2ー(3)
痛みで表情を歪めながら、それでも起き上がろうとするシャオンをアレンが慌てて止めにはいる。
「何してんの!!毒抜けてないし傷も深いんだから動くなって!」
「でも、追っ手が…」
「大丈夫だって!だいぶ痛め付けたし、ここの人が匿ってくれてるから安心しなって。シャオンは自分の心配だけしてればいいから」
先日と同じような光景に、アレンは自分の発言が迂闊だったと後悔した。
彼女の性格なら、自分の身体よりも周りの人たちの事を考えてしまうのは目に見えていたのに。
もし追っ手がこの場所を見つければ、匿ってくれている人に迷惑が掛かってしまう。
それがシャオンにとって最も回避したい事態なのだ。
だが、今の状況ではそうも言ってられない。
なおも動こうとするシャオンをベッドに寝かしつけて口早に喋る。
「今出ていったら捕まる可能性が高いし、あちらさんが大人しくなるまで暫く匿ってもらった方が得策なんじゃない?」
「そう…なのかな」
まだ納得しきれていないシャオンだったが、渋々布団に入る。
それを見届けて、アレンは近くにあったイスを引張ってきて腰を下ろした。
「…ごめん、迷惑かけて」
アレンに迷惑をかけ、更には危険に晒してしまったことを後悔しているのか、その声はいつもより沈んでいる。
「…まぁ今更っしょ。これに懲りて少しは自重してくれたらいいんだけども?」
「……考えとく」
「そこは素直に頷いてくれると有り難いんだけど」
「………」
「ぅおい!…まぁそれがシャオンだしなぁ。ただ…この前みたいな無茶だけはやめて欲しい」
「…うん。……ありがと」
漸く眉間によったシワがなくなりいつものシャオンが戻ってきた。
「もう無茶は言わない」
落ち着きを取り戻したシャオンがアレンに笑いかけると、アレンの手が彼女の頭をポンポンと叩いた。
「~っ!」
「あんまし溜め込むと良くないよ?俺じゃあ力になれるか分からないけど、たまには頼って欲しいかな」
アレンが頭に手を乗せたままあやす様な声で喋ると、シャオンの身体が一瞬強張り動きを止めた。
おずおずと布団を目元まで被り小さく頷くと、アレンも頭に乗せた手を引っ込めた。
ほてりそうになった顔とその理由を自分でも分からず咄嗟にとった行動だったが、幸いアレンには気付かれていないようだった。
「それに、何があってもシャオンは俺を裏切らない。だろ?だから俺もシャオンを信じる」
アレンの言葉はシャオンの胸にじんわりと染み込んで、鼻の奥がツンとなった。