2ー(6)
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日が落ちて辺りが完全に暗くなり、アレンが明りを灯しにシャオンの眠る部屋にきた。
ちょうど目覚めていたシャオンと一緒に夕食をとると、今後の行き先と軍を撒く方法について話し合っていた。
「この道はまだ調べてみないと判らないけど、いい目眩ましになるんじゃない?」
地図上の道を指しながらアレンがシャオンに提案する。
「確かに…。でも、私たちが動いたってあいつらに教えないとこの辺りの村に迷惑がかかる。この道を使うとして、山を抜けたら…」
コンコン
シャオンの言葉に被るように響いたノックの音に、アレンがどうぞ~と返した。
二人ともこの部屋を訪ねてくる人物が誰なのか見当がついているので、警戒はしない。
「失礼するよ」
年配の男性の声が聞こえるのと同時に、ドアが開いて人が入ってきた。
声の主は、白の髭と髪をして少し腰の曲がった60代後半くらいの老人で、人の良さそうな雰囲気の顔立ちに老眼鏡をかけている。
その後ろからもう一人入ってきた。
その人はシャオン達よりすこし年上くらいで、整った顔に大きめの漆黒の瞳が印象的な女性だった。
肩より長めの黒紫の艶のある髪を顔の横で結んでいる。
「調子は如何ですか?」
その女性がベッドの上のシャオンに話し掛ける。
「あっ、はい。もうだいぶ痺れも取れましたし調子も良いです。すいません…色々ご迷惑をお掛けしました」
シャオンは二人に対して深く礼をする。
「なに、患者がいれば治療するのが医者の仕事じゃて気にしなさんな」
そう言うと老人は顔のシワを更に深くして微笑んだ。
その言葉を聞いてシャオンも笑顔をこぼす。
「本当ありがとうございます。えっと…」
次の言葉につまり、シャオンはアレンを見た。
あっ、と声をこぼしアレンが立ち上がる。
「こちらがこの病院の先生のランスさんで、隣の女性は助手のセレスティアさん」
「なんもない所で申し訳ないが、怪我が治るまでゆっくりしていきなさい。貴女はセレアが担当するから、何かあれば彼女に言うといい」
そう言うと、彼は用事があると言って部屋を出ていった。