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足止めしようにもこれだけの人数がいては全員の相手は出来ない。
一人でも逃がせば、彼女の足ではすぐに追いつかれてしまうだろう。
それに、もうすでに半分ほど倒したがまだ追手はやってくる。
これではキリがない。
その上、少女を庇いながら闘っている為あまり自由が利かない。
カインの息も上がってきており、これ以上は苦しいようだった。
それでも彼は臆することなく、十数人はいるであろう男たちと対峙している。
「だいぶ動きが鈍くなってきたのではないかな」
男たちの中で、服の色が少し違う男が青年に向かって話しかけた。
「クレッシュ軍曹…」
「ふんっ。若造のくせにでしゃばりおるからこうなるのだ。国を裏切ったお前に未来などないぞ」
クレッシュと呼ばれた男は忌々しそうにカインを睨み、斬りかかってきた。
カインはそれを辛うじてよけ、逆にクレッシュに回し蹴りを放ったが、彼はとっさに後ずさり周囲に目配せをする。
上官の意思を理解した男たちが左右から同時に迫ってくるのを横目で確認し軽く受け流すと、カインは少女の手を取り再び駆け出した。
しかし、すぐに追いつかれてしまう。