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【26】そんな蜂、自然界に存在しねえ【06】



 バーンズの術技(スキル)炎貌(エンボウ)】は、足から炎を生み出す術技(スキル)である。

 炎を噴射し、空中を自在に飛ぶことが可能。

 そして、もう一つ。バーンズは自身が生み出した炎に、身体の一部を()()与えることが出来る。


 空中に生み出した炎に、自分の右腕を貸し与えれば、炎の噴射で空中を自在に飛ぶ右腕が生まれる。

 花火に目を貸し与えれば、上空から至る所を見る索敵魔法にもなる。


 貸している間は、その身体の部位は消失する。

 だから、造形魔法と大きく違い、腕を何本も作ることは出来ない。

 また、腕を貸したら、その腕は、本人の本物の腕である。


 つまり、人形の四肢のように取り外しが可能。

 そして、取り外した腕などを自在に、それこそ縦横無尽に操作することが可能ということである。



 ──そして、今。

 王鴉(ノア)の首を彼の右腕が締めていた。



「ノアからその手を離しなさいよッ!!」

「動物に攻撃するなんて最低だワ!!」


 ハッチとヴァネシオスは声を荒げながらノアの首を絞める手をどうにかしようと手を伸ばす。

 だが、彼女たちにはどうにもできない。力ではなく、位置関係的に。


 今、ノアの首は、さながら格闘技のチョークスリーパーを受けているような状態だ。

 しかし、本体と腕は切り離されている。故に、ノアを締め上げているのは、肩から先しかない腕だ。


 故に背中側に居る彼女たちではどうにもできなかった。



 王鴉(ノア)は落ちる。

 上空から、真っ逆さまに落下していた。



(このままじゃ、皆ごと落ちるっ。でも、今、落ちる訳には──ッ!!)



『カァッ! カァッ! カァア!!』

 彼女は、背に乗せた仲間たちの悲鳴を聞き──声を上げた。


「五月蠅い声を上げるなよぉお、大人しく落ちてりゃああ、いいんだよお!」


『かっ──』


(く、嘴が。っ、捕まれて……! 息がっ、苦し……、首が締まっ……!)


 左手が、ノアの嘴を押さえる。そして、右手がノアの首を締め上げる。




(──このままじゃ、意識が、飛んでしまいますっ……なら。

なら……! イチかバチか……!!)




 ノアは──加速した。

 地面に向かって、加速する。その速度はもう、止まる気のない速度。

 まるで流星のような。



「はぁああああ!!? おいぃいい!! てめぇええ!!」



 落下。

 頭から、ノアは地面に落下した。





 土煙が立ち上り、木々が揺れた。





 音が、無くなっていた。

 街道に、ハッチもヴァネシオスもヘイズも、投げ出されていた。


 もぞっと、俯せに放り出されたハッチが動いた。

 

「み、みんなっ、大丈夫!?」

「あぅち……あ、(あたい)はギリ平気よ……」

(わたし)も大丈夫でありますが……これは」

 

「ノアッ!」


 ──ノアは、地面に半身、めり込んでいた。

 夥しい流血。いや、違う。勿論ノアの血もあるが、それだけじゃない。



「くそおお。くそぉがよぉおお……頭、おかしいンじゃあないのか、おたくらの鴉はよおお……!」



 ぼたぼた、っと音が聞こえた。

 バーンズは、ゆらりと死霊のような歩みで3人の前に立った。


「おれの腕によぉ、一矢報いる為かぁあ……! 頭から地面に突っ込みやがって!!

考えても実行しねええだろおが……っ! くそ、滅茶苦茶、痛ぇええよぉおお!」


 左腕は、手首があらぬ方向に曲がり、右腕は皮膚が捲れる程の擦過傷(すりきず)だらけだ。


「だけどよお! その鴉のやったことはよお! カモの背中に水を掛けたぁ! その程度のもんだぜぇえ!?

おれぁあよおお! 術技(スキル)は足が()()だぁあ! 腕なんか潰されてもよおお!

戦闘に一切の関係はぁあああ──……あれ」


 パチパチと、バーンズはまばたきをした。

 それから目を擦って、顔に皺を寄せる。




「人数、あれ、おかしくねええかあ? 一人、足りねぇよなぁあ???

オカマと、知らない男と……あれ、あの(あま)ぁどこに」




 その音は重低音の羽音。誰もが一瞬で危機に感じる、ある種の不快音。

 プロペラ機の回転か、あるいはそう。


「あんたの真横だけど」


 蜂の羽音。

「なっ!? なんでそんな素早っ──」


 蜂の顎のような甲殻(ガントレット)の拳が、バーンズの横っ面を殴り飛ばした。


「ぶへやっ!!?」


「なんでそんな素早くって? あんたの真似したのよ。足に翅を出したのよ。本当に速く動けたわ」


 空中。よろけたバーンズの目の前に、彼女はいた。

 背中にも薄い膜のような翅。そして、その足、くるぶしから脹脛にかけて、蜂の翅が4対生えている。


「蜂の速さは時速30キロ前後。人間のスケールにしたら、時速3000キロにもなるわ。単純計算だから実際は違うだろうけどね」


「は、蜂ぃ!? それが」


「そうよ、あたしの術技(スキル)。ま。足に翅を出す難点を上げるなら、ビジュアル的にちょっと嫌だなぁくらいかしら。ともかく──」



「いや、──いやいやいやいや!!」



「ぶっ飛ばすわ」

 ハッチは拳を握った。

 みしりと軋んだ音がハッチの中に反響した。




「そんな蜂、自然界に存在しねええぇえロ──バぼぉええげ!?」




 顔面一直線。正面からその鼻を殴り──バーンズを吹っ飛ばした。


「うっさいわね。ここに存在してるっての」






◆ ◆ ◆

次回更新は 6月26日 を予定しております!

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