2ー(8)
「最近の軍の動きはますます活発になってるらしいね。近々大きな戦争でもおっぱじめるんかねぇ…」
二人になった部屋で、アレンが呆れたように呟く。
戦争をして苦しむ人は大勢いるが、得をするのは一部の人間。
戦争しない事に越したことはないのに、今この国にはそれを止められる人々はいない。
現国王と元老院たちの権力が増幅し、彼らの言いなりになるしかないのだ。
「今の俺らには関係ないことだけどさぁ…」
「関係なくは無いんじゃ、ないかな。国が荒れれば私たちにも少なからず影響が出るし…」
俯いたままシャオンが言うが、いつものように覇気がない。
「…まぁそうだけど、実際俺らには何も出来ないし。もしスレア様が生きていれば何とかなったかもだけどね」
そう言うアレンに、シャオンは力なく笑う。
スレア様というのは、一年ほど前に病気のため亡くなった王妃のことだ。
彼女は前国王の血をひく王位継承者で、政治などに対しても影響力が強かった。
そして、武力で何でも解決しようとする今の国政を唯一止めようとしていた人物だ。
彼女が亡くなってからは、武力による侵攻が増え、軍部の権力は今まで以上に増している。
普段なら反論してきそうな内容なのに、余程気になる事があるのかそれ以上何もいわない。
最近様子がおかしいシャオンにアレンはもどかしさを感じたが、これ以上彼女の悲しい顔を見たくはなったので話をかえた。
「そういえば、ここには明日からセレスティアさんしかいないんだよなぁ…大丈夫かな?」
「…入院患者も二人しかいないって言ってたから心配無いとは思うけど、手伝ってあげたら?」
まともな返事が返ってきて、アレンは話を変えられた事に内心ホッとし、さらに続ける。
「っしゃ!じゃ明日は、畑仕事終わったらセレスティアさんに付いていようっと」
「…そう、したらいいんじゃない、かな。」
にやけながら言うその姿に、シャオンは彼がセレスティアと一緒にいるのがなんだか嫌だと感じる自分に戸惑った。
(な、なんでアレンとセレスティアさんが仲良くする事に対して私が悲しむわけっ!?関係ないじゃん!)
突然首を振るシャオンに若干驚きつつ、アレンは彼女の顔から先程のような憂いが無くなった事に安堵した。
一方のシャオンは、先程とは違う悩みに戸惑っていたが、それは子供が玩具を盗られて不機嫌になるのと一緒だと一人で納得して気持が少し浮上したが、そんな子供っぽい自分の感情に更に落ち込んでいた。