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【07】狼先生の術技習得講座【03】

 

◆ ◆ ◆


「そのさ。術技(スキル)ってどうやって身につけられるんだ?」

 質問すると、レッタちゃんは、首を傾げてから、狼先生を見た。

(せんせー)、どうやって身につけるの?」


『そうだな。生まれながらに術技(スキル)を持ってる奴もいれば、

 苦労なく獲得できる奴もいる。道具を用いて継承したり、契約によって獲得することもある』


「……つまり?」


『色々方法がある、ってことだ』

 随分とざっくりしてるなぁ。


『こればかりは、時間が掛かる。二歳で使えることもあれば、壮齢になってから発現することもあるくらいだからな。

 ……まぁ、危機的な状況に陥ると発現する、と聞いたことはあるが』

 そうか……。


「オレがレッタちゃんの欲しい術技(スキル)を発現出来たら、一番、楽だよなぁ、って思ったんだけど」

『なるほどな。ただ、……まぁ、ありえなくはないが』

「多分、あり得ないかな」

 気持ちは嬉しいけどね、と呟いて、くすくすとレッタちゃんは笑う。

「なんで、あり得ないんだ?」


術技(スキル)というものの本質は、その生物の性質や精神、特殊な経験や強い意志。

 つまり、心の熱量から派生する』


「心の熱量から、派生??」

 オレは素っ頓狂な声を上げた。

 狼先生は、頷いて言葉を続けた。


『例えば、自身の体を強化する『肉体強化』の術技(スキル)を持っている人間は、

 そもそも自分の筋肉を好きだったり、鍛えてきた自負があったりする。

 もしかすると、過去に、体が弱かったから、補う為にそういう力を望んで発現したかもしれない』

 ……。


「狼先生……」

『なんだ?』

「狼先生、もしかして、説明下手?」


『……なっ! わかりやすいだろう!?』


 レッタちゃんがくすくす笑った。

「いや、オレ、あんまり理解力とか無くて」

 楽ばかりしてきたもので……ははは。


『……まぁ。ざっくり言えば、術技(スキル)は、とにかく自分らしい術技(スキル)が発動する。

 誰かに言われて、そういう術技(スキル)を獲得しようとしても、まず不可能だ』


「で、いつ、発現するかも分からない、と」

『まぁ、凡そ、皆、十代のうちには発現しているみたいだな』

 オレ、もう二十代中旬……。


「そうかぁ……一生、術技(スキル)なし、ってことも」

「くすくす。ありえなく無いらしいよ」

 まじか。

 それは嫌だな。術技(スキル)なかったら、オレ、レッタちゃんの足手まといだ。


 ふと、小さな疑問が湧き上がった。


「……そういえば、質問してもいい?」

『ん? なんだ?』


「えっと、術技(スキル)は厳密に同じものは無い、ってよく言われてるじゃん?」


 術技(スキル)は、似たものはあれど、同一の物はない。

 個人個人で少しずつ違うらしい。


「なんで、レッタちゃんと狼先生の術技(スキル)は、同じなんだ?」


 そう、術技(スキル)には、厳密に言って同一の物はない。

 だけど、レッタちゃんと狼先生は、同じ靄舞(スキル)を使う。


『それは、少し靄舞(あいまい)の説明をしなきゃいけなくなるが……』



 術技(スキル)、【靄舞(あいまい)】。

 効果① 靄を発生させる。その靄に魔法を撃てば、その魔法の属性を靄が持つ。

 効果② 靄自身の形状変化。靄の形を自由に変えることが出来る。

 効果③ 自身の体を靄化し、別の物質に憑依できる。


「「へぇ、そうだったんだ」」

 レッタちゃんとオレが同時に声を上げた。


『ガーはともかく、君まで……』

 狼先生は、レッタちゃんを見て、おいおい、と嘆いていた。


「だって、なんとなくで使っちゃってるしさ。後、靄化? 憑依みたいなこと、戦いで使わないし」

『まぁ、君の戦い方には合わないだろうな』

 狼先生が溜息を吐く。

 いや、それより。

「三つの効果のどれも、他人に術技(スキル)を譲渡する、って無いけど?」


『ああ。それはそうだ。この術技(スキル)の、譲渡や盗用(コピー)は、副次結果なんだからな』

「副次結果……?」


『そうとも。効果③の靄化。これを使って、相手の体に入り込む』

「体に入り込む……!」


『そうして、その体に、靄舞(あいまい)の残滓を置いていく』

「置いていく……!」


『または、相手の術技(スキル)の欠片を取り込んで、元の体に戻る』

「取り込んで……!」


靄舞(あいまい)の残滓を体に残した場合は、その体の中で術技(スキル)として芽吹き始め、開花すれば、靄舞(あいまい)を使えるようになるんだ』

「使えるようになる……!」


『相手の術技(スキル)の欠片を奪って持ち帰った時も同様。もちろん、確実にコピーできるとは限らないが、成功すれば、術技(スキル)のコピーが作れる』

「コピーが作れる……!」


『お前さっきから同じこと繰り返してしかないな!? なんなの!? 新手の煽りか!?』


 やべ、狼先生が毛を逆立てて怒ってる。ちょっと、冗談しすぎたか。

 レッタちゃんは転げて、足をバタつかせて大爆笑している。


『ったくっ。真面目に解説して損した。これだから最近の若い奴らはっ』

「ごめんって狼先生。じゃぁ、核心の質問なんだけどさ」

『なんだ』



「オレも、靄舞(あいまい)、貰えたりする?」



 その言葉に、狼先生とレッタちゃんの、二人ともが固まった。


 オレのイメージだと……なんていうか。

 靄舞(あいまい)レベル10で攻撃されたら。

 靄舞(あいまい)レベル1を獲得できる。的な。


『不可能ではないな。理論上は』

「そうなのか。だったら」


「ダメ」

 レッタちゃんが割って入ってきた。


「ガーちゃんに、靄舞(あいまい)は似合いません」


「そ、そうなのか?」

「うん。絶対に、ガーちゃんは、ガーちゃん自身の術技(スキル)を発現して」

 いつもよりも、更に、まっすぐな真剣な目で言われた。


「……わ、わかったよ」

 頷く。


『まぁ、賢明だ。術技(スキル)の譲渡は、簡単に言っているが……そう簡単な習得じゃない』

「そうなのか? ラクそうだけどなぁ」


『少し理論的に考えてみれば分かるだろう。

 術技(スキル)自体が、精神や経験、意志の力で出来たモノだ。

 経験も意志も無い生物に与えたら……使えない、で済まないことになる』


 素直に怖い。やっぱり、地道に術技(スキル)を開花させるしかないか……。


「結局……どうすれば、術技(スキル)って発現するんだ……?」

「ま。別に、時間を掛けて使えるようになればいいんじゃない?」


 その時。バサッと力強い羽ばたきが聞こえた。

 数枚の羽根がふわりと落ちてくる。


「わぁ……綺麗な鳥」


 大きく羽を広げた白い鳥が、空を舞っていた。

 ……この距離から見て大きいって分かるってことは、あれ、相当でかいんじゃないか……?


 

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