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【27】ユウ VS プルメイ ④【22】


 ◇ ◇ ◇



 ──蘇る、数日前のある日の回想(出来事)



 その日。──プルメイは、命懸けで戦っていた。

 人生を懸けるような、戦いだった。


 その戦いはこの会議。

 浮遊城塞の破壊に向けての会議中に起こっていた。


『──また、獣国の動きもある。獣国の王とは面識があるからボクから話は通しておこう』


 司会進行の賢者ルキは知らない。

 勿論、他の会議の参加者である魔族七族の族長方も、族長代理も。


 ラニアン王子。王子のお付きのゴスロリ様(セーリャ・ド・カデナ)

 魔王ヴィオレッタ、ハルル。

 ハッチとヴァネシオス。シャル丸、ノア。


 ジンすらも。


 ここに全員集合した魔王陣営。


 その全員が、プルメイが戦っていることを、知らなかった。


『そして部隊編成は──』

 ルキは生き生きとしていた。

 会議だの説明だのというのは、ルキの大好物だとプルメイは知っていた。



 対して、このプルメイ。全く生き生きしていなかった。



 生きた心地が、していなかった。

 靴の中で、足の指を握ったり広げたりを繰り返す。


 身体を熱して汗を出すことを試み。

 どうにかならないか、なんとかなれーっ! の精神。



『──以上。そして、これを4部隊に分ける。正面の囮部隊、本陣強襲、背面強襲、そして防衛戦力だ。

部隊編成は先に配った資料にもあるが、念の為読み上げる』




(読み上げなくていいってっ! 書いて、あるなら、それで、いいからッ!)




『正面、囮はヴィオレッタ。そしてライヴェルグの仮装をボクがする予定で──』



(ルキの話っ、今日ばかりは、長く感じるっ……今! 私は! 私はっ! 恥ずかしながら!!)



『──続いて強襲部隊が』





(お……。お、……お花を──摘みに、行きたいッ!!)




 プルメイの人生を懸けた戦い。

 会議中に現れた──尿意、という名のモンスター。



(紅茶を……ッ! 飲み過ぎたっ。カフェインは、利尿作用が強い、って聞いたッ)



 また、紅茶への風評被害を防ぐ為に明確に記すが、プルメイは、そもそも魔族流の飲み方で紅茶を4杯も飲んだ。

 魔族流の果物を入れる飲み方は少し大きめのカップを使う。

 凡そ、190ml。4杯飲んで760ml。+桃8個(※普通にデザートとして2個食べた)。


 カフェイン云々じゃなくてもこの量飲めば、それはお手洗いも近くなる。


 その上、先ほど出された砂糖入り緑茶(ターイ)も飲んだので、130ml加算。

 膀胱の平均的な容量は500mlと言われているが、人によってかなり違う。

 とはいえ、1000mlは相当に限界ラインだ。その寸前に彼女は居る。



『──さて。以上で編成の説明を終わる』



(終わったッ! よし!)



『次は浮遊城塞内部の説明だ』



(続いたぁあ)



『ね。ルキ。内部破壊工作するのはその担当者だけでいいんじゃない?』

(! なんてナイスな魔王ちゃんッ!)


『いや。不測の事態があるかもしれない。綿密に作戦を建てた時ほど、他のプランもあった方が良い。

故に、内部の基本的な設計について作戦に不参加のメンバーも聞いてもらいたい』

(っ。ちゃんとした正論っ)


『えー。でも、任意で良いんじゃない? 私みたいに部隊長的なポジションは代わり利かないし』

(いいぞ! いいぞ、魔王ちゃんもっと言えー!)


『仕方ない。なら長ポジションは任意でいい』

(よし──! ならトイレへ)


『何を立ってるプルメイ。浮遊城塞の内部に侵攻し破壊工作を行うのは、ハルルとプルメイ。お前たちだぞ』


(──そう、だった)


 プルメイは戦った。


『──説明はこのポムからするのだー!』


 懸命に、全尊厳を懸けて。


『──つまり、第一噴出装置が連動して装置の機動力を高めるからして──』


 魔法詠唱よりも煩雑な機械の名称を、気を紛らわせる為に、真剣に耳を傾け。


『──主動力炉から開閉装置を経て、陸上に撃ち込んだ楔型の回収装置に──』




(……会議を、止めて……行ってしまう。でも、それは、ここにいる、人たちに。

プルメイ、トイレ行った勇者、って記憶、されてしまうっ。それは、恥ずい)



 ──過度な尿意の我慢は多くのリスクを伴う。

 その上、生理現象。何も恥ずかしがる必要は無い。

 しかし、この我慢しなくてはならないと思い込んでしまった疑似的な極限状態がプルメイの思考を奪っていた。


 言うなれば、船から海に落ちた時のように。

 慌てて船に近づこうとするが、船がどんどん沖合へ出てしまう。

 船を追わずに流されれば、いずれは陸に流れ着くかもしれない。

 よく見れば近くに島が見えた筈だったのに。──そういう冷静な判断力は奪われていた。


(──言葉を耳で聞き、頭の中で反復してから、耳から出す)


『──以上なのだ』

『素晴、らしい、説明、だった。では』


 だんっ! と立ち上がるプルメイ。その目は──凝視した花が枯れてしまう程に殺気立っている。


『お、おいちょっと待てプルメイ! まだ話が途中で地下協力員が──』

『分かった』

『いやまだ話してないんだが!?』

『委細承知、では』

『待て待てっ! ナズクルのチームに協力員を伏せてあってだな! 元はナズクル側だったユウが』

『うん。分かった。じゃ』


『なんでもう足早に廊下に出てるんだよ!?』

『追って、こない、っ!』


『事情があって、ユウは──』

『分かった。分かった』


『分かってねえな?? つまり、だな。いいか? ユウはフィニロットの術技(スキル)を探していてだな。

彼女の記憶を取り戻す為にナズクル側に潜入してるってことだ』

『うんうん。分かった。委細承知。では』


 ──ばんっ、と閉じられた扉を見て、あー、とジンは頬を掻く。

 ノンデリカシーだった、と割と深めに彼は反省してから難しい顔で廊下を後にした。


 ◇ ◇ ◇



(……お花、積みたくて仕方なくて……ジンの話適当に、聞いてしまったのが元凶。

……つまり、ジンが悪い。うん。ジンが悪い)

 たらたらと汗を流しながら、プルメイは口を『一』の形にして現状を改めて確認する。


 ──右腕骨折。背から生えた4枚の翼の内、3枚が背からえぐり取られた。

 肋骨も折れ、肩にも大腿骨にも罅が入っているだろう。

 そんな満身創痍の魔族の男(ユウ)


 それを見下ろすのは、不老(おいず)不死(しなず)麗人(大人版のプルメイ)

 呪われた伝説の武器まで持ち出して、完膚なきまでにユウをボコボコにした。

 黒い垂髪を掻き上げて、その褐色の額に汗が一筋流れる。



 改めて。

 ユウは、ナズクル側だったが──今はジン側に寝返っている。

 プルメイはジンの仲間。つまり。



(勘違いで、仲間を半殺し(ボッコボコ)にしてしまった……ッ!)




 協力者を──半殺しにしてしまった。



(しかも伝達不備じゃなくて、私の単純な物忘れ(ヒューマンエラー)っ)




 ユウは死を覚悟しつつもまだ抗うつもりで折れた矛を握っている。




 プルメイは、色々考えた。

 凄く。色々考えた。

 今から直接謝るとか、勘違いを説明するとか、ジンのせいにするとか、色々、考えた。


 結果。




「──ウ、ウワー」



 プルメイは突然、その場に膝を付く。

 付いてから、うんしょ、と仰向けに倒れる。




「ヤ、……ヤラレター!」




 結果が……これである。




◆ ◆ ◆

いつもありがとうございます!

次回投稿は 10月13日 を予定しております。

よろしくお願いいたします!

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