2ー(9)
「とにかく!暫くは動けないんだからさぁ、今のうちに休もうよ。しっかり治して、ちゃんと計画練ってから動きたいしね」
「…実は、ただセレスティアさんと一緒にいたいだけだったりして」
シャオンは冷静になるように勤めながら面白半分でそう言ったが、途端に視線を泳がせ始めたアレンを冷めた眼で疑わしげに見つめた。
「……は、早く良くなるといいなぁ。ハハ…」
シャオンの冷たい視線に晒されながら何とか誤解を解き、アレンが部屋から出る頃には彼の精神は限界まですり減っていた。
途中からはからかい半分にシャオンに弄られていたが、半ベソになりかけたアレンをみて漸く彼女の気分が晴れたらしい。
アレンは誤解がとけた事に安堵のため息をついて、与えられた部屋に戻るために足を動かした。
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…チュンチュン……
小鳥の囀りが部屋に響く心地よい音でシャオンは目覚めた。
「ぅ、ん……」
薬のお蔭で深い眠りについていた為、完全に覚醒するまでに時間がかかる。
カタン
誰もいないと思っていたが、窓を開ける音が部屋の中に響き自分以外に人がいると気付く。
その人はカーテンを開け空気の入れ替えをしている様で、起きたシャオンに気付くと口を開いた。
「あ、おはようございます、シャオンさん。もしかして…起こしてしまいましたか?」
「いえ、大丈夫です。おはようございます」
シャオンがそう返すと、声の主ーセレスティアが良かった、と微笑んでシャオンに近付いた。
その手には体温計と薬がにぎられている。
「熱、計らせてもらうわね」
「あ、はい…」
セレスティアから体温計を受け取ると、彼女の髪型がいつもの縛り方と違うと気付く。
「今日の髪型似合いますねー。キレイですよ」
「あら、ありがとう!この飾りはアレンから貰ったの」
照れながらも恥ずかしそうに笑う彼女の髪はいつもと違い高い位置で結われ、そこには彼女に似合う紫色の髪飾りが淡く輝いていた。
「アレンが…ですか?」
「街に買い出しに行った時にね。昨日が誕生日って言ったらお祝いにくれたの」
「そう、なんですか。…おめでとうございます!」
「ありがとう。」
驚きと共に痛む胸をギュッと抑え、不自然にならない様に笑顔を作った。
自分が傷付く理由も権利も無いんだと分かっているが、二人が上手くいく事を素直に喜べない自分を呪いたくなる。
(二人がこのまま上手くいくなら、今後のこと考えなきゃなぁ…)
果たして今の自分はアレン無しで立っていけるのかと自問する。
きっと大丈夫…
いつまでも頼ってばかりじゃいけない。
シャオンは自分にそう言い聞かせて瞳を閉じた。