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パチ……パチッ…
ときおり重みに耐えられなくなった木材が崩れて火の粉が舞う。
月明かり以外に明かりの無いその場には、空へ消えていく小さい光が幻想的に映る。
何か考え事をしているように座っている少年が、その様子をぼんやりと眺めていた。
先程十数人の男達と対峙したにもかかわらず、かすり傷一つさえ負っていない。
怒りに任せて、その身体に似つかわしくない猛々しい動きで刀を振るっていた姿は見る者を圧倒させた。
久しぶりに全力で戦ったので体が重く、だるさが感じられる。
未だに残る鉄臭い匂いが鼻について、眉間にシワが寄るのを抑えられない。
しかし、そんなことは今のアレンにはどうでもよかった。
目の前の炎を見つめながら先程の男の言葉を思い出す。
何度考えても王都に直接連れて行くのはおかしい。
ここは王都からだいぶ北に位置するドレーンと、隣国に接している交易都市オスマリアスとの間にある森で、王都からは馬を使っても最低4日はかかってしまう。
滅多な事がない限りドレーンの拘留所に連れて行かれるのが決まりであるにもかかわらず、あの男はシャオンを王都に連れて行こうとしていた。
それには相当な理由がある筈だ。
(……あーっ、わかんねー!!)
何度考えてみても答えは出ず、自分の髪を掻き上げた。
アレンは先程から同じことを何度も繰り返している。
そうしている内に、自分はシャオンのことについて知らないことが多いと改めて感じていた。
シャオンとアレンが出会ったのは今から10年程前で、二人がまだ6,7歳くらいの時だった。
アレンが住んでいたスロッドという小さな村に突然シャオン一家が移り住んできたのが一番古い記憶だ。
それより前のことは一切知らない。