第三章 離別、そして再会(1)
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大好きだったよ?
私の手を握り締める手が
嬉しそうに細められる瞳が
貴方の全てが、私の支えでした
だから…
これ以上は何も望まないから…
離れていても、貴方を想ってもいいですか?
ねぇ、----
第三章
セレスティアの様子がおかしいことには、シャオンもアレンも気付いていた。
しかし、本人がただの体調不良であると言い張ったため、二人ともその事に関してはそれ以上何も言えなかった。
セレスティアを案じながらも、食事を終えて自室に戻る彼女を見送った後シャオンたちも解散した。
普段よりも遅い食事であったのと、久々に動いた身体が予想以上に疲れていた為、シャオンは布団に入ると早々に意識を手放した。
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自分の髪を撫でる優しい手。
その温もりを、その存在をもっと感じていたくて、シャオンは瞳を閉じて触れられた場所に意識を集中させる。
それが離れると、頭だけでなく身体の奥の方も冷えていくように感じ、僅かに表情を崩した。
ふっ、と目の前の彼が笑った気がして、ゆっくりと瞼をあげて視線を送る。
『笑ったでしょ…』
『ははっ、ごめん。頭を撫でられるのがそんなに好きなのかなぁと思って』
『そ、そういうわけじゃ…ない』
名残惜しそうにしていたことに気付かれてしまい、シャオンの頬がパッと朱にそまる。
これ以上失態を晒したくなかったので、シャオンは彼から顔を背けた。
『…シャオンはもっと人に甘えてもいいと思うよ。おじさんたちもシャオンの事好きなんだから、たまには我が侭でも言ってあげたら?』
唐突な言葉だったが、シャオンは他の人にも言われ慣れているのか、少し考えた後口を開いた。
『父さんたちに我が侭なんて、言えない、から…。』
『…はぁー、シャオンらしいといえばらしいけど。でも』
諦めたように息をはき、彼は言葉を切った。
シャオンが不思議に思い視線を戻すと、強く射るように此方を向く視線と絡み合った。
その強固な瞳に、シャオンは息を呑む。
『で、も?』
『…いや、なんでもない』
喉がカラカラになりながらもなんとか発した言葉に返ってきたのは、納得のいくものではなかった。
問い詰めようとするシャオンだったが、彼は誤魔化すようにシャオンの髪をくしゃっと掻き乱した。
『なっ、何するの!』
自分の頭を襲う手を退けようと、シャオンが抵抗すればするほどその手に力が込められる。
『もっと、力抜けよ』
あんたこそ抜きなさいよ!と言いたかったが、続いた言葉にそれは叶わなかった。