一流執事、ラプラスと出会う
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ロズベルグが仲間に加わり、俺達は次のターゲットである「熾天使の光輪」を狙うべく、聖ヨスガ領を目指し移動していた。
「聖ヨスガ領の本丸に入る前にロズの武器と防具を揃えないとな。流石に手ぶらじゃいくら鉄壁といえども戦え無いだろ」
「そうだな。鎧と盾、それから短剣があると助かる。俺も家から全財産を持ってきたから金ならあるぜ」
「あ、私も新しい服が欲しいです。あと魔力増幅の杖があると役立ちそうです」
「俺も新しい執事服ですね。かなりボロボロになってきましたし・・・」
村を出る前に着替えたロズはともかく、度重なるトラブルでリルティア様と俺の服はかなり綻びが目立ってきた。
特にリルティア様は元王女様だ。
美しく高貴な女性のステータスとして、このままボロを着させている事は専属執事として許されん。
どこかで身支度品を揃えるべきだな。
「ロズ、聖ヨスガ領へ向かう途中で買い物が出来そうな街に立ち寄れないか?」
「そうだな。このルートだと途中でアッシュギルという街にぶつかる。聖ヨスガ領に入ってすぐの街だ。領主のいる聖都アレスへはまだ距離があるが、準備に適した大きな街だ」
「よし、まずはそこへ向かおう」
途中野宿も入れつつ、約1日半かけてシルバーベレス領を抜け、聖ヨスガ領アッシュギルの街に到着した。
「わぁ、大きな街ですね!これならお買い物も捗りそうです」
アッシュギルは比較的大きな商業都市で人口もそれなりに多い。
繁華街には多くの飲食店や道具屋、服屋などの店舗が並んでいる。
繁華街に到着してすぐに良さそうな宿を探す。
リルティア様のことを考え、今日は無理をせずにこの街で一泊することにしたのだ。
比較的造りの立派な宿を見つけて受付を済ます。
部屋は俺とロズベルグは相部屋、リルティア様が一部屋と、計二部屋借りることにした。
部屋に荷物を置き、リルティア様の部屋のドアをノックする。
「リルティア様、我々は早速買い出しに向かいますがどうされますか?お疲れであれば、御用を申し付けくだされば買ってまいりますよ」
「はい、ではお言葉に甘えて私はここで休ませて頂きます。では買ってきて頂きたいものを書き留めますね」
リルティア様から買い出しメモを預かる。
洗顔料や歯磨きなど、アメニティ関連のものが多くを連ねる。
それから俺とロズは繁華街に向かい、各々が必要なモノを買い漁った。
「おお、この執事服、なかなか渋くて良い感じだな!」
立ち寄ったフォーマル系の紳士服店で、自分好みの執事服を見つける。
試着してみたところ、サイズ的にもかなり体にフィットしたため購入する。
なんで過酷な旅をしているのに執事服かって?
そういう旅だからこそ、紳士たる自分を保っていたいんだよ。
言わばこれは自分に対しての戒めでもある。
紳士服を購入し、ロズベルグと合流する。
「おお、随分また動きにくそうな服を買ったな」
「フッ甘いな、俺はコレが一番動きやすいんだよ。お前こそ装備は整ったのかよ」
「この通り鎧と短剣は買えたんだが、大盾が良いのが無くてな。俺の必殺技に耐えられそうな頑丈なモノが見つからん」
両手に鎧と短剣の入った箱を抱えるロズベルグがボヤく。
確かにぶん回したり投げたりとコイツの盾の取り扱いは乱暴だもんな。
アレに耐えられるとなると、相当限られそうだ。
「まだ時間もあるし、俺も探すのを手伝ってやるよ」
それからロズと共に目に留まった武器屋という武器屋を探して回ったが、目当ての大楯は一向に見つからない。
「まいったぜ。大楯が無けりゃ俺の力の半分も出せねえ。明日も探し回るしかないか。お、あそこに防具屋があるぞ」
ロズベルグの視線の先には、かなり小さな古ぼけた造りの防具屋が、両隣に挟まれて所狭しと建っている。
看板や扉などはボロボロで、営業しているのかどうかも怪しい。
「とりあえず聞くだけ聞いてみるか。あそこに無けりゃ今日は諦めよう」
ギィと建て付けの悪い扉を開け中へ入る。
中へ入ると、いらっしゃいの一言も無く仏頂面で本を読む男がカウンターの奥に座っている。
「読書中すまんが、俺の身体に合う大楯を探している。この店に置いてはいないか?」
店の中を見渡すと、年季の入った使い古しの甲冑が1組と、二束三文にしかならないような兜が2つ程あるだけ。
「おいロズ、ここには無いと思うぞ。今日は諦めよう」
するとカウンター越しに男が低い声で答える。
「あるぞ、とっておきの大楯がな。但し、お前に売るかどうかは別だ。欲しけりゃそれなりの資格が必要だ」
「ほう、悪いが見せてくれないか。良いモノであれば俺の全財産を使っても構わない」
ドンとロズベルグがカウンターに金銀貨の入った袋を置く。
「ふむ、金はあるようだな。盾を何に使うつもりだ?」
「国の大義のために使う。全財産を吐き出してでも大義を為す上では必要ナラ経費だ」
「大義だと?まあいい、俺について来い」
男はのそのそと立ち上がり、カウンターを出て店じまいの札を扉に掛ける。
そのまま店の外へ出ると繁華街を二丁程歩き続ける。
行き交う人の数も減り、街並みも様相を変えた。賑やかだった繁華街かスラム街に変化する。
「おい、どこへ連れて行くつもりだ」
不審に思ったロズベルグが男に尋ねる。
「黙ってついて来い。我らのボスに合わせる」
ボス?もしかしてこの男、あっち系のヤバい奴なのかな。
仕方なく暫く男に付いていくと、暗く湿っぽい建物の中へ連れて行かれた。
長い通路を渡り最奥の階段を登って、小さな祭壇のある部屋に通される。
「ここで少し待て」
そう言って男は部屋を出ていき、俺達は暫くその部屋で待たされることとなった。
「怪しさ満点の部屋だな。この祭壇は何を祀ってるんだ?」
「わからん。流石にこれは俺も見たことがない」
祭壇には禍々しい何かを模った小さな像と、幾つもの蝋燭が並んでいる。
またその横には、黒い布に覆われた大きな鏡の様なモノが置かれている。
「なんだこれ。鏡か?」
その鏡を覗こうとした時、防具屋の男が老婆を一人連れて部屋に戻ってきた。
「待たせたな」
「ああ、その人がアンタらのボスか?」
「いや、違うな。この方はボスとの繋ぎ役だ」
「繋ぎ役?」
男が祭壇横の大きな鏡を覆う布を剥ぎ取ると、その前に老婆が座る。
すると老婆は大きな鏡の前で何やら呪文のようなものを唱えだした。
「お、おい。俺達はそういった活動には興味はないぞ」
怪しい活動の勧誘に巻き込まれたかと心配したロズベルグが男に告げる。
「黙って見ていろ」
すると大きな鏡に黒く漂うモヤモヤとした何かが映り始める。
「何だこれは?!」
見たことの無い現象に思わず声をあげるロズベルグ。
すると老婆が後ろに立つ俺達に振り向き口を開く。
「さあ、ラプラス様と繋がりました。質問にお答えください」
「ラプラス様?」
見ると鏡には黒いくっきりとした人影が映っている。
「お主らに問う。今の人の世はお主らにとって幸福か」
その声は確かに聞こえた。
しかし、それは耳から入ってくるものでは無く、脳に直接響いてくる感じだ。
「何だこれ!?頭に直接響いてくるぞ!」
初めての体験に興奮するロズベルグ。
「黙ってラプラス様の問いに答えろ!」
防具屋の男は動揺する俺達を叱りつける。
「あ、ああ。すまんな」
一度息を吐き落ち着きを取り戻したロズベルグが答える。
「今の世の中か。そうだな、幸福かどうかと聞かれたらいつの世もこんなもんなんじゃねーか?でもよ、もっと生きやすい世の中へ変えて行くのは諦めちゃいけねぇと思うぜ。変えることを諦めて現状維持が一番不幸だと思うぞ」
「ならばお主ならばどう変える。お主の理想とする世のどのような姿か」
ラプラス様と呼ばれる黒い人影が、再び俺たちの脳に直接問いかける。
「俺の理想かー。そうだな、どんな人間もソイツらしく生きられる世の中にすることだな。第三者から押し付けられた理不尽に縛られて、ソイツらしく生きていけない今は、世直しする必要があると思うぜ」
「それを為すのに全てをねじ伏せる絶大なる力を望むか」
「いらねえよ。そんなもん手に入れちまったら、俺自身が腐った世を作ってしまいそうだ」
「ならばお主は何を望む」
「大事な人や仲間を守る盾だ。俺にぴったりの頑丈で攻防一体の頼もしいヤツだな」
フフンと謎の自信を見せるロズベルグ。
ロズのその答えに対し、少しの間が生じたのち、ラプラス様が語りかける。
「気に入ったぞ、よかろう。明日またここへ訪れよ。お主の望みを叶えてやろう」
そう語るとラプラス様は鏡から姿を消した。
すると老婆が
「ラプラス様がお前達の望みを叶える。明日またこの場を訪れるが良い。今日のところは有り金を全て置いてこの場から去れ」
「は!?まだ盾を受け取ってもいないのに金を置いていけるわけ・・・」
噛み付く俺を手で制し、ロズベルグが銭袋を老婆の前に置く。
「いいぜ。どうせ他を探したって俺の要望に叶うモノはないだろう。ならば俺はラプラス様とやらに賭けてやらあ」
「いやお前、それはお前の全財産なんじゃ」
「ああ、不思議な感覚だ。けど何故か確信があるんだ。明日、俺は運命の盾と出会う気がするんだ」
ロズベルグは自信満々に目を輝かせている。
「まあ、お前の金だしこれ以上俺がとやかく言うつもりはないよ。だがこれが詐欺だったら俺はコイツらを許さん」
「ああ、その時は婆さん。アンタ達を官吏に突き出すからな」
「フン、好きにせえ。それより金を置いたらさっさと去れ」
追い出されるように建物を後にする。
すっかり遅くなってしまった。
宿で待つリルティア様が心配なので、急ぎ宿へ戻る。
「リルティア様、戻りました!」
買ってきたモノを渡すため、リルティア様の部屋をノックする。
「は、はぁい」
部屋のドアを開けたリルティア様は、寝ぼけ眼で買ってきたモノを受け取る。
そりゃそうだ、ずっと歩き続けてきたあげく、初めての野宿まで経験したのだ。
相当疲れていたのだろう。今日はゆっくり休ませてあげよう。
それから宿で旅の疲れを癒しつつ、各々が好きなことをしてリラックスした夜を過ごした。
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