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一流執事、ついにキレる

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現在、王家からの呼び出しに応じ、王宮へ向かう馬車の中にいる。


向かう馬車に乗る顔ぶれは、招集がかかった当人であるリルティア様、レジーナ様の実父でありリルティア様の義父であるモーリス=ベネディクス公爵、それに筆頭執事である俺、何故かレジーナ様も同行している。


向かう途中、4人の間でこんな会話があった。


「あの、お義父様。今日の招集はどの様な内容なのでしょうか?」


不意の招集に不安を隠せないリルティア様が旦那様へ尋ねる。


「ふむ。(ワシ)も詳しい事は分からぬが悪い話ではないと伺っておる。心配せずとも良い」


「そうですか・・・。だと良いのですが」


そう呟くリルティア様の表情は明らかに暗い。

ここ最近の執拗なイジメにより、完全にネガティブになってしまっているご様子。


「多分アンタにとってはいい話よ。今日がアンタにとって運命の日になる予感がするわぁ。良かったわね、一生国に尽くせるチャンスよこれ」


レジーナ様が意地悪そうにケラケラ笑う。


この女、絶対何か知ってやがる。

それどころかこの招集、レジーナ様が裏で糸を引いている気がしてならない。

だが何一つ証拠が無いため、追求しても暖簾に腕押しになる。


程なくして一行が王宮に到着する。

馬車を降りると、お迎えの兵士達が現れて中へ案内された。

長い廊下を渡り、最奥にある謁見の間へ通される。


謁見の間中央で横並びに跪き待っていると、奥の扉よりラング国王陛下、エメルダ王妃様、ギルベルト皇太子殿下、それとその弟君のジーク=クロスタード王子が現れた。


普段は引きこもりの王子と呼ばれるジーク様が、人前に顔を出すのは相当レアなため一同驚く。


そのジーク様だが、引きこもっているせいか体中のあちこちに贅肉が付き、不精髭に頭髪もボサボサと見るに堪えない状態だ。


またその噂も良くないモノが多く、メイドを何人も監禁した挙句に消息不明にしたとか、没落貴族の娘達を無惨に蹂躙したとか。

とにかく女性に対しての最悪な噂が絶えない。

その見た目と噂から、言い方は悪いがキモ豚変態王子と呼ばれている。

この変態が登場したことに嫌な予感しかしない。


まず玉座に着いた国王様が開口する。


「よく来てくれたなリルティアよ。今日呼んだのはお主にとっても良い縁談話をするためだ」


国王様は続ける。


「この度、我が次男ジークとお主の婚姻を認めようと思う。お主の気持ちはギルベルトから聞いた。ジークにも確認したところ喜んでおる。これでお主も再び王族に返り咲く事となる。良かったな、リルティアよ」


「え・・・」


国王の言う事が理解出来ないリルティア様は唖然の表情。

身に覚えの無い話に完全にフリーズしている。


するとキモ豚変態王子ことジーク様が立ち上がり


「リルティア~、ぼぼぼ僕の事が好きだったんだね?もっと早く言ってくれればたくさん遊んであげたのに。でもこれからは色んな事が出来るよ?僕の妻として一生遊んであげるからね。明日から早速僕の部屋へおいで、ね?」


ド変態丸出し、欲望塗れの顔でリルティア様に語りかける。


それに追い討ちをかけるように、皇太子ギルベルト様が全く悪気の無い表情でリルティア様を激励する。


「リルティア、君の気持ちはレジーナから聞いたよ。ずっとジークの事が好きだったんだね。その願いを叶えてあげたいと、俺から父上に進言したんだ。二人で絶対幸せになるんだぞ!」


悪い予感が当たってしまった。

リルティア様がジーク様に好意を寄せているだと?

レジーナが王子にありもしない事実を吹き込みやがった。

このクソ女、やはりとんでもない事をしてきやがった。


レジーナ様はずっと笑いを堪えて俯いている。

一方のリルティア様は動揺しながらも初めて口を開く。


「お、お待ちください。私の気持ちって、何かの間違いでは・・・」


「ん?間違えとは?お主、我が王家に名を連ねる事が嬉しくないのか?」


「い、いえ、そういう訳では。でも婚姻というのはちょっと・・・」


これはまずい。

この事態、周りが守ってやらねばと旦那様の顔を伺う。

それに気付いた旦那様は俺に頷き


「リルティア、良かったではないか!お前の大事な国民との距離は更に縮まるぞ!これで我が公爵家からも王家が二人!いやぁ。これはめでたい!」


一人ハイテンションで拍手をし始めた。

ダメだこの人、家から王族が二名排出される事に舞い上がってやがる。


これは俺が自ら助けるしか無いと、レジーナ様をキツく睨む。


「な、なによ」


動揺するレジーナ様を無視し、国王様に向けて進言を始める。


「国王様、失礼ながら申し上げます。リルティア様がジーク様をお慕いしているというのは何かの間違いかと。そこにいるレジーナ様の勘違いです」


それに対して声を荒らげたのはギルベルト皇太子。


「なっ!?執事ごときが俺の愛しのレジーナを侮辱するのか!許さんぞ!!」


うるせぇなコイツ。

完全にレジーナ様の傀儡じゃねーかよ。


「いいえ、真実です。リルティア様ご本人から聞いてみてください」


この場の全員の視線がリルティア様に集まる。


「え、えっと、その好きとかでは、違うというか」


この人もこの人でハッキリ言えよ!

自分の人生がかかってるんだぞ!


「リルティア?僕のことが好きじゃなかったの?へぇ、じゃあいいや。この気持ちは君の大好きな平民の娘で晴らそう。何人にしようかな?君が僕のところに来ればそんな事しなくても済むのになぁ」


「ジーク、王家としてその様な発言を公の場で言うのは控えなさい」


ジーク王子の発言に釘を刺す王妃様。


「はーい、ぐひひひ」


更に国王様が追い討つ様に告げる。


「リルティアよ、お主が王族に来れば平民の対処はお主に任せるつもりだ。待遇改善などお主が主体で進めるが良い。これはお主が望んでいたことであろう」


それに相槌を打つ様にレジーナ様が初めて発言する。


「良かったじゃない、リルティア。大好きな平民を守れるのよ。それとも貴方、平民より自分の方が大事だって言うの?」


平民を盾にリルティア様に婚姻を迫る者達。

この状況を破れるのはリルティア様ご本人の意思しかない。

ちゃんと断るんだ!!


「・・・。分かりました。ジーク様とのご婚姻、承ります」


なっ!?


「やったぁ!!これでリルティアを僕の好きに出来るぞぉぉお!ひゃっほおおい!」


飛び上がるキモ豚変態王子。

レジーナ様はその場で大爆笑している。



これらの一連のやり取りに、遂に俺の堪忍袋の緒が切れてしまった。

あーあ、俺の執事人生もここまでか。親父ごめん。



「・・・ふざけんなよ。何だこのクソみたいな縁談は。アンタら人の事をなんだと思ってるんだ?」


「な、何?貴様、今何と言った?」


「ナユタ、お前なんて事を!今すぐ謝れ!」


国王、公爵共に驚きを隠せない模様。


でもそんな事知るか。

どうせ俺の役目はコレで終わりだ。

それにこんなクソみたいな公爵家に仕えるくらいなら、ここで死んだ方がマシだ。


「なぁ、リルティア。あんた自分の犠牲で平民を救おうとか考えてんだろ。そんなに上手くいく訳ねーだろ。せいぜいそこのキモ豚に玩具にされて廃人になって終わりだ。何もかも甘いんだよ」


言われたリルティア様は再び唖然の表情。更に続けて


「おい、レジーナ。お前ホントにゴミだな。お前の人生嘘ばかりじゃねーか。前のパーティの時も仕立て針を用意したのお前じゃねーか。ほら、文句があればいつもの悪態をここでやってみろよ」


「な!アンタ何を!う、嘘よそんなの!」


「嘘じゃねーよ、この虚言ハリボテ野郎が」


レジーナ様は何も言い返せず固まる。

それを庇うようにギルベルト皇太子が声を張り上げる。


「き、貴様、何を適当な事を!レジーナを侮辱するな!」


「うるせぇよマリオネットお花畑。お前も少しは自分で考えろ。お前レジーナの言いなりじゃねーか。お前、この国の次期国王じゃねーか」


図星にギルベルトが声を詰まらせる。


「さぁ、リルティア様。自分の気持ちを素直に伝えましょう。でなければ貴方の人生は他人に流されて終わりますよ」


「で、でも。私が犠牲になれば、国民皆が幸せになるチャンスが・・・」


「自分を幸せに出来ない者が他人を幸せに出来る訳ないでしょう。幸せから逃げないでください。それは本質的な解決を否定した、ただの怠惰です」


「・・・」


「自分も含めて皆にとって良い国を、自分の手で創る事から逃げないでください。今の貴方は、他人の考えに身を委ねた思考停止です。さぁ、素直になりましょう!」


俺の呼びかけに対し、俯いたまま無言のリルティア様。

彼女の言葉を待っていると、先に口を開いたのは国王と王妃だった。


「ふむ。中々面白いモノを見せてもらった」


「そうね、でもそろそろ次の謁見の時間だわ」


「おい執事。最後に何か言いたい事はあるか?お前の人生最後の言葉だ。しっかり言葉を選べよ?」


ニヤけた国王が周りの兵士に指で合図すると、周りに控えていた兵士達にアッという間に囲まれてしまう。


俺の人生もここまでか。

でも最後に言いたい事は言えたし悔いは無い。

あとは、リルティア様が自らの意思でこの縁談を帳消しにさえしてくれれば。


「リルティア様。さぁ、ご自分のご意思を」


最後にリルティア様に問いかけるが、彼女はまだ俯いたまま。


ダメか・・・

諦めてその場に座り込んだ俺に、数人の兵士が近寄ってきたその時だった。


「うるさいなぁ・・・。どいつもこいつも勝手な事言わないでよ」


ずっと俯いていたリルティア様から出たその言葉に、場の全員が凍りついたのだった。

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