、寧ろ可笑しそうにシャオンは答えた。
「相手に名前聞くならまず自分の方から名乗る。これ常識よ~?」
「黙れ、小娘」
「まあ私は名乗るつもりないけど。あと、あんたの名前なんて全くこれっぽっちも興味ないんで、寧ろ名乗らないでね♪」
少女の口調はまるでウインクでもしそうな程で、本当に興味がないことが明白だった。
馬鹿にされたと理解したクレッシュが無表情で彼女に近づき、剣を向けた。
眼には怒りがありありと浮かんでいる。
「あんたが私の相手?ふんぞり返って口先だけかと思ったけど、少しは度胸あるみたいね」
「黙れっ!!」
そう叫んだクレッシュが、その大柄な身体には不釣り合いな素早さでシャオンの首を狙った。
それをひらりとかわすとそのまま男の足を払い、後ろへ下がり距離をとった。
「くっ」
体勢を崩したクレッシュは、それでもすぐに起き上がりシャオンを忌々しそうに睨んだ。
「我等に楯突くという事はこのスロウィジアン公国に楯突くということ。覚悟は出来ているんだな」
「その悪趣味な服みれば子供だって軍人だと判るわよ。私は今までだって軍に味方なんてしたことないし、これからだってそのつもりなの。今の体制が変わらなければねっ」
シャオンはそう言い放つと攻撃の構えをとった。