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【19】実はわたしも【32】


◆ ◆ ◆


(後4回、魔法は使える。ただし殺傷力が高い魔法は使えないらしいね)


 くすくすと、ヴィオレッタは悪い微笑みを浮かべた。


 その微笑みに、炭のように黒い髪のツインテールの女性は眉を顰める。

「何がおかしいんだ? あ? ヴィオレッタ?」


 攻撃的衣装(パンク・ファッション)──光沢のある黒革(ブラックレザー)のショートパンツ。服の先から靴までにびっしりと拷問器具のような鎖がジャラジャラとついた服。

 独特な衣服に身を包んだ彼女、セーリャは睨みつけるように吐き捨てた。


「おかしい訳じゃないんだ。ちょっと面白くてさ」

「面白いだ?」

「うん。禁式魔法。書物で知ってはいたけどね。実際に使ってる人は初めて見たから。

(せんせー)も、人間が作った魔法は知らないって言ってたからさ。ちょっと楽しくなっちゃってさ」

「……はっ。先生ね。まぁ、そんなに禁式魔法が気に入ったなら──」

 セーリャは右手を前に出す。




「──もっと見せてやるよ。【蜘蛛の糸(イロ・アラニア)】!」




 右手の先から何かが飛び出すのが、ヴィオレッタには見えていた。

 その術技(スキル)については『ネタが割れている』。


 セーリャの術技(スキル)は『蜘蛛の糸』を生み出すものだ。

 そしてその蜘蛛の糸はヴィオレッタが操る『靄』と同じように魔法を付与できる性質を持っている。


「その魔法、鎖と刃だね」

「な──」


「くすくす。まぁ今は撃ち落とせないね──【靄舞(あいまい)】、曇れ」


 合わせてヴィオレッタも靄を生み出した。

 いつもの靄と違い、煙のような靄が彼女の両手から生まれる。

 ヴィオレッタの周りに滞空する。


 ヴィオレッタは、セーリャへ向かって走る。

 向かってきた透明に近い糸が、先端に刃のついた鎖に代わるのを見送り、余裕で避ける。


「っち、魔法の発動前に何発動するか分かるのか」

「まぁね」

(もちろん全部わかる訳じゃないけどね。私が知ってる魔法なら分かるだけ。まぁそんなこと言わないで全部お見通しって感じにしとくけどね。くすくす)


 二人は距離を保ちながら視線を交わす。

 先に動いたのは、セーリャだった。


「上がれ!」


 彼女の言葉に合わせるように、ヴィオレッタの『足元』からナイフのような刃が飛び出した。

 間一髪で躱すが、『ヴィオレッタが避けたことに合わせるように』左右の壁からも刃が飛んできているのが見えていた。


(っ、タイミング上手だね……! 躱せなくないけど……!)


 ヴィオレッタはしゃがんで左右から飛んでくる刃を躱す。

「厄介だね」

 次は上下からヴィオレッタに襲い掛かる。

 赤い騎士との戦闘中にでも、仕込んでおいた魔法だろう。


(厄介だけど、これくらいならまだ余裕があるね)


 次も前から刃が飛んでくる。直線的な軌道だ。

 追尾はない。下からの刃が多い。だが避けるのに合わせて左右からも飛んでくる仕掛けとなっていた。

 のだが、数こそ多いが──ヴィオレッタは避けきれていた。


「っ、一筋縄じゃぁいかないか」

「くすくす。お互い様だね」


 弾丸ほどの速度ではない。せいぜいが、路地裏の不良素人(チンピラ)が繰り出す拳程度。

 訓練を積んだ者なら無意識でも避けられる。

 ヴィオレッタは距離を詰める。セーリャに向かって。

「くそ、近づくなっ!」


(使える魔法の回数に制限がある。なら近接戦(インファイト)でガーちゃんみたいに鉄の魔法で殴るのが──うん?)



 この辺りで──。



(変だね。嘘くさいね。今の一言。いや、行動?)



 ──ヴィオレッタはセーリャの心音の違和感に気付いた。



(嘘付きっぽい心音だね。でも……言葉に嘘があるっていう感じには聞こえなかった。

というか近づくなって言いながら逃げないのは? 王様の部屋の入口を守ってるから? 

ううん。そうは見えない。なら、その行動に嘘がある)


 目の前のセーリャを見て──そのこちらを向けていない左手の指たちが僅かに動いていることに──ヴィオレッタは気付く。

 すぐに『口の中で魔法を作る』。最近練習した(マイブーム)の磁石の魔法。

 反転し、地面を這わせた靄に指を向ける。



「『磁石化』!」



 間一髪だった。


 背後に迫っていたのは『無数の刃で出来た大口』。

 それはさながら食虫植物のように、刃の塊は大口を開けて、音一つ立てずに迫っていたのだ。


 磁石化した地面にその刃の塊は吸い付けられた。

(危なっ。音もなかっ──!)


 ヴィオレッタは、すぐさま振り返り──眼前に迫るセーリャを見つけた。


「っ!」

 ヴィオレッタが防御の為に背中を向けた隙をセーリャは逃さなかったのだ。

 ヴィオレッタはすぐに腕を振り、靄を振り回す。

 だがその威嚇は意味をなさなかった。セーリャは靄を抜け──


「さっき不発に終わってた『あんたの技』さ、切り札だったっしょ──実はわたしも『それ』が切り札なんだわ」


 まっすぐに右腕を引き絞っていた。




 その右腕は術技(スキル)の糸が巻き付いた拳。




 ──それは偶然の一致。ヴィオレッタが最も得意とする『靄を腕に纏わせる技』と、原理は同じ。

 何か『強力な魔法』を何種類も付与した糸を腕に纏わせる。

 そして相手を殴ると同時に、その魔法の全てを開放する技。

(ヤバっ! あれを防ぐには──)

「『我が手に戻れ(リラ・シア・クォ)』!」





「【蜘蛛の糸(イロ・アラニア)】──『蜘蛛噛手(ムエルテ)』!」








 そして、金属が爆発するような甲高い音が響いた。



 


 

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