一流執事、騙されない
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翌朝、一階にある食堂に集まった3人は同じ卓でそれぞれ朝食をとっていた。
「昨日そのようなことがありまして。あとでロズとそのラプラス様の元へ行くつもりでした。リルティア様も一緒に行かれますか?」
「私もそのラプラス様に会ってみたいです。
行きます!」
「では午前中はリルティア様のお召し物を探し、午後からラプラス様の元へ向かいましょう」
朝食を済ませたのち、俺達は繁華街を訪れた。
「あの洋服店を見てみたいです!」
久しぶりの日常に戻り、買い物を楽しんでいるリルティア様にお付き合いし、幾つかの店を見て回る。
「ナユタさん、この服はどうですか?」
「リルティア様にとてもお似合いですよ」
「ではこの服は?」
「そちらもとてもお似合いですよ」
「あの・・・この服は?」
「とてもお似合いでございます」
「・・・。ナユタさん!」
「は、はい?」
リルティア様が眉間に皺を寄せて顔を寄せてきた。
「そろそろ執事モードはやめてください!今は私もベネディクス家を追い出された身です。立場は貴方と変わりません。もういっそのこと私のことはリルとお呼びください!」
「えぇ!?そ、それは出来かねます!分かりました、では率直に感想を申し上げますので、呼び方はリルティア様のままでお許しを」
「仕方ないですね。ではお願いします」
「はい、まず一着目ですが少々暗いイメージになりますので却下です。元王女として相応しくありません。次に2着目ですが、露出が強すぎます!そんな服を着てると変な輩に目を付けられますので却下です。あと、3着目ですが、子供っぽ過ぎます。もう少しエレガントな服の方がリルティア様にはお似合いです。ですので却下です」
「えぇ、全却下ですか・・・。ナユタさん、結構女の子の服装にこだわりがあるんですね」
しまった。ついロズベルグに話すくらいのテンションで話してしまった。
この変な空気を打開するために、後ろのロズに助けを求めようと振り向くが、ロズベルグの姿はどこにも見当たらない。
窓の外を見ると、飽きたのか向かいの串焼き屋で買い食いをしてやがる。
「分かりました。ではナユタさんが2着選んでください。もう2着は自分で選びます」
「お、俺がですか?いいですけど、やはりご自分の気に入ったモノを買われた方が」
「ナユタさんに選んで欲しいんです。全却下した責任をとってくださいね、うふふ」
悪戯めいた笑顔でリルティア様は洋服を選び始める。
仕方ないので俺もリルティア様に似合いそうな服を選ぶ。
「ふむ、これならリルティア様に似合いそうだし動きやすそうだな。お、でも待てよ、こっちの太ももまでスリットの入ったも服の方が。いや、どうせならもっと胸元も見えた方が・・・」
後方から冷たい視線を感じたので、露出の高い服をそっと戻す。
「リルティア様決まりました。この2着でどうでしょうか?」
一着は白を基調とした飾り付きのワンピース、もう一着は上下セパレートの赤を基調とした服を選んでみた。
「ふむふむ、ナユタさんはこういうのがお好みなんですね?でも、かわいいです。これにします!」
自分の好みを露呈したみたいで恥ずかしいが、とりあえず喜んでくれたので良しとする。
洋服を買い、俺の選んだ白のワンピースに着替えたリルティアが試着室から出てきた姿に、不覚にも見惚れてしまった。
きめ細やかな白く透き通る様な肌に、キラキラと輝く銀髪と真っ白なワンピースがマッチしていてまるで天使みたいだ。
だが執事としてご主人を邪な目で見てはならないと緩んだ気を引き締める。
「では、昼食をとってからラプラス様の元へ向かいましょう」
ほっつき歩いているロズを回収し、少し早めの昼食をとる。
「しかし、ラプラス様って一体何なんだろうな?神様か何かか?」
「私は存じません。初めてお聞きするお名前です」
確かに謎な存在だ。
直接人の精神に話しかけてくるところなど、明らかに人では無い何かだ。
ラプラスという名前も、どこかで聞いた事がある気もするが具体的には何も思い出せない。
それにあの防具屋の男と老婆にしても、普通の人間とは違う雰囲気を持っている。
後で会った時にいろいろ聞いてみよう。
「すいません、食べ終わりました。では行きましょう」
リルティア様が食べ終わるのを待ち、会計を済ませて店を出る。
それから昨日案内されたルートを辿り、ラプラス様とやらがいる古い建物に到着した。
「ここです、では入ましょう。リルティア様は俺から離れないでくださいね」
中に入り、暗い通路を進みラプラスの間の前に着く。
「あの〜、昨日盾を依頼した者ですが・・・」
恐る恐る声をあげ部屋の中へ呼びかけると、部屋の中から昨日の老婆が
「入るがよい。ラプラス様がお待ちだ」
俺達に部屋へ入るよう呼びかけた。
部屋へ足を踏み入れるとそこには大きな盾が壁に立てかけられている。
「うおおおあお!!なんだこの盾は!?こんな凄いの見たことがないぞ!」
「おお、これはすごい」「わぁ、立派な盾!」
一同驚く程に確かにすごい。
材質はミスリル製なのか、美しく表面が磨かれた楕円形の盾は、エッジと呼ばれる端部分が鋭く磨かれた形。
白銀色の表面に青字で何かの紋章の様な模様が描かれている、
大きさは、以前ロズベルグが使っていたモノより一回り大きく、構えると体をスッポリ隠れてしまうほどの大きさだ。
「こ、これ触ってみてもいいか?」
「好きにするがよい。ラプラス様がお主に与えた盾じゃ。それはもうお主のモノじゃ」
「これが・・・俺のモノ」
ロズベルグが大楯を軽々と持ち上げる。
「でもそんなに大きかったら前が見えないんじゃないの?」
ふと疑問を述べたが、被せるようにロズが感嘆の声をあげる。
「おおお、すごいぞこの盾!どういう仕組みなんだ?2人共ちょっと見てみろよ!」
大盾の裏側へ回り驚く。
なんと裏側から見ると盾全体が透き通っており、前方が見える仕様になっている。
「どういう事だ?!透き通る金属なんて聞いた事ないぞ」
「騒ぐな。まもなくラプラス様がご降臨される」
鏡の前に座る老婆は騒がしい俺達を制し、呪文を唱え始めた。
昨日同様に大鏡に黒い人影が映る。
「リルティア様、あの人影がラプラス様です」
リルティア様は目をキラキラさせながら鏡を見ている。こういうオカルト的なのが好きなんだろうか。
「よく来た、人の子らよ。お主らの望みの盾は用意した。受け取るがよい」
ロズが一歩前に出てお礼を言う。
「こんなすげぇ盾を本当にありがとう、ラプラス様。これは一体どこの何ていう盾なんだ?」
「それはアイギスの盾。神具じゃ。全ての物理を跳ね返し、時として強力な武器にもなろう。お主の運命と繋いでおいた。例え遺失したとしても、必ずお主の元へ戻るだろう」
「神具って伝説上の武具じゃねえか。これ以上の盾は国中探しても見当たる気がしねぇ。ありがたく使わせてもらうぜ」
ロズベルグは軽々と背中に背負う。
「これもお主達の運命あってこその賜物じゃ。自分の運命に感謝せよ」
「俺達の運命?」
「うむ。盾の男、お主は前世からの生まれ変わりじゃな。別世界で国防の騎士として活躍した男じゃ」
え、なんかかっこいい。ちょっと羨ましいぞ。
「そしてそこの女。お主は百年続いた戦争中に国に担がれ、若くして殉職した少女じゃな」
リルティア様可哀想じゃねーか!
大体なんで少女を担いで戦争してんだよ。
オッサン達だけでやれよ。
「お主達2人は、どの時代においても国に命を捧げる運命にある。そういう者のために神具があるのじゃ」
「俺が国を守る騎士?」
「はぁ、百年続いた戦争ですか・・・」
突然自分の前世を告げられた2人は半信半疑だ。
「あの、ラプラス様。貴方は一体何者なのですか?なぜ俺達の前世まで分かるのです?」
「妾が、あ、ゴホン。儂が時の悪魔だからじゃ」
妾?わらわって言ったぞ今。
なんか怪しいぞ、コイツ。
「あれ?ラプラス様、顔にごはん粒付いてますよ?」
「え!?嘘、どこ?」
お、ひっかかった。コイツ絶対人間だな。
「おや、ラプラス様?」
「あ・・・、ゴホン。儂はこれから出かける予定があるのでこれでさらばじゃ!」
そう言い残してラプラス様が鏡から消える。
てか時の悪魔なのに普通に出かけるのかよ。
「はぁ・・・、またやりおってあの娘は」
ラプラス様の失態に老婆が頭を抱えている。
「何なのですか、この茶番は?」
頭を抱えて落ち込む老婆が少し可哀想になりつつも真相を聞き出してみる。
「ワシらは時の悪魔ラプラス様を崇拝する魔族ニルギリアン族の生き残りじゃ。今やその血自体はかなり薄まってはおるが、紛れもなく悪魔の血と信仰は受け継いでおる」
ニルギリアン。聞いたことがある。
というか学校で習う程度の知識だが、遥か昔にこの地で天使と悪魔が争っていた時に悪魔側についた一族だったはず。
それが何故俺達との接触を図ったのか。
理由を考えていると、ロズベルグが同じ疑問を老婆にぶつける。
「ちょっと待ってくれ。その魔族が何故俺に盾をくれたんだ?しかも神具だぞ。一体どうやって手に入れたんだ?」
老婆はそれに対してゆっくりと話し始める。
「半年程前にラプラス様からのお告げがあったのじゃ。お主らが現れたら盾の神具を渡せとな。さっきの偽ラプラス様では無く、本物の時の悪魔様からじゃ」
「時の悪魔は実在するのか?」
「ラプラス様は実在する。但しここでは無く聖都アレスのとある場所におる。さっきの偽ラプラス様と一緒にな」
「では何故時の悪魔は俺達を助けるんだ?」
「ラプラス様はお主らがこの国を、いや世界を救う存在であると告げた。お主らがこの街を訪れるまでに宝具を手に入れろとのご指示を賜っていたのじゃ」
それを聞いたロズは
「じゃあ、この盾はお前らニルギリアンで入手したってことか?」
「そういうことになるな。その宝具は聖都アレスに存在する地下迷宮の奥底に、長い年月隠してあったものじゃ。地下迷宮の管理者であるワシらニルギリアンだからこそ用意出来たとも言える」
地下迷宮なんてものがあるのか。
出来れば関わりたくないワードだ。
それより
「俺達が世界を救う存在だと?」
「本物のラプラス様はそう言っておるな。ワシにはそうは見えんが。ワシらはラプラス様のお告げを遂行するのが務めじゃ」
「ふむ。けど悪魔が世界を救う手助けをするなんておかしな話だな」
「今の世は敵対する天使が生み出した産物。それを覆す手助けをするのは決しておかしな話ではなかろう」
確かにそうだな。
だとしたらこの格差社会も天使が生み出した結果なのか。
天使=善というのも考えものだ。
「ところでさっきの偽ラプラス様は一体誰なんだよ」
「そ、それは・・・ワシらニルギリアンの姫のミラージュ。ワシの姪っ子じゃよ」
これがニルギリアンの姫、ミラージュ=フレイアとの初めての出会いとなった。
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