2ー(2)
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「嫌っ!母様ぁ……っ!?」
静かな空間にシャオンの声が響いた。
シャオンが突き出した手は必死で何かを求める様に空中を彷徨っていたが、意識がはっきりしたことで動きを止める。
(夢、か…)
暫く自分の手を見つめていたが、思考の渦からなんとか抜け出すと力無く腕をおろした。
「最近あの頃の夢は見ていなかったのになぁ…」
目を閉じると目尻が濡れているのが分かる。
涙を拭こうとして腕を動かすと鈍い痛みが走り、そこでやっと自分の置かれた状況を理解する。
(そっか…連れてかれそうになったのをアレンが助けてくれたんだっけ…)
アレンが戻ってきたという事は、あの2人は無事逃げられたのだろう。
(良かった…。後でアレンにちゃんとお礼言わなきゃな)
ふぅ、と息を吐いて身体をベッドに沈み込ませる。
落ち着いたところで自分の居る場所を確認しようと周りを見渡すと、白を基調としたシンプルな部屋の一角にあるベッドに自分が横になっていることに気付いた。
消毒や薬品の匂いが混ざったような独特な匂いから、此処が病院だという事が分かる。
懐かしくて悲しくなる匂いに胸がツキリと痛んだ。
じっとしていると悲しい記憶ばかり思い出してしまいそうになり、シャオンはやはり起き上がろうと力を入れた。
しかし、痛みでは無い原因によって思う様に身体が動かず、バランスを崩して再びベッドに倒れこむ。
(あ~…まだ毒抜けきってないなぁ)
この調子ではあと2、3日は思う様に動けなさそうだ。
「どうしたもんかなぁ…。それにアレンは何処行ったのよ」
話し相手もおらず何も出来ないので、しばらく大人しく寝ようと思い布団をかぶった。
――ガチャリ
シャオンが半分ほど夢の中へ意識を傾けかけた時、部屋にある木製の扉が開いてアレンが入ってきた。
「シャオン?」
アレンの呼び掛けにシャオンは意識を浮上させた。
「…ア、レン?」
「良かった!2日も目ぇ覚まさなかったから心配したじゃん!!」
「え…2日も寝込んじゃったわけ!?追っ手が…っ!」
アレンの発言に驚き身体を起こそうとして再度痛みが走った。
「いったぁ…」
「おいっ!無理すんなって。」
シャオンが意識を失っていたので、アレンが此処まで運んでくれたのだろう。
ならばあの森からそう遠くないはずだ。
加えて2日もとどまっていたら追っ手にすぐ見つかってしまう危険が高い。