2-(26)
-これ以上聞いたらいけない。
頭の中で鳴り響いた警告音に、シャオンは今度こそこの場から去るべく足を動かした。
(何を畏れてるんだろう…。アレンとは、何でもない、ただ私が依存してるだけ…だって、)
-私は今でもアレンではなく、彼の……
自分の中に存在する俗念を振り払うように、シャオンは足を速めた--
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シャオンが去った後も、彼女に気付かない二人は話を続けていた。
「ははっ、恋人なんかじゃないですよ~。あー…なんていうか、ここだけの話ですけど、あいつの中にはまだ他の男がいるみたいですから。そいつには、俺がいくら努力しようが適いっこないんです」
本人には言わないで下さいよ、と俯きかげんに笑うアレンの顔を見て、セレスティアの表情に影が差す。
「そう、なの。……ア、アレンは何処かに落ち着こうとは思わないの?この先ずっと旅をするわけじゃないんでしょう?」
セレスティアが話題を変えようと、今後のことについて聞いてきた。
「やらなきゃいけない事もあるし、ずっとって訳じゃないと思いますけど、当分は旅を続けますよ。」
いつもの人懐っこい笑顔を見せて迷い無く言うアレンに、セレスティアはそれ以上何も言え無かった。
「訳有りなんで、一カ所に長くは留まれないですしね」
そう付け足して、アレンは暗くなってきましたね~と空を見上げた。
これ以上話す気はないという雰囲気を出す彼を見つめ、セレスティアは知らず知らずのうちに唇を噛み締めていた。
出会って間もないがアレンに惹かれていた彼女にとって、先程のアレンの言葉は鋭く胸に刺さって彼女を苦しめた。
まだ始まって間もないこの恋は実らないと分かってしまったのだ。
やり場のない悲しみを隠しながら、セレスティアは大きく息を吸い込んだ。
「完全に暗くなる前に買い物に行かなくちゃ!頼まれた物もあるし」
勢い良く立ち上がり、アレンの方に向き直る。
「少し遅くなっちゃうと思うから、灯り、点けるの頼めるかしら?」
危ないから付いて行くと言ったアレンを残し、セレスティアは一人で夕食の買い出しの為に街へ下りて行った。
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