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【27】ユウ VS プルメイ ②【20】


 ◆ ◆ ◆


 そして今。

 見惚れてしまう程に美しい麗人と戻った(変化した)プルメイは握っていた斧をくるくると手の中で回す。


 その斧は、骨だ。

 彫刻家が作り出したような精緻な意匠のあるその斧は、柄から刃先に至るまで全てが白い骨だ。

 その刃先は扇状。独特だが見かけないデザインではない。


 骨の斧という強烈な異端性もあるが、より焦点を当てるべき場所があった。

 彼女が握る骨の斧とは別の形状の斧が、彼女の背後に後6本も浮いているという点。

 まるで雷神の雷鼓だ。



「……玖ヶ岐(くがき)、ですか。プルメイさん。その呪物(武器)は、どこで手に入れたんですか」



 玖ヶ岐(くがき)八骨(はっこつ)勒往獣扇(ろくおうじゅうせん)國咎(くにとが)

 それがプルメイの両手に持つ斧と、背、合わせて8本の斧の名前。


「へえ。知ってるんだ」

「そりゃそうです。それは魔族の神話武器(レジェンドロア)ですからね」


 プルメイに対峙する(ユウ)は知っていた。


「なんですか、って驚いてた癖に」

「そりゃ初めて見ましたから。ただ、魔族の幹部を務めた者なら、その神話級の希少武器を誰でも知ってますよ」


 ──八骨。魔族の役職の一つである。

 魔王腹心『四翼衆』。その補佐に当たる幹部たちの役職は『八骨』という。


八勒一斧(はちろくいちぶ)。八つの骨刃が集まって一つの斧になった異形の武器。

しかもただの伝説の武器ではなく──呪われた伝説の武器。

その名にあやかって、魔族幹部の役職名が選ばれた、と聞いておりますからね」

「へえ。それは知らなかった」


「……ただ姿や能力、呪いなど知ってますが実物は初めて見ますよ。

なるほど──戦闘中に違う種類の斧に変えて戦う換装型の武器ですね」

「流石、武器マニア。見てすぐに理解するとは凄いな。

まぁ、なら本望だろう。──この希少武器で頭を勝ち割られるのは嬉しいことだろうな!」


 プルメイが笑いながら走り寄る。

 その構えた腕程の長さの斧は、小さめだ。だから振りが小さい分素早い連撃が出せる。


「いやいやいやっ! 全く嬉しく無いですよ!?」

頭を砕く為の斧(ポラークス)


 彼女の握る骨の斧が姿を変える。

 まるで鳥の爪のような刃先が三つも付いた斧だ。


(いっ、痛そうッ!

ともかく、防がないと。ただ、あの武器の能力が、神話通りならヤバイっ! 

神話通りの能力だとしたら、有する能力は──)


 それでも、と。ユウは瞬時に虚空に氷の刃を作り出す。

 防ぐために、刃を前に突き出した。




 斧に触れた氷の刃は──液状化して消えた。


 


 斧が氷の刃に触れただけで砕け散った。いや、違う。

 力で砕かれたのなら氷のままのはずだ。




(──()()()()()()()()()()ッ。

対魔法系生物、対魔法の最強武器だッ!)


「本物、ですねッ!」

「偽物を自慢する奴はいないでしょうに」

 プルメイはその場で踏み込んだ。

 素早い。ジャブのように素早い斧の一撃がユウの顎を掠めた。


 掠めただけだったのにユウの視界がぐらりと揺れた。


(ッう! 魔族も魔法生物扱いですかっ……! 掠っただけで、身体が痺れたみたいですよっ!

切り口から魔力を強制的に抜き出すのか……あの武器はっ! ──!)


 それは間一髪だった。直感でユウは身体を捩り、耳の横を何かが掠めて落ちた。

 ──白い斧。空中から、扇の刃の斧が落ちて来ていた。


(あぶ、な──)


虚を衝く為の斧(トマホーク)の奇襲失敗。だとしても──死ね、ユウ」

「ちょ、まッ!」


 今落ちて来た飛ぶ斧(トマホーク)を掴んで振る。

 回避してすぐ、ユウの目の前を爪の斧(ポラークス)が通り抜ける。


 プルメイは距離を詰めようとするが、ユウはそれに合わせて後ろに下がる。


「危なッ! プルメイさんッ! 待って、この戦闘自体が誤解なんだ!!」

「問答無用。咎は断つ」

「っ!」

 空中を凍らせ、腕のように太い氷柱を生み出す。

 だがそれは一瞬で水に戻され空気に霧散する。


(と、とにかく()()ッ! ()()が必要だッ!)


 氷を生み出し、盾に。時間を稼ぎ、回避に専念する。

 時間稼ぎも回避も無駄に見える。

 だが、ユウのこの行動には理由があった。


(あの玖ヶ岐(くがき)という斧は呪いの斧です! 使用制限がありますっ!

あの斧は持っているだけで体力がガンガン奪われるそうですっ。

そして、斧は同時に2本までしか使えない。

結果、5分を過ぎると体力が奪われ過ぎて戦える状態じゃなくなる!! だから)



「時間稼ぎで私の体力がなくなるのを待っているのだな」



 プルメイの声が凛と響く。

 ユウは苦く笑う。

「ええ、時間が経過すれば、少しは頭も冷えて──っと!」


 飛ぶ斧(トマホーク)を回避する。

 プルメイの顔が目の前に来た。振り下ろされた斧──を持つ手を蹴弾き、間一髪で躱す。


 そして弾かれた斧へ、ユウはすかさず氷の魔法を叩き込む。


「ほう。柄以外に当たれば魔法は解けたんだがな」

「こういう精密魔法発動は得意なんですよ、僕ぁ」


 ユウはプルメイを見合い、一息を軽く吸う。


(よし、これで大丈夫だ。プルメイさんが斧を2本手放した。

この武器は魔法で出現させた武器と違う。接触していなければ換装出来ない。筈。

これで時間が更に稼げる──)


「甘いな。ユウ」

「……そうでもないですよ。後、3分もすればその武器はもう使えなくなる」

「はは。……私がどうしてこの呪いの武器を入手したか。その経緯を考えれば分かるだろうに」

「入手の、経緯?」


 凛と、プルメイは腕を組む。


「この呪いの斧だが──斧は2本までしか使えないな」

「ええ、知ってますよ」

「じゃあ、3本使うとどうなると思う?」

「……? 使えない、のでは」

「いいや──呪いの武器たる玖ヶ岐(くがき)は、3本目を出せる。そして代わりに『代償』を支払わせる訳だ」


(代償……? 呪い。使えない筈の3本目……)

 ユウが思考を回した。

 そして、気付く。気付いて、苦く笑った。



「──首を刎ねる為の斧(エクセキューショナーズ・ハルバード)



 槍と斧を一体にしたようなその斧。

 白い光と共に顕現したと同時に、プルメイの口から血が流れる。


「3本目の斧を使うと、使用者は死ぬ。だが、ご存知の通り。

この私は死なない。寿命の日まで死ぬことはない。──その為」


「呪いを無効にして、そのまま戦える、と」

「そう。その上、呪物すら『条件付き不死者(こういう事態)』は予測していなかったらしい。

死んだ私が改めて斧を握るとな。何故か使用時間が元に戻るんだ」


「……マジですか。ということは、え、あれですか。

魔法破壊し放題の対魔族の武器が、制約なしで使い放題?」

「ああ! それと不思議現象だが、一度持った状態で死ぬとその後は戦闘中の斧を持ってるだけで体力が減る現象も無くなるんだ」



「もうそれ不正行為(チート)じゃないですかッ!!」


「違うぞ。ただの裏技(バグ)だ」


不具合使った裏技(グリッチ)ぃッ! アプデ急いでッ!」


「悪いな。買い切りなんだ。アプデ予定もない」

「クソ世界ッ」


 振り下ろされた首を刎ねる為の斧(ハルバート)

 ユウは真横に転がり避けて──奥歯を噛む。


 ──腕から、血が溢れていた。

 そして、口からも僅かに血が流れる。


「惜しいな。腕を裂いただけだったみたい。……首を出しなよ。ユウ。──痛みなく殺すから」

「……断りますってば。というかプルメイさん。言ってるじゃないですか」

「何?」


「この戦いは誤解ですって。僕は、貴方達の味方で──」


「まだ言うか。この裏切り者!」


 ユウが生唾を飲む程の、威圧的な三白眼だった。

 本気の殺意。真剣な怒り。


(……マジか。プルメイさんを、どうにか、止めないと……僕、死ぬよ、これ)


「……分かりました」

 ユウは息を吐く。呼吸を整えて、立ち上がる。


「首を差し出すか」

「いえ……。僕もここで殺される訳にはいかない。ようやくフィニロットさんの手掛かりまで来たんです」

「……フィニロット……?」

「ええ。──僕は僕の為、愛する人の為に。

仕方ないので、本気で戦いましょう」


 口の血を拭って、獲物を見定めるようにユウは目を細くしてプルメイを睨んだ。


 


◆ ◆ ◆

いつも本当にありがとうございます。

この度は投稿予定がずれてしまい申し訳ございませんでした。

次回の投稿は 10月8日 を予定しております。


本当に。いつも、読んでくださってありがとうございます。

とても励みにさせて頂いております。

これからも頑張らせていただきたいと思います!


◆ 謝罪 ◆


すみません……次回投稿を10月9日の夕方に変更させて頂きます。


誠に申し訳ございません……。

嘘みたいな話ですが……書き上げた原稿を何故かバックアップもせずそのまま消しました……。

何故、消したのか、本当に自分でも理解出来ず、放心しております。

本当に申し訳ございません……。

辛うじてプロットは残っているので、9日、改めて作成し直し投稿させて頂きます。

何卒、よろしくお願いいたします……。本当にすみませんでした。

10/8 1:50 暁輝

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