2-(24)
久しぶりに動いたせいか、横になり休んでいたらいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
気付けば部屋に西日が射し始めていた。
特にする事も無いので、シャオンは建物の周りを散歩しようと腰を上げた。
もしも何かあった場合、周囲の地理を知らないが為に策が限られてしまっては不利になる。
例え地図上で確認していたとしても、実際に目で確認しなければ判らないこともある。
そう考えながら、シャオンは早速外に出て散策し始めた。
******
病院の裏手は深い森に囲まれており、正面には街までの一本道がある。
此処は小高い丘にあり、周囲に高い木があまり無いので見通しは悪くない。
逆に言えば、敵にも都合が良い事になる。
正面の方へ出て行けば、自分達の姿を隠せないので格好の的になるだろう。
(あちらさんがこっちから来てくれれば…って、向こうも馬鹿じゃないからそれは無さそうね。後は…)
シャオンは様々な状況を予測し、それらを頭に入れながら歩みを進めた。
正面から見て右手には、畑を挟んで小さな協会がある。
左手には広い果樹園があり、その奥は森が続いている。
(敵に囲まれたら森に逃げ込んで、左手の川沿いに下っていくしかないか…)
セレスティアから借りた地図には、裏手の森の先には崖があり、その下に川が流れていたはずだ。
そこに一カ所だけ橋が架かっていて隣街に続いているが、余程間抜けな敵でない限り気付かれる筈だ。
そこは使えない。
(橋を渡らずに、川沿いに果樹園の裏を抜けていくのが妥当ね。そっちから攻められたら厄介だけど、なんとか抜けなきゃ…)
どこまで下ってから川を渡るかは今確認出来ないので、シャオンはそこで踵を返した。
(ある程度敵を引きつけないと、病院に被害がでる可能性が高いのよね。一番良いのは、敵に居場所がばれる前に此処を出ないと)
そう結論づけて、病院に戻ろうとしたシャオンの耳に聞き慣れた声が届いた。
「ーーっ、ーーがーーって!」
畑の方から聞こえてくるその声に、彼女の足は自然と向かっていた。