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一流執事、抗議する

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シノアさんがベネディクス家を去った二日後の午後。

応接間でレジーナ様相手に二人の人物が対峙している。

一人はレジーナ様の義理の妹であるリルティア様。

もう一人は筆頭執事である俺だ。


「話って何?私忙しいんだけど」


ソファに座るレジーナ様が爪の手入れをしながら悪態を吐いている。

だが、今回ばかりは俺も譲れないため、レジーナ様の威圧に臆せずに向き合っている。


「お嬢様、シノアさんについてです。何故あんなに当家に尽くしてこられた方を他国へ売り飛ばす様な真似をしたのですか!」


少しキレ気味にレジーナ様を追求する。


「決まってるじゃない。ゴールゼン家への建前よ。あの場で謝って終わりって訳にもいかないでしょ」


「部下を守るのが当主としての義務ではないですか!これではあの場で皆様から賞賛された行いが台無しです。逆に嘲笑のネタですよ!」


「大丈夫よ。表向きではシノアが責任を感じて勝手に辞めた事にしてるわ。私はそれを止めたけど無理だったと、もうあちこちで噂になってるわ。噂話は広まるのが早いわよね」


この方には罪悪感というモノが無いのか。

淡々とと自分の爪を磨きながら語っている。


「単刀直入に言います。シノアさんを連れ戻してください」


「はぁ?無理よ。もう買い手の元へ向かっているわ。これから悲惨な目にあうんじゃない?まぁ、自業自得よね」


「悲惨な目!?」


「ええ、買い手はド変態で有名な隣国の貴族ジュベルグ家の当主よ。何人ものメイドを廃人にしてるって噂よ」


「何故そんなところに!お嬢様、一体何故そんな酷い事を!?」


それに対しお嬢様が今日初めて感情をむき出しにして


「酷いですって?酷いのはあの女よ!危うく私の立場が危なくなるところだったじゃない。あんな恩知らずは痛い目にあった方がいいわ!平民ごときが私の邪魔した罰よ!」


ここで初めてレジーナ様の義妹であるリルティア様が口を開く。


「お義姉(ねえ)様、仮に失態による被害があったとしても、それを公正に処罰するのが私達貴族の役目ではないでしょうか。それと、あまり平民を侮辱する発言はやめてください」


目の敵であるリルティア様の物言いに、キレたレジーナ様は目の前のテーブルを思いっきり蹴り上げた。


「アンタ何様のつもり!!旧王族の末裔だからって調子にのるんじゃないわよ!次に生意気な事を言ったらアンタも売り飛ばすわよ!」


「ですが!今回お義姉様がやった事は私も許せません!例え私が酷い扱いを受けようが、ずっと私達の身の回りのお世話をしてくれたシノアさんが不憫な目にあうのは見逃せません!」


おぉ、普段温厚なリルティア様が声を張り上げるのは初めて見る。

対するレジーナ様も一瞬驚いた表情を見せたが


「へぇ。あの女が助かるなら、アンタ自分がどんな目にあってもいいって言うの?」


「構いません」


「あ、そう。言ったわね。じゃああの女を変態貴族の手に売るのはやめてあげる。その代わり、明日からアンタの居場所を徹底的に潰してやるから覚悟しなさい!」


そう言い放ってバタンと勢いよく扉を閉めて出ていくレジーナ様。


「リルティア様、よろしかったのですか!?あの様な約束をして」


「ええ。シノアさんが助かるのであれば安いものです。それに元から私の居場所なんて殆どありませんから」


作り笑いをしながら力無く笑うリルティア様。

自分の立場を危うくしてでも、メイドを健気に守る姿に感銘と尊敬の念を抱かずにいられない。


「明日から私もリルティア様をお守りします。こう見えて私はこの家の筆頭執事ですから!」


ありがとうと笑うリルティア様。


レジーナ様の事だ。

間違いなく明日からリルティア様への執拗なイジメが始まるはずだ。

俺も最大限に目を光らせ、このお方をお守りしようと誓う。


そして案の定、翌日から予告通りリルティア様へのイジメが激しくなる。

普段リルティア様が通っている貴族育成の学園から帰宅すると、必ずと言っていい程制服が泥だらけ。

時には顔を怪我するなど、イジメは俺の手の届かない学園内で行われていた。


一度学園側にイジメ調査と対策を願い出たが真剣に聞く様子もなく、調査しときますと一言があるだけで何も解決に結び付かなかった。


その酷い仕打ちにレジーナ様へ異議を申し立てる。


「私は何もしてないわ。勝手に周りの者がやっているだけよ。それにあの子が自分で言ったんじゃない、どうなってもいいってね。自業自得なんじゃないかしら?」


いくら訴えても認めることはなく、リルティア様に対するイジメは日々深刻化していった。


「リルティア様!お顔色が優れません。今日は学園をお休みしましょう」


ある朝、明らかに顔色の悪いリルティア様を呼び止め、学園を休むよう促す。


「いいえ、大丈夫です。この通り元気ですよ」


無理して作り笑いを浮かべているのが一目瞭然な上、最近少し痩せてきた気もする。

このままエスカレートした状態を放置すると危ないと感じ、その日は無理を言って一日学園を休ませた。


心休まるフルーツティーでもご用意して差し上げようとリルティア様の部屋へ向かう。


「リルティア様、失礼します」


リルティア様の部屋をノックし中へ入ろうとした時、何やらドアの向こうから話し声が聞こえてきた。


「アイツら絶対許さない。いつか盛大に泣かせてやるから覚えとけよ!」


リルティア様の声だ。

声の主はリルティア様だが別人の様な言い回しに思わずノックの手が止まる。


「だいたいなんで私がこんな目に合わなきゃならないのよ。ホントムカつく!」


こ、これは・・・。

きっと過度なストレスで心が壊れてしまったのか、それとも新たなるリルティア様が目覚めてしまったのか。

どっちにしろただ事では無いご様子に、慌てて部屋の扉を開ける。


「リルティア様!大丈夫ですか!?」


「・・・」


突然飛び込んできた俺に驚きリルティア様の動きが止まる。

途端、リルティア様は何かが抜けた様にベッドに倒れ込んでしまった。


「リ、リルティア様!?え、あれ眠ってる?」


それから暫くリルティア様が起きることは無かったが、小1時間程経過したところで目を覚まされた。


「あれ、私また・・・」


「リルティア様、お目覚めになられましたか」


「ナ、ナユタさん!どうしてここに!?」


目覚めてすぐ真横に俺が居ることに驚いているご様子。


「先程フルーツティーをお持ちしましたのですが、突然お眠りになられて心配でご様子を伺っておりました」


「え、そうなのですか!?私、変な事言ってませんでしたか?」


「ええ、いつもと違うリルティア様でしたが、それも過度なストレスのせいかと。気にせずお休みください」


「やっぱりですか。私、最近変なんです。気付くと突然眠っていて、寝ている間の記憶も鮮明に覚えているんです。私じゃない私がこの身体を支配している様な、そんな感覚がするんです」


「最近学園でも相当大変だったからでしょう。出来れば明日も学園を休みましょう」


「はい、お気遣いありがとうございます。でも何か違うんです。自分自身を乗っ取られている感覚と言うか・・・」


乗っ取られている?

不思議な事を言うリルティア様だが、今はまず休息を促す。


リルティア様も最初こそ興奮気味だったが、紅茶を飲んだ後はぐっすりとお休みになられた。


それからリルティア様にとって苦痛の日々が2週間ほど経過した頃、リルティア様へ王家から突然の招集がかかった。

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