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先程の場所に戻ってみると、アレンは違和感を感じた。
(ん?なんかやけに静か…)
もう戦いは終わったのか、闘い独特の金属のぶつかり合う音が聞こえてこない。
「……たら…城に連れ…ぞっ!」
「!?」
近付くにつれてはっきりと聞き取られる様になった言葉に、アレンは周りの兵たちと同様自分の耳を疑った。
「し、しかしそれは…」
「黙って従え!責任は私が負う」
クレッシュの発言の真意を知りたいという衝動に駆られたが、シャオンの姿を捉えた瞬間それも頭から吹き飛んでしまった。
アレンの視線の先にはシャオンが深い傷を負って捕らえられている姿があった。
そして、隊長らしき男に何か囁かれて今まで見たことがないほど驚愕した表情を浮かべている。
あまり感情の起伏が激しい方ではないシャオンのあんな表情を見せられ、アレンは一瞬動きを止めた。
「なっ!?やめろ!はなせ!!」
しかし、暴れだしたシャオンが気絶させられたのを見てやっと身体が動きだす。
コントロール出来なくなりそうな感情を無理やり抑えつけ、アレンは腰の獲物に手をかけた。
シャオンに気を取られていた男達の背後に移動し、彼等が気付く前に近くにいた数人を刀で薙払った。
「!?」
一瞬のことで状況が分からず混乱している男達の視線が、刀を紅く光らせた一人の少年を捉えた。
「そこの彼女、返してくれない??」
普段見せる温和な表情ではなく冷たい眼を男たちに向け、アレンは口元だけ笑ってみせた。