花を折る
私は顔にまかれた包帯にふれる。
なんて忌々しい。
あんなことがなければ、私はこの学校で一番の美人だったのに。
家が燃える火事があった。
原因はだれかが家の庭に投げ入れたたばこの火。
住人は避難して、命にかかわるけがはしていない。
けれど、私はやけどを負ってしまった。
医者には跡が残るだろうと言われた。
顔に火傷の跡が残るなんて。
ショックだった。
だから、その日から私は美しいものを憎むようになった。
以前の私は学校で一番の美人として、もてはやされていたのに。
今では腫物を触るような扱い。
美しいものなんてこの世から消えてしまえばいいのに。
「花壇の花が折れていたみたい」
「ひどいわ、いったい誰がそんなことを」
でもだからといって、実際にこの世から消し去るなんてできない。
私は神様じゃないんだから。
「お世話していた園芸委員が嘆いていたわ」
「はやく犯人が見つかるといいわね」
だから、ちまちまこの手で消していくしかないのが面倒くさいわ。
「また植えた花も、折られたりしないといいけど」
「そうね、心配だわ」