1-(9)
先に仕掛けたのはクレッシュの方だった。
距離を縮めてまずは水平に剣を振り、相手が避けたところにすかさずもう一太刀をいれた。
改めて対峙すると、一筋縄ではいかないということがよく分かった。
体格が良いのにスピードが落ちず、一太刀一太刀が重そうだ。
少女は一度距離をとり、クナイを相手目掛けて数本放つ。
それと同時に左側に移動しながら相手に向かって駆け出した。
首を狙って下から突き上げるように腕を振り上げたが、男はクナイを剣で弾き落としながら蹴りを繰り出した。
それを難なくかわすと、少女は男の懐に素早く入り突きを放つが、それは読まれていて腕で防がれてしまった。
ほかの男たちとは違い、一手先まで考えているようだった。
(伊達にリーダーはやってないってわけね)
少女は辛うじて次の攻撃を避けると小刀に持ち直し、直接クレッシュを斬りつけようとした。
――ヒュッ
「!?」
いやな予感がして少女がとっさにクレッシュと距離をあけると、矢のような物が数本飛んできて、その内の一本が彼女の足を掠めた。
そのままクレッシュとやり合っていたら間違いなく刺さっていただろう。
掠っただけだったが傷口が少し痺れてきた。
矢先に毒が塗ってあったのだ。
予想以上に手ごわい相手に、少女はは内心舌打ちをした。
「卑怯ね」
「なんとでも言え。要は勝てばよいのだ。例えそれがどんな手段であってでもな」
クレッシュは余裕の笑みを浮かべてさらに加えた。
「掠っただけとはいえ強力な毒だ。もう痺れてきただろう?大人しく捕まれば楽だぞ」
これで余裕ができたのか、クレッシュが剣を下ろした。