表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の称号を剥奪された最強の元勇者、今は便利屋を開業し平和に暮らしたい。~押しかけ弟子のせいで平和には暮らせないようです~  作者: 暁輝
【08】星を繋ぐ日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/875

【08】花天絶景【22】


 ◆ ◆ ◆


「はぁ……はぁ」

 ハルルが、その場にへたり込んだ。


 ──クエスト中一度しか使えないロマン砲!──


 そんなポムの言葉を、ハルルは思い出した。


(本当に、とんでもない火力ッスね……)


 槍を解装(パージ)して現れる赤鉄の三叉槍(トライデント)

 50センチほど伸び、突き刺さった場所で内蔵された術式を全て発動し──超高火力の爆発を起こす。

 超高火力の仕組みは、……誤作動である。

 誤爆。爆発機能をショートさせ、大爆発を起こす。

 まさに、ポムの家が吹き飛んだ時の現象。あれである。


 槍を相手の体に突き刺し、相手の内部から爆破する。

 当たれば、正に必殺の一撃だ。


 しかし、爆発機構をショートさせている為、代償として幾つかの機能が失われる。

 爆発機能が失われ、三叉槍を槍頭に収納することも不可能。

 戦い(クエスト)が終わってから、ポムに直して貰わないとならない。


 しかし、燃える三叉槍(トライデント)としては使用できる。


 そんな三叉槍(トライデント)で体を支えてから、ハルルは立ち上がる。

 そして、槍を握りしめて、動かない蛇竜ワダツノミコを見下ろした。


 爆裂により、蛇竜の顔半分は吹き飛んだ。

 身じろぎ一つない。


 だが、ハルルは直感で悟っていたのだ。


 ハルルは息を吸い、言葉を吐いた。


「隙を()くのは……悪じゃないッス。

戦闘において、隙を晒す方が……悪いんスから」


 蛇竜は、動かない。


「だから。死んだふりをしてても……一切問題ないッス。

ただ、一応、伝えようとしているだけなんで」


 それでも、動く気配はない。


「今から、……そうだ、三秒後。

三秒数えたら、あんたの首を、落とすッス。いいッスね」

 槍を上段に構える。


「三」

 腕に力を入れる。


「二」

 三叉槍(トライデント)の先端が赤く燃える。


「一」

『っち!! 攻撃をするんじゃないっ! 周りをよく見ろ!』


 頭半分失った蛇竜は声を荒げた。

 息は荒い。どばっと血の塊がその場に落ちる。

 

『アッハッハ! 後ろの弟子二人の周りに、水刃の魔法を放った! 

百にも及ぶ水刃! お前、攻撃を止めないと、二人の弟子は』



「見えてないだろうから言っとくぞ。

水の刃、計八十二本、全部叩き落としたからな。

つか、百にも及ぶって、及ばねぇじゃねぇかよ。盛るなよ」



 蛇竜の言葉を、ジンが遮った。


『はっ?』

「だから、叩き落とした。ハエかと思ったよ」

『ば、ばかなっ!』


「流石……ジンさんッス」

 ハルルは振り返らない。

 槍を向け、蛇竜ににじり寄る。


『くっ……くそぉ……! 嫌だ、死にたくないっ!』

 蛇竜は我武者羅に水の魔法を投げつけてくる。

 刃だったり塊だったり。

 ハルルは、受け流し、斬り裂き、間合いを詰める。

『嫌だああああ!!』

 乱雑に先端の無い尻尾を振り回す。


 偶然が重なった。


 海水が巻き上げられ、ハルルの目に掛かった。


 一瞬だけ止まったハルルに、適当に投げつけられた水の塊が鳩尾に命中した。

 二つとも、偶然だった。


「がっ」

 よろけた。

 片膝をつき、槍で体を支えた。

「ハルル!!」


『あ! ああ!』

 チャンスだ。蛇竜は、おおおっ、と訳の分からない声を上げてハルルに背を向けた。

 逃げる。戦闘はもう無理だ。殺される。そう判断した。

 海へ逃げて、どうにか体を治そう。


 死を前にした蛇竜は生きることしか考えていない。

 竜人(ドラゴニア)の幼女を攫うのはいつでもできる。今はとにかく逃げなければ。


 だが、蛇竜は、海へ飛び込めなかった。


『なんだ……なんだ、この熱……』


 両目を完全に失った蛇竜は、温度感知(ピット)器官で周りを見ていた。

 だから、水面に浮かぶその熱が何か、理解するのに時間が掛かった。


「ワダツノミコ様……! リリカは、捧げられませぬ!」

「そうだそうだ!」「リリカちゃんは渡せないぞ!」


 村人の声だ。

 海で、松明を焚き、皆一様に農具(ぶき)を持っていた。


『くそ、村人が……アッハッハ。ここに来て、掌返しか! 

今まで、散々、守ってやったのになあ!』


「……いまだに、我々は恩を忘れてはおりませぬ。

薬や、金銭なら、喜んで差し出しましょう。

ですが……村の人間の命となれば別です」

 村長が、そう告げた。

 まだ呪いで痛みが続いている筈だが、それでも気丈にそう語った。


『どいつもこいつも……そいつは、人間じゃなく、竜人(ドラゴニア)だ……!

それに、そのガキの親は、この村の人間じゃねぇだろうが!』


 蛇竜の怒号は響き亘る。


『ただ難破した船に乗っていた母子だっただろう! 母がその後すぐ死んだ! 

そのガキはその時、死に損なったのをお前が拾って』


「……悲しい話です。何故、ワダツノミコ様は、あの船のことをご存じで。

いや、あの夜の事件の時、何故、その船に母子が乗っていたことを知っておられるのですか」


 蛇竜は、あっ、と声を上げる。

『そ、それは』


「ハルル様のお弟子さんが持ってきたこの資料は……真実なのですね」


 村長は、その紙を強く握っていた。

 蛇竜の社にあった資料(カルテ)を、ここに来る前にジンが村長に渡したのだ。


『し、資料……まさか、余の社にあったものを!? くっ!!』

 蛇竜は、空気を吐く。怒りの音だ。


『クソが。もういい。もう、お前ら全員、殺してやる!』



「させないッス!!」



 蛇竜の背に、槍が刺さり、火が出る。


『あっがっ!!』

「言ったッスよね。隙を晒す方が悪いんスって!」


『クソがあああ!』

 振りほどき、蛇竜はハルルへ向き直る。


『お前さえ! お前さえ居なければああああ!!』

 蛇竜が向かってくる。


 その時、ハルルは──槍を今までにない構え方をした。


 さながら、居合。

 槍先を左の腰の下へと構えた。


 それは──ジンにとって、どこかで見たことのある構えだった。

(ああ。そうか)

 ジンは、少し口元を笑ませた。

 絶景を攻撃に転用しているだけで、その本質を忘れていた。


 絶景は、そもそも防御の技だ。

 だから、相手の攻撃を受け流すことも、反撃(カウンター)を取ることも容易。

 ハルルは……考えて。いや、感覚か? ともかく。




花天(かてん)──……」




『お前があああああ! 居なければあああああああ!!』




「……──絶景」




 絶景を最大限に活かせる技──ハルルは反撃(カウンター)に辿り着いた。


 音もない横一文字の薙ぎ払い。

 その場のジンの他、誰も目で追うことも出来なかった。


『……余が……かみ……』

 蛇竜は、息を吐くような、絞られた声を上げた。



「うちの弟子を泣かせる神なら、いらないッス」



 ぼとり。

 蛇竜の首が、その場に落ちた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ