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【総集編】砂の大国に降り頻る雨【57】


 ◆ ◆ ◆


 人間たちに《雷の翼》という伝説のように語れる存在が居るように、魔族たちにも語り継ぐ伝説のような存在がいる。


 『四翼衆』あるいは『四翼』と呼ばれる魔王の腹心である。


 特に、《雷の翼》の台頭()()の『四翼衆』は魔族の間ではまさに英雄的な存在だった。

 無論、人間側からすれば大罪人に他ならない。


 特に、よく聞く大罪人の名前は、3人。

 いずれも『死んだとされている魔族』である。


 不死の実験の為という大義名分の隠れ、ただ動物を殺すことに悦びを見出していた『白羽』カギャ・クムヒ。


 毒を用いた非人道的殺戮を繰り返し、誘拐と強姦、暴力の限りを尽くした『紫羽神(しうしん)』パバト・グッピ。

 

 そして。

 人体、特に腕部の収集を好む連続殺人犯がいた。人を殺すことが彼女の娯楽であり快楽。

 それは敵であった人間だけではない。種族を問わずに殺傷を好む。

 その種族を問わずにと言うのは同族たる魔族も含む。

 『骨羽神(こつうしん)』──ルクスソリス。


 そして、そのルクスソリスには夢があった。

 彼女を打ち負かしたことのある『ライヴェルグ様』──その()()()()()()()()()、である。


 ◆ ◆ ◆


 黄月族長のセレネは、砂の大国に向かっていた。

 それはポムから託された武器をハルルに届ける為。

 しかしその道中、連続殺人犯ルクスソリスを見つけてしまう。

 見過ごせばいいと理解しながらも、両親の仇であり、族長の師であった人を殺したルクスソリスを前に、感情を抑制できなくなった。


 しかし、ルクスソリスの圧倒的な実力差からセレネは死の寸前に追いやられる。


 間一髪、彼女を助けたのは──ハルル。

 異変を感じ、砂の都のシェンファの力を借りて転移魔法を発動してもらい、単身跳び出していた。


 だが、窮地を救ったのも束の間。

 相手は、十年前、ライヴェルグと対等に戦っていた女性、ルクスソリス。


 それは猫が鼠を狩るような戦いだった。

 傍目から見て、ハルルには万に一つも勝ちは無いようにしか見えなかった。


 それでも、ハルルは勝ち筋を手繰り続けた。

 それはこの広大な砂漠の中で。いや。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、途方も無い行為。


 しかし、ハルルは知っていた。


 ──途方も無いような行為だったとしても、止めなければ。

 

 諦めなければ、必ず辿()()()()()



 ハルルの中にある『サシャラの術技(スキル)の残滓』──【不屈】。

 立ち上がれるならば、傷を癒し、一時的に筋肉への負荷が軽減される術技(スキル)

 曰く『根性があれば何でもできる!』という術技(スキル)

 彼女の中にいるサシャラが、彼女を認めて貸した術技(スキル)

 ライヴェルグを救ってくれたお礼と、彼女は笑う。


 ドゥールも加勢に加わり、セレネの活躍もあって新たな爆機槍(ボンバルディア)を手にした。


 形勢は変わっていた。


「──なんなのよ。あんた。なんでそんなに、強いのよ……」


「……言ったじゃないスか。どんな強い力より、最後勝つのは強い想いがある方だ、って。

……自分は、全然、強くなかったんスよ」


 ハルルは握った槍に力を込めた。


 強くなれたのは。その理由は。


「ライヴェルグ様に、憧れて。……ジンさんを好きになって。

世界最強の勇者様の……隣に立てるように」


 その全てがあったから、ハルルは立ち上がれた。

 その形勢逆転は、ハルルが積み上げた物。

 積み上げたから辿り着けた場所だった。

 

「その人の隣に立っても、その日が恥ずかしくならないように──強くなったんス」


 強くなれたのは、好きな人の為に背伸びをする気持ちがあったから。


 ルクスソリスは歯ぎしりをした。

 彼女はライヴェルグを愛している。彼を手に入れたいと心から願っている。


 しかし、好きな人を手に入れる為に、好きな人を貶める。

 自分が手の届く所まで彼を削り落として、手中に収めようとしていた。


 その違い。

 好きな人に手を伸ばす、その方法の違いが。


 好きな人の為に自分を鍛えるか。

 好きな人の為に相手を貶めるか。


 その差。歴然たる差が。

 絶望的なまでに、自分が愛されなかった──選ばれなかった──すべての答え。



「認め──み、認めて──認めて、溜まるかッ!!

あんたみたいなただの餓鬼に! 小娘の分際で! なんで!!」



 叫び魔力も滾らせるルクスソリスの目は見ていた。

 何も揺らぎも無く、ただ真っ直ぐに、射貫くように瞳を逸らさないハルルの瞳を。

 

(──違う。この、ハルル、は……もうなんか、私とは、全然違う。認めては駄目なのに。

ああ、ダメだ。この女に、私が知ってるライヴェルグは、変えられちゃった。もう、不可逆な、程に)

  


 ドゥールとハルルは、その隙を逃さなかった。

 しかしその時。


「間一髪でしたね。まぁルクスソリスさんなら頭を撃ち抜かれても平気かもしれませんが──」


 ユウが割って入った。


(──ジンさんと相談した結果、僕は前みたいにダブルスパイをします。

ルクスソリスさんをここで討つのも一つでしたが、フィニロットさんの安全を優先する話でまとまっています。

ので、僕はルクスソリスさんごとこの後、転移。後はバックアップしながら『機』を伺う感じです。

以上が僕がルクスソリスさんを守った理()です。()()()()()分かり易く理()を説明させていただきました!)


「ハルルさん、ドゥールさん──また、いつか、会いましょう」


 そうして、ユウとルクスソリスは闇の中へと消えた。


 ◆ ◆ ◆


 そして、その翌日。

 砂の大国には、とても珍しい大雨が降っていた。

 雨季を外した大雨で、急に肌寒さも感じる。──昨日の戦闘が原因なのかもしれないが、それよりも。


 窓を叩く雨の音。

 昼間なのに、明かりを灯しているのにも、なお暗い部屋の中。


 その部屋にはジンとハルル、それからドゥールとその妻シェンファの四人が居た。

 四人に同時に聞こえた『念話』を、ジンとハルルは理解出来なかった。


「──ちょっと待ってくれ、ポム。……聞こえなかった。なん、だって?」

『……』




「今、誰が……──誰が死んだ、って?」




 血の気が抜けるような冷たい雨の音が、更に強く響いた。




 



◆ ◇ ◆


いつも読んで頂き本当にありがとうございます!

まず、謝罪を……。


総集編、本当に本当に長く、申し訳ございませんでした。心よりお詫びします……。


気付けば4ヵ月。総集編してしまいました。本当にすみません……。

600頁という頁数を舐めきってました。

年始でやりきれちゃうか~! とか、算数も出来ないのかよ、と今更ながら思っています……。


話しはそれてしまいましたが、ようやく、次回、4月7日より本編を再開させていただきたいと思います!

読んで頂ける皆様に、少しでも楽しい時間を提供できるように、最後までしっかりと頑張らせていただきます。

何卒、今後ともよろしくお願い致します!


2025/04/05 10:50 暁輝

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