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軍の中でもほんの一部しか知らない機密事項―――
確証はないが万が一自分の考えていることが合っていたらこの上ない手柄だ。
クレッシュの頭の中には既に、出世した自分が鎮座している。
「おいっ!そいつを医者に見せたらすぐ城に連れて行くぞっ!!」
興奮を隠し切れていないクレッシュの声が辺りに響いた。
その発言内容に驚いたのは抑えられていた少女だけではないはずだ。
普通ならば、王都から離れた場所で捕まえた反逆者はその都市の拘留所に入れられ処罰される。
たとえどんな大罪者でもまずはそこに拘留され、処罰が決まってから王都に行くなり他の場所に移ったりするのが規則だ。
それを、こんな娘一人に対し規則を破るなど普通考えられない。
「し、しかしそれは…」
「黙って従え!責任は私が負う」
クレッシュは反論する部下を怒鳴りつけ、周りに聞こえないよう少女の耳元で喋りかけた。
「まさか生きていたとはな。それに、こんな場所でお会いできるとはなぁ…お前は、―――だろう?」
クレッシュの絡み付く様な猫なで声に、少女の堕ちかかっていた意識が一気に浮上し、勢いよく彼を見上げる。
その表情は驚愕に満ち、次第に色を失っていった。
「なに、言って…そんな、こと…あるわけ…」
「まぁ、王の前に突き出せばはっきりすることだ」
「なっ!?や、やめろ!はなせっ!!」
その言葉を聞き再び暴れだそうとした少女に、彼の疑惑が確信へと変わっていった。
クレッシュは満足げに笑い、眼の前の掘り出し物の首に手刀を加え気絶させた。
「連れて行け」