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「ここをもう少し行ったらオスマリアスっていう隣国と接してる街の明かりが見えてくる。確か今は収穫祭で賑わってるし、オスマリアスならいろんな場所から人が集まるから紛れ込みやすい。そのまま行商人を装えば逃げられるよ」
少年はそう言って二人を促した。
「あの!…先程のお方は大丈夫なのでしょうか?」
フードをかぶった少女は心配をにじませた声で少年に問いかけた。
意図せずとはいえ、自分たちのせいで危険な目に遭っているのだ。
このまま無事を確認せずに逃げられないのだろう。
「大丈夫大丈夫。ああ見えてあいつ強いし、足も速いから」
「しかし、あれは国軍の…」
「あー、まぁ、国軍とは何度かやり合ったことあるし…勝手に首突っ込んだのはこっちなんだから大丈夫だよ」
安心させるように笑ってみせると、その少女は一瞬驚いた表情をしたが少しは安心したようだった。
ふっと口元を緩めると、さっきまでの堅いものとは違った声色で言葉を紡いだ。
「本当にありがとうございました。あなた方がいなかったらあのまま捕まっていたでしょう。今は何もお返しすることは出来ませんが、このご恩は忘れません。いつか再び会えることがあったなら、ぜひお礼を」
そう言うと少女はフードを取り深々と頭を下げた。
その姿はどこか堂々としていて、一瞬見とれてしまいそうになる程に気品がある。
フードをとった瞬間隣のカインが慌てたが、同じように頭を下げた。
その恭しい態度の二人に逆に慌ててしまった少年だったが、次の瞬間には驚きすぎて固まってしまった。
顔をあげた少女は鮮やかな桃色の長い髪をしており、その瞳はとても澄んだ金色をしていたのだ。
先程カインがうろたえたのも納得がいく。
軽々しく正体をばらしてしまっては狙われる可能性が増すだけだ。
その姿を見れば、少年でなくとも驚くだろう。
「え、えぇ!!まさかユウナ姫様じゃ!?」
「はい。内緒ですよ」
そう言うと、ユウナは年相応の表情で微笑んだ。
オスマリアスは王都セイランの東北にある交易都市な設定です。
世界観は後々詳しく書きたいと思います!