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【総集編】まぁ族長の誰かが裏切り者らしいから、見つけてボコボコにしてやろう、ってことだぜ。今話の中身は全部レッタちゃんへの愛語りだわ。割とガチ【43】


 オレは、ガーちゃん。

 え、本名? ガーちゃんでいいだろ別にさ。

 吸ってる煙草は小さい希望(ホープ)。使ってるライターは鉄の国の限定ライター。

 カシャン、コ。って蓋開けて閉じるとそういう音がする。

 レッタちゃんも欲しがったくらい、超、いいライターなんだぜ。

 まぁ──そこは出会った時の回想でも見てくれよな!


 さてと。

 皆には()()()()()()、オレ、滅茶苦茶にレッタちゃんのことが好きなんだよね!

 あ、知ってた?! まぁ隠してねぇからなぁ! はっはっは~!


 ま。こんなふざけた奴なんだわ、オレ。


 けど、バチクソ、ガチでふざけてない真剣なことを喋るとさ。


 レッタちゃん──今、魔法が上手く使えてないんだよな。


 オレさ。知ってると思うけどレッタちゃんのストーカーじゃん?

 いや、まぁストーカーっていうか愛が重いっていうか、熱狂的な愛っつーか。

 ああ、悪ぃ。これ語り過ぎると夜に、いや、朝になっちまうね。


 ともかく、レッタちゃんを好きだからずっと見てるし観察してんだけどさ。


 ──レッタちゃんの魔力、どうにも減っちゃったみたいなんだわな。

 ……理由というか心当たりは、オレには一つしか浮かばない。

 先生だろ。狼先生。


 先生はきっと、レッタちゃんに魔力を貸してたんだろうな、って漠然と思う。

 だから、先生が居なくなったからレッタちゃんは魔力の回復が遅くなった。


 それと同時に、先生が居なくて精神的に少し不安定なんだと思う。

 見た感じは気丈だし、元気だけど──少し、たまに憂いを帯びた顔をする。

 その儚げな横顔が、斜陽に照らされた時にね。その陰影と長い髪のシルエットが、もう大人の色気が留まる所を知らなくてさ。髪が弾けた匂いがするんだよ。石鹸なのか、花なのか、オレの前身、胸と体をかき回すくらいに良い香りの……ああ、そうじゃないね。悪い。もうレッタちゃんのこと話すと無限に話が出来るわ。


 つうわけで。

 マジな話──転移魔法なんて使って欲しくなかったワケだ。


 ◆ ◆ ◆


「くすくす……。ガーちゃん、大丈夫だよ。そんな心配しなくて」


「でも、レッタちゃん」

「大丈夫。魔力回復の秘薬があるからね。飲めばすぐ元気になる~」

 エーテルとかそういう魔法薬があるらしい。

 けど、オレ知ってる。そういうのって飲んですぐには効かないらしい。

 風邪薬(やくそう)と同じだろう。飲んで少ししたら効き始める。


「──こういう時は頭の回転速いんだもんね、ガーちゃんは」

「そうな。レッタちゃんのことの時だけは思考能力が限界まで跳ね上がってる気がするよ」

「くすくす。そういう術技(スキル)なのかな」


 笑ったレッタちゃんはソファに深く腰を下ろして膝を抱えた。

 黒猫のように細い足がほんとに芸術。永遠に見てられるなだらかさだ。


 ふぅと息を吐いたレッタちゃんは観念したように笑った。

「ごめんね。ガーちゃんが考えてる通りだよ。私、今は疲れてるみたい」


 ハルルッスを、転移魔法で送った。

 その後、ジンさんを送ろうとしたら手違いで魔力を貯めてた靄が無くなった。

 穴埋めにジンさんに『一時的にジンさんの使ってた雷化と同じ効果を得られる物』を作って渡した。


「休んだら、よくなる、よな」

 オレの声が少し震えていた。当たり前だろ。心配になったんだ。

 ──レッタちゃんは元々、不治の病だったんだ。

 もしかして治ったんじゃなく一時的に良くなっただけなんじゃないか。そう考えて、何が悪い。


「くすくす。大丈夫。不治の病(シェンツ)は完治したみたい。

ガーちゃん、これは嘘じゃないよ。……本当に、魔力疲れしちゃっただけ」

「それなら、いいけど」

 センスイ婆ちゃんのこともあった。レッタちゃんも張り詰めているんだと思うんだよ。


「くす。……ね、ガーちゃん。隣に座って」

「え?」

「魔力の疲れって精神の摩耗なんだよ。だから、私がしたいことをすれば、精神は癒されるんだ」

 ふむ、なるほど、分からん。

 しかし、隣に座るのと精神が癒されるのと、どういう因果関係が──はっ!


 何故か考えるより早く、オレの体はレッタちゃんの隣に移動していた!


 つい! 条件反射で!

「くすくす。後は、肩、貸して」

「はいよろこんで! 貴方()()の為!」

「?」「あ、うん、忘れて。最近好きなだけだから」「? そ?」


 肩にこつんと、レッタちゃんの小さな頭。息も可愛い、長いまつ毛。


「あったかいでしょ」

「お、おう」

「──くす。昨日の上着のお礼」

 微笑んだレッタちゃんを見て、オレの心音はドラムロール状態だった。


 ◆ ◆ ◆


 それで翌日。

 介抱していた暗殺者のアサンサさんが話したいことがあるってオレたちが居る場所にきた。

 治療費の代わりに情報を伝えたいって。


 ──魔族の情報を、流している奴がいる、っていう情報だった。


 言われてみれば、そういう奴が居る筈だ。

 だって、セレネさんが城壁の港に居るってことを知ってたのは極少数だった。

 それに、センスイさんたちがユウを運んだのも。


 知っていたのは、虹位七族の族長たちと、オレたちだけの筈。


 族長7人の中に、誰か裏切り者がいる、ってことか。


「じゃあ、私が裏切り者見つけるよ。話を聞いたら絶対に心音で分かるし」

「そうだった! レッタちゃんは最強のウソ発見器だぜ! いぇあ!」


 そう! この作品にゃ推理パートなんて不必要だぜ! パワーで解決! それがオレたちのやり方だあ!


「ねぇ、ガーちゃんは何であっち向いて熱くなってるの?」

「さあ? (あたい)知らないワ。あ、でもハッチ曰く『そういう病気』だそうヨ」


 ──ともあれ。

 オレたちは(まぁすることも無いので)族長たち巡りでスパイを炙り出す行動を開始した。


「ルート的には最後、ポメラニ王子と合流出来ればいいよね」

「ああ、そっか。ラニアン王子は今、あの()()()()()()()()()()()の所だっけか」

 藍枢(らんす)族と紫斎(しさい)族の族長は、夫婦なのだ。

 まぁイチャイチャしてるバカップル的夫婦で、凄腕占い師……まぁおいておこう。


「一番近くの緑飼(りょし)族の領地から順に巡って……あ、橙陽(とうよう)族、一番遠いや」

「じゃぁ緑行ったら、藍色紫色の所言って、王子拾って、そこから橙色行く感じにする?」

「それが良さそうだね。そうしよう」

 ──ちなみに、青と、赤、それから黄色は排除している。

 というのは、青と赤、それから黄色が被害者だからだ。

 残った4部族のどれかが裏切り者、のはず。


「……ね、待って。全員で行くの? ここに誰も居なかったらルキさん戻ってきたら怒るんじゃない?」


「……確かに」

 ──現在、賢者ルキさんは不在だ。他国を跳びまわっているそうだ。

 というのも、未来を見据えての行動なのだ。

 ナズクルたちが何かしてくるなら、協力者を集めた方が良い、とルキさんは言っていた。


 で、ルキさんがその仲間を見つけるまでの間、レッタちゃんやジンさんに『ここから動くな』って指示を出して……。あー。


「……ジンさんとハルルッス、東部、行っちった」

「あーだね」


 ナズクルたちに睨みを利かせる為に、ここに全員でいる必要があった、的な話なんだけど。

 おーっと。こりゃ、やっちまいましたね、ジンさん。


「まぁ、ジンたちも居ないし、私たちも動こうよ。どうせ怒られるなら自由にしよー」

「ええ、いいのレッタちゃん」

「いいじゃん。私、魔王だし。この国含めて色々知っておきたいしさ。視察視察♪」

 レッタちゃんはるんるんと鼻で歌って歩き出す。


 ……絶対に、ただ部屋に居るのが飽きただけ、だな。


 けどまぁ。


「可愛いからいいか! よし、行こうぜ、外に遊びに!」

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