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【19】やっちまったよ。【47】


 ◆ ◆ ◆



「俺、言ったよな!? 切りのいいところで切り上げようってさ! 

ラッセルの所に敵が向かってるかもしれないって言ったじゃんっ!」

 『髑髏(ジョリーロジャー)』の描かれた青い兜を被ったジンが隣にいる少女に声を少し荒げて言い放つ。

 その兜は一番に倒した相手が使っていた兜であり、ダサい上にちょっとだけ臭いとジンは文句を言っていたが、顔が隠せるなら何でもいいと剥ぎ取って被っていた。


「でもジンだってノリノリで勇者ぶっ飛ばしまくってたじゃん! 

あの場にいた勇者全滅させたのジンじゃん!」

 ムキになって黒緑色の髪の少女ヴィオレッタは負けじと声を張って言い返した。

 その両手で持つ大鎌は烏の嘴のように黒い光沢を放っていた。血を受けて妖しく光りを放っている。


「お前! あれは割と状況が悪かったから一度リセット掛けようと思ってだな!」

「でもその後、そのまま次の部隊に挑んでいったじゃん!」

「そりゃ確かにそうだけど、俺はあれを威嚇して終わらせようと思ったんだよ! そしたら、そのタイミングでお前が突っ込んできたんだよ! 

あっという間に死の舞踏(マカブル)にしやがって!」

「でもそれで戻ろうとしたもん。そしたらジンは違う所に切り込んでたし!」


「お前のことを遠くから狙ってるやつがいたから駆除してたんだよ! 

それで戻ろうとしたらお前がもう全然違う所にいたんじゃん!」

「あれ違うし! 向こう側に魔法使いの群れが居て遠距離魔法打ってきたから倒しに行ってただけだもん!

それに戻ろうと思ったら、ジンが『必殺! 八眺絶景!』ってやってたじゃん!」


「あれはお前が囲まれそうだったから──いや、それより俺は一度も『必殺』とは言ってねぇよ!! 

つか、八眺絶景は由緒正しい技なのっ! 技名を言うのも流派のしきたりなんだっての!」

「ふぅんそう! でもカッコつけてるの見え見えだったけどね! 

刀を振ってびゅんびゅん、すちゃっ、す! って鞘に納めて!」


「っ! あれは血払いだッ! 

血脂耐性は付いてる刀だけど、ああいう風にやらないと錆びんだよっ!」

「じゃぁその後の、息を吐いてふぅー、どやの顔も血払いなのかなぁ??」

「あ、あれは一息ついた後の顔だってのっ! 

お前だって飯食った後、はぁー食った食ったって顔すんだろ!?」 

「はぁ? 人斬るのと食事するのに結び付けるとか超怖い人なんですけど! 犯罪者なんですけど!」


「っ、お前っ、ほんと俺に対して生意気だよなっ!」

「くすくす。馬が合わないんだよ、貴方とは」

「ああ、そうだな。同感──」





「国賊共めッ! 覚悟しろっ!!」





「「喋ってる最中だから話しかけんな!!」」



 赤黒く輝く刀、漆黒の大鎌が──まさに同時に鎧の勇者を叩き斬った。

 ジンとヴィオレッタはため息を吐いて顔を見合わせる。


 今のが中央を守る最後の勇者だったかもしれない。

 つまり。


「城内の全滅かなぁ? くすくす」

「あーあ……やっちまったよ。テロだぜこりゃ……」


 ほぼ全滅させてしまった。

 そして、ジンとヴィオレッタは王城の中央階段を上りながら、その先を見る。


「この先にラッセル王がいる、って話だったよな」

「うん。部屋はガチガチに固められて私でも開けられそうにない状態だったけど」

「……開いてるな」「だね」


 王の居室の扉は開け放たれていた。

 中に王がいないのも見なくても分かる。


「オスちゃんたちが王様をすでに拉致った後、とかかも。どうやったかは分からないけど」

「……おいおい。逆にうろうろされる方が危ないぞ」

「そしたら合流地点に戻ってるかも。あの宿に」

「ああ、確かにそうか。仕方ない。ヴィオレッタ」

「うん?」

「頼むぞ」

「……?」

「……」「……?」


「……いや、転移魔法。頼めるか?」

「無理。禁じられてる」

「はあ!? 禁じられてるって、お前、魔法をか!?」

「そーだけど。何?」


「おいおい……じゃあよくさっきまで戦ってたな」

「くすくす。凄いでしょ」

「凄いってか異常だな」「超常生命体みたいなジンに言われたくない」


「……しゃあない。抱えて持ってくしかないか」

「人を荷物みたいに言うね。……待って、抱えるってどう抱える気?」

「米俵式」「殺すよ?」「小脇に抱えて」「はぁ??」

「とりあえず、急ぎてぇんだ。どういう移動方法なら──」


 ──その時、二人は一瞬で外を見た。



「……嫌な音がした気がする。爆発か、何か」

「俺も似た感じだ。爆発音が混ざった変な光が見えた気がした」


 ──二人が耳、あるいは目の端で捉えたのは、ガーが救助を求めて空中に放り投げた火薬の炸裂音とその光だった。

 二人はもうすぐにすることを決めていた。

 ジンは、セーリャが破壊した窓の前に立つ。ヴィオレッタもその隣へ。

 神妙な面持ちでジンはしゃがみ、ほれ、と声を出した。


「……背負ってく。背中、掴まれよな」

「仕方ないなぁ。お姫様抱っこされないだけましかぁ」


「ああ。別にそれでもいいが」

「最初にしてあげるのはハルルって決めてる感じかな」

「ち、ちげーし」

「くすくす。そういう所は面白いなぁ、ジン」


 

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