2ー(4)
なんだかんだでいつもアレンに助けてもらっている。
つらいときには隣に、躓いたときには何も言わず手を取ってくれるアレン。
そんな彼だから今までも、きっとこの先も一緒にいて欲しいと思ってしまう。
それは多分アレンにとって最良な選択とは言えないだろうが、今はまだその優しさを失っては立ち上がれそうにない。
もう少しだけ…。
せめて、真実を伝えてアレンが愛想をつかすまでは側で一緒に歩いていたいと願ってしまう。
(こんな事になったのは自分のせいだというのに、まだ巻き込もうとしてるなんて。)
シャオンは、結局自分の事しか考えていないその想いに呆れて自嘲の笑みを浮かべた。
幸い布団で口許が隠れていた為アレンからはその表情は見えなかったが、シャオンの瞳が微かに揺らいだのに気付いていた。
「あっ薬!気が付いたら飲ませるように言われてたんだっけ」
アレンは突然立ち上がりそう言うと、ベッドの横にあった机の上の薬らしきものを手に取った。
「なかなか目ぇ覚まさないから忘れてたよ」
コップ、コップ…と言いながらキョロキョロと部屋を見回し、コップと水差しの置いてある棚を見つけ側に寄った。
目的の物を手に取り、コップに水を入れて薬とともにシャオンに差し出す。
シャオンはそれを受け取ると小さくありがとう、と呟いて薬をのんだ。
口に特有の苦味が広がる。
解熱と毒の中和に効能がある薬だと判ったが、ほんの僅かに違和感を覚えた。
(まぁ…地域も違うし、配合する人が違えば多少の違いはあるよね)
そう納得し、コップの水を飲みほす。
喉を通る冷たさに、ぼんやりとしていた頭が覚醒するような感覚がした。
そこまで冷たいわけではない水が、今のシャオンにとっては雪解け水のように冷たく感じる。
熱と傷の痛みで火照った身体には心地よい。
シャオンがコップを置くのを見届けてから、アレンは口を開いた。
「寝込んでる間水分しか取ってなかったけど、食欲はある?」
そう問われると、シャオンは自分がお腹を空かせている事に気付く。
2日も寝込んでいたのなら当然のことだが、アレンに聞かれるまで忘れていたのだ。
一度考えると今まで気にしていなかったのが奇跡と言える程お腹が空いてきた。
「ある、けど」
「ならよかった。あとちょっとしたら夕食らしいから、それまで我慢出来る?」
「大丈夫」
なんとかお腹が鳴らないように力を込めてやり過ごす事に決めて、シャオンは気になっている事を尋ねた。
「あとで匿ってくれてる人に会いたいんだけど、起き上がれそうに無いから連れてきて欲しい。お礼…いわないと」
シャオンらしい発言にアレンが苦笑を漏らしながら頷く。
「夕食後に診にきてくれるって言ってたから、その時に言えばいいんじゃない?」
「分かった」
「じゃあそういうことで。俺はこの後夕食の準備手伝ってくるから、起こしにくるまで寝てて」
アレンはそう言い、シャオンの頭を撫でた。
「う…ん」
先程まで寝ていたシャオンだったが、薬に睡眠作用があったらしくすぐに寝入ってしまった。