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「いつまで逃げ続ける気だ?」
クレッシュとカインはにらみ合ったまま動かない。
「その方をこちらに渡せば、これまでの功績により命だけは助けてもらえるかもしれんぞ? 」
クレッシュが嘲笑うようにそう言い、カインに降伏を要求した。
「それは出来ないっ!」
カインはなおも戦意を失わず、斬りかかってくる男達をなんとか倒していく。
「カイン…もう、ダメなようです。私を残して貴方だけでも逃げてください」
今まで黙っていた少女だったが、不意にカインの肩に手を置き、目を伏せてそう言った。
「だめです!いくら貴女でもどうなるかっっ!此処で諦めたら…」
カインは少女の手を引こうと自分の手を伸ばしたが、彼女はそれをやんわりと拒み首を振った。
「そうかもしれません。ですが、このまま二人とも捕まってしまえばそれこそ意味がありません」
彼女の意志は固く、引き下がらない。
「…っ。それでも、貴女を置いていくことは出来ません。もう、誰も守れないのは嫌なんです…っ」
「カイン…」
そう言うカインは何かを後悔するような悲痛な表情で、少女はそれ以上何も言えなかった。