2ー(5)
ゆっくりと深紅の瞳が隠される。
普段の意志の強い印象が薄れて、年相応の幼さが残る表情が現われた。
アレンからみるとシャオンはいつも前を向き、弱さを隠すことで自分を奮い立たせている様にみえる。
本当の彼女はまだ誰かに支えて貰いたいと思っているのだろうが、普段は弱音を吐かず人に頼ったりはしない。
限界まで頑張ってしまう彼女を側で見ていると、アレンはもう少し自分を頼って欲しいともどかしさを感じる。
厄介事は勘弁たが、シャオンのためだったら少しはやる気が出る。
そんな事を言えば今以上にトラブルに突っ込むのが目に見えているので言わないが。
寝ているシャオンを暫く見ていたアレンは、ゆっくりと席を立った。
ふと、視界の端に小窓が写った。
その窓から入ってくる日差しは段々と穏やかになってきており、もう暫くしたら夕陽に染まる景色が見られるだろう。
「今日は夕焼けがキレイだろうな…」
あの日みた夕焼けは大切な人達の血を隠してはくれなかった。
二人の瞳に鮮明に残ったそれは、この先も消えない枷となるのだろう。
いつか真相が明らかになったら、その枷は今の様な身体に纏わりついて痛みを生む茨ではなくなるのだろうか。
アレンはゆるゆると首を振り思考を遮った。
(何度考えても結局は想像でしかない…。今はただ手掛かりを見つける為に進まなきゃな。)
そう結論付けて部屋のドアへ歩いて行く。
「…明日は晴れそうだし、畑仕事頑張るかなぁ」
ここの人に頼まれた仕事を思い出しつつ、ゆっくりとドアを開ける。
「おやすみ…」
もう一度シャオンの姿を捕え、静かにそのドアを閉めた。