第一章 嫌な予感と出会いの話(1)
キィー…ン
―――カンッ
鬱蒼とした森の中、夕刻を告げる鴉の鳴き声とともにかすかな金属のぶつかる音が聞こえる。
人の手の入っていない森は、その人工的な音を一層強調させていた。
その森の入り口付近で火を焚いている人影がある。
旅の格好をしたその二人組は、火を挟んで座っていた。
二人とも武器の手入れをしていたが、一人がその音に気付いて声を発した。
「アレン…」
声をかけたのは背の低いほうで、声からして少女だろうことが分かる。
まだ幼さの残る顔に、真紅の髪が肩にかかるくらいに切られている。
年のころは16、7だが、髪と同色の眼にはその年には相応しくないほどの意志の強さがうかがえた。
「行くの?関わらない方が良いと思うけどなぁ」
興味のなさそうな声で隣の少年―アレンが返事をした。
歳は少女と同じくらいで、紺色の髪に漆黒の瞳をしている。
横には刀が置かれている。少年が使うのだろう。
もともと答えには期待していなかったのか、少女はアレンを一瞥し立ち上がった。
「じゃあ私一人で行くから」
そう言い、武器らしきものを仕込んでいく。
彼女の武器は小刀やクナイなど、忍道具のようなものだ。
腰に下げた袋には火薬などが入っている。
準備ができたのか、少女がもう一度アレンを見やる。
「可愛い子がいても知らないからね~」
いたずらっぽく笑い、音のした方へ姿を消した。
「そんな都合のいい話なん…え、ちょっ、本気!?シャオン!!まって、一人でとか危ないでしょっ!」
アレンは慌てて火を消し、彼女―シャオンの後を追った。